50 / 298
野盗退治
しおりを挟む
突然起こった事態に、アレックスは驚いて叫んだ。
「何してんだよバレット!?」
バレットはうるさそうにアレックスを見て答えた。
「このオッサンが野盗の仲間だ。最近雇い入れた使用人で、やせ型のらんぐい歯の男。そして新月っていうのは野盗が仕事を始める時期だ。夜が暗くて身を隠しやすいからな」
アレックスはバレットと野盗の仲間だという使用人をぼう然と見ていた。バレットの推測通りだった。バレットは穏やかでゆっくりとした声で言った。
「このままお前を騎士団に突き出せば、牢屋に二十年ってところだな。だがな、俺たちに協力するってゆうなら便宜を図ってやってもいいぜ?」
バレットの言葉に間者の男は、目に涙を浮かべながらうなずいていた。
その日は新月の夜だった。アレックスはかたずを飲んでその時がくるのを待っていた。アレックスとバレットは、金持ちの屋敷で野盗が盗みに入ってくるのを今か今かと待っているのだ。バレットが捕らえた野盗の仲間に、予定通り野盗たちを屋敷に招き入れさせるのだ。
はたしてその時がやってきた。野盗の仲間は、ランプを手に持ち野盗たちをアレックスたちのいる広い廊下に案内してくる。ランプの光を合図に、バレットは火魔法で小さな火のかたまりを沢山出現させて廊下を照らした。仲間である野盗を裏切ったやせた男は、ランプを持って一目散に逃げ出した。侵入した三人の野盗たちはアッと驚きの声をあげた。仲間に裏切られた事に気づいたのだ。野盗たちはめいめいに自身の魔法を発動させた。火魔法、氷魔法、風魔法がアレックスたちを襲う。
「アレックス!」
バレットの声にアレックスは自身の水防御魔法を発動させた。アレックスは、バレットから剣だけでなく水魔法の手ほどきも受けたのだ。バレットは、魔法の強さとは精神力の強さだと教えてくれた。つまりアレックスの強い精神力が魔法に反映するというのだ。アレックスは野盗の魔法に決して負けないという強い気持ちで水防御魔法をはった。アレックスの水防御魔法は、三つの魔法を完全に防いだ。野盗たちは魔法ではらちがあかないとふんで、剣を構えてアレックスたちに突進して来た。アレックスも水防御魔法を解除して、剣を抜き構えた。アレックスの背後にいたバレットは、アレックスの肩に足をかけると、大きく跳躍して空中に飛び上がった。バレットは二人の野盗の前に着地すると、目にも止まらぬ速さでみねうちにした。二人の野盗がバタリと倒れる。
もう一人の野盗は、剣を振り上げてアレックスに向かって来た。アレックスは野盗の一刀を自身の剣ではじき返すと、返す刀で相手の左わき腹に剣を叩き込もうとした。だが、そこでアレックスはハッとした。もし自分がこの剣で野盗を斬ったら、野盗がケガをする。それどころか死んでしまうかもしれない、そこにアレックスのためらいが生まれた。野盗はさらに剣を振り下ろそうとした。アレックスはとっさに水魔法で水のかたまりを出現させ、野盗の顔をおおった。野盗は突然呼吸ができなくなった事に焦り、もがき苦しみ出した。アレックスはすかさず野盗に近づくと、野盗の首に手刀を入れて昏倒させた。野盗はバタンと廊下に倒れた。
アレックスは激しい呼吸を整えるため、ゆっくりと深呼吸をした。そして、自身が野盗に勝利したのだと実感した。アレックスは嬉しくなってバレットに叫んだ。
「やったぞバレット!勝ったぞ」
バレットははしゃぐアレックスを冷ややかな目で見ていた。
翌日捕らえた野盗たちは騎士団によって連行された。アレックスとバレットはモスイの街の代表者から報酬を受け取った。その額は、アレックスが今まで働いた中で一番高額で、初めて見る金貨の数だった。その日の夜アレックスとバレットは、モスイの街のはずれにある一般の街人が暮らす地区で宿を取る事にした。このモスイの街は金持ちが多い街ではあるが、その他の大多数は一般の街人だ。食料や品物もそこまてま物価は高くない。バレットはいつも通り野宿がいいと言ったがアレックスは有無をいわせず連れて行った。
「何してんだよバレット!?」
バレットはうるさそうにアレックスを見て答えた。
「このオッサンが野盗の仲間だ。最近雇い入れた使用人で、やせ型のらんぐい歯の男。そして新月っていうのは野盗が仕事を始める時期だ。夜が暗くて身を隠しやすいからな」
アレックスはバレットと野盗の仲間だという使用人をぼう然と見ていた。バレットの推測通りだった。バレットは穏やかでゆっくりとした声で言った。
「このままお前を騎士団に突き出せば、牢屋に二十年ってところだな。だがな、俺たちに協力するってゆうなら便宜を図ってやってもいいぜ?」
バレットの言葉に間者の男は、目に涙を浮かべながらうなずいていた。
その日は新月の夜だった。アレックスはかたずを飲んでその時がくるのを待っていた。アレックスとバレットは、金持ちの屋敷で野盗が盗みに入ってくるのを今か今かと待っているのだ。バレットが捕らえた野盗の仲間に、予定通り野盗たちを屋敷に招き入れさせるのだ。
はたしてその時がやってきた。野盗の仲間は、ランプを手に持ち野盗たちをアレックスたちのいる広い廊下に案内してくる。ランプの光を合図に、バレットは火魔法で小さな火のかたまりを沢山出現させて廊下を照らした。仲間である野盗を裏切ったやせた男は、ランプを持って一目散に逃げ出した。侵入した三人の野盗たちはアッと驚きの声をあげた。仲間に裏切られた事に気づいたのだ。野盗たちはめいめいに自身の魔法を発動させた。火魔法、氷魔法、風魔法がアレックスたちを襲う。
「アレックス!」
バレットの声にアレックスは自身の水防御魔法を発動させた。アレックスは、バレットから剣だけでなく水魔法の手ほどきも受けたのだ。バレットは、魔法の強さとは精神力の強さだと教えてくれた。つまりアレックスの強い精神力が魔法に反映するというのだ。アレックスは野盗の魔法に決して負けないという強い気持ちで水防御魔法をはった。アレックスの水防御魔法は、三つの魔法を完全に防いだ。野盗たちは魔法ではらちがあかないとふんで、剣を構えてアレックスたちに突進して来た。アレックスも水防御魔法を解除して、剣を抜き構えた。アレックスの背後にいたバレットは、アレックスの肩に足をかけると、大きく跳躍して空中に飛び上がった。バレットは二人の野盗の前に着地すると、目にも止まらぬ速さでみねうちにした。二人の野盗がバタリと倒れる。
もう一人の野盗は、剣を振り上げてアレックスに向かって来た。アレックスは野盗の一刀を自身の剣ではじき返すと、返す刀で相手の左わき腹に剣を叩き込もうとした。だが、そこでアレックスはハッとした。もし自分がこの剣で野盗を斬ったら、野盗がケガをする。それどころか死んでしまうかもしれない、そこにアレックスのためらいが生まれた。野盗はさらに剣を振り下ろそうとした。アレックスはとっさに水魔法で水のかたまりを出現させ、野盗の顔をおおった。野盗は突然呼吸ができなくなった事に焦り、もがき苦しみ出した。アレックスはすかさず野盗に近づくと、野盗の首に手刀を入れて昏倒させた。野盗はバタンと廊下に倒れた。
アレックスは激しい呼吸を整えるため、ゆっくりと深呼吸をした。そして、自身が野盗に勝利したのだと実感した。アレックスは嬉しくなってバレットに叫んだ。
「やったぞバレット!勝ったぞ」
バレットははしゃぐアレックスを冷ややかな目で見ていた。
翌日捕らえた野盗たちは騎士団によって連行された。アレックスとバレットはモスイの街の代表者から報酬を受け取った。その額は、アレックスが今まで働いた中で一番高額で、初めて見る金貨の数だった。その日の夜アレックスとバレットは、モスイの街のはずれにある一般の街人が暮らす地区で宿を取る事にした。このモスイの街は金持ちが多い街ではあるが、その他の大多数は一般の街人だ。食料や品物もそこまてま物価は高くない。バレットはいつも通り野宿がいいと言ったがアレックスは有無をいわせず連れて行った。
0
お気に入りに追加
770
あなたにおすすめの小説
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる