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捕らわれた霊獣

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 パンターはフィンたちを乗せて薄暗い廊下をどんどん進んだ。室内側の壁には所々閉ざされた扉があった。きっと霊獣ハンターたちが休憩を取っているのだろう。できればリアを助け出すまでは人間たちには大人しくしていていてもらいたい。

 パンターは廊下の角で立ち止まると、フィンたちに向かってアゴをしゃくった。角の奥を見てみろというのだ。フィンとブランはパンターの背中から乗り出して廊下の角の先に注目した。そこには大きな鉄格子がはまった牢屋があり、その中に探し求めていたホワイトライオンのリアがいた。フィンは彼女の無事な姿を見て、ホッと胸をなでおろした。霊獣ハンターたちは、捕まえた霊獣を金持ちに売るのだからリアは無事であると思ってはいたが、やはりこの目で確かめなければ安心できなかった。ブランも自身の守護者の姿を見て落ち着いたのだろう、こわばっていた身体の力が抜けている。フィンはブランを優しく撫でた。

 牢屋の前には、眠そうな見張りの男が立っていた。男の後ろの鉄格子の中を目を凝らして見ると、リアだけではなく他にも霊獣が捕らわれているのが見てとれた。パンターは後ろを振り返って、フィンたちの顔を見てから歩き出した。パンターは見張りの男の側によると、眠りの魔法をかけた。男はフラフラしてその場に倒れそうになった。それを見たフィンは、慌ててパンターの背中から飛び降り、見張りの男を抱きとめてゆっくりと床に横たえさせた。パンターの背中に乗っていたブランも、パンターの背中から飛び降りた。パンターの姿隠しの魔法の範囲の外に出たブランの姿は見えるようになった。

 ブランは牢屋の前に立って叫んだ。

『ママ!』

 鉄格子の外にブランを認めたリアも叫んだ。

『ブラン!来てくれたの?!』
『勿論よママ』
『チーグルは?』
『ええ無事よ』

 リアはその言葉を聞いて微笑んだ。パンターは魔法で牢屋の鍵を開け、牢屋内に入った。フィンはパンターの後から牢屋に入ると、自身の土魔法で鋭利なナイフを作り、リアの魔力を封じている首輪を外した。リアはフィンに礼を言った。フィンはうなずいてから、牢屋の奥にいる霊獣たちにも話しかけた。

「皆さん助けに来ました。あなたたちの魔力を封じている魔法具の首輪をはずします」

 フィンは背中に翼の生えたガゼルの霊獣の側によると、素早く首輪を外した。そしてそのとなりにいる背中に翼を生やしたカモシカの霊獣の首輪も外した。ガゼルとカモシカはフィンたちに感謝をのべた。パンターはガゼルとカモシカに聞いた。

『おい、捕らわれている霊獣はお前たちだけか?』

 パンターの問いにカモシカの霊獣が答える。

『ああ、今は私たちだけだ。以前この牢屋の中にいた霊獣たちは皆連れていからてしまったのだ』

 カモシカの霊獣の言葉に、フィンは下唇を噛んだ。牢屋から出された霊獣はきっと金持ちに売られてしまったのだろう。パンターはうなずいてから言った。

『よし、ならば全員この建物から脱出したら、この中の人間を皆殺しにしよう』

 パンターの言葉に、フィンはギョッとしてしまった。それは他の霊獣たちも同じらしく、顔を見合わせて困った顔をした。カモシカの霊獣が異論を唱えた。

『確かに私たちを捕らえた人間たちは憎い。だが人間の寿命は、私たちから比べるととてもわずかな時間だ。殺すのは不びんではないだろうか』
『そうね、もう二度と同じ過ちをおかさないようにこらしめるくらいでいいんじゃないかしら?』

 カモシカの霊獣の意見にガゼルの霊獣が乗っかる。本来霊獣とはとても慈悲深く、そしてのんびりした生き物なのだ。だがそれも性格の違いで、パンターは違うようだった。パンターが語気を荒げて言う。

『そんなまどろっこしい事しているから捕まる霊獣が後をたたないのだ。霊獣を捕まえる不届きな人間は皆殺しにして、霊獣を捕まえるとどんな恐ろしい目に合うのか分からせなくてはいけないのだ』

 フィンはパンターの考えももっともだと思った。そして何より同じ人間として恥ずかしい気持ちになった。フィンは深々と頭を下げて霊獣たちに言った。

「霊獣の皆さんごめんなさい。人間はあなた達を捕らえ傷つける。僕は同じ人間として霊獣ハンターたちを許せない。だけど、だけど命ばかりは取らないでほしいんです」

 フィンの足元にいるブランがしきりにフィンの足に身体をすりつけて言った。

『フィン、あなたはいい人間よ。あなたか謝る事ないわ』

 ブランの言葉にリアもうなずく。パンターはフィンをジロリと見て言った。

『ならばフィン、この建物の中にいる霊獣ハンターたちにどのような裁きをするのだ?』
「はい、僕の知り合いに霊獣の保護活動をしている召喚士がいます。その人は騎士団と連携を取って、霊獣ハンターを捕らえたら罪人として牢獄にいれています。だからここにいる霊獣ハンターたちを捕らえて投獄したいです」

 フィンの言葉を聞いたパンターは、他の霊獣たちの顔を見回した。霊獣たちは口々にフィンの意見に賛成してくれた。パンターはため息をついてからうなずいた。

 






 
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