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リアの救出

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 それまで黙っていた白猫のブランが叫んだ。

『もう!霊獣ハンターの年が若いんでも年寄りでも、どうでもいいだわよ!パンター!ママは一体何処に連れていかれたの?!』

 ブランの剣幕にパンターは少しタジタジになりながら答えた。

『あ、ああ。ここから東に向かって行ったようだ。皆俺の背中に乗れ、匂いをたどって守護者の所まで連れてってやる』

 フィンはうなずいてブランとチーグルを抱き上げてパンターの背中に乗った。パンターは守護者の匂いを頼りに、低空飛行で進んで行った。

 どのくらい時間が経っただろうか。パンターは辛抱強く守護者の匂いを嗅いでいた。すると小高い崖に行き当たった。突然パンターが空高く飛び上がった。フィンがパンターの背中から崖の下を見下ろすと、そこには人工的に作られた下り坂の道があった。どうやら霊獣ハンターたちは守護者の檻をこの崖の下に運んで行ったようだ。パンターは崖の下の方まで下降した。そこには大きな建物が建っていた。まるで巨大な牢獄のようなまがまがしさだった。その建物を見たパンターが独り言のように言った。

『どうやら守護者はこの中のようだ。夜になったらここに侵入するぞ』

 フィンたちは皆一同にうなずいた。

 辺りは暗くなり夜になった。パンターは低い声で言った。

『おい、お前ら行くぞ』

 フィンたちは小さくハイッと答えた。だがパンターはチーグルをジロリとにらんで言った。

『チビ、お前はここで待ってろ』
『ヤダ!僕もママを助けに行く!』
『お前は足手まといだ!』

 パンターの言葉にチーグルは涙ぐむ。パンターはグッと息を飲み込んでから、ため息をついて言った。

『お前の守護者はお前を守るために捕まったのだぞ?お前が再び危険な目にあったらどう思うか考えてみろ?守護者は俺たちが無事に助け出す。お前はここで待ってろ、いいな』

 チーグルはふてくされたようにうなずいた。パンターはチーグルを風防御魔法で包んだ。そしてチーグルに言った。

『姿隠しの魔法を使え』

 パンターの言葉にチーグルはうなずくと、パッと消えてしまった。フィンは驚いて辺りをキョロキョロ見回したが、チーグルの姿はこつ然と消えていた。ブランがフィンに言った。

『大丈夫だわよフィン。チーグルは魔法で透明になったの。ちゃんとここにいるわ』

 フィンは安心してブランに笑いかけた。何もない場所から、チーグルの舌ったらずな言葉が聞こえた。

『お姉ちゃん、皆。お願い、ママを助けて』
「ああ、勿論だよチーグル。すぐにリアを助けるよ!」

 フィンはそう言ってからブランを抱きしめて、パンターの背中に乗った。パンターは夜空に飛び上がった。そしてゆっくりと崖の下の建物に近づいた。パンターがフィンに言った。

『フィン、今から姿隠しの魔法を使う。建物内の人間に俺たちの姿は見えない。だがフィン、絶対に俺から離れるなよ?俺から離れたら姿隠しの魔法が解けてしまうからな?』

 フィンは神妙にはいっ、と返事をした。フィンたちは建物の門の前に到着した。そこには見張りの門番が二人立っていた。パンターは姿を消したまま、門番に近づいた。すると門番の一人が倒れた。どうやら眠りの魔法を使ったようだ。もう一人の門番が慌てて倒れた門番に近寄ろうとした。パンターはもう一人の門番にも眠りの魔法を使用した。もう一人もバタリと倒れてしまった。

 パンターは重厚な鉄の扉を魔法で難なく開いた。フィンたちは音もなくゆっくりと建物内に侵入した。建物の内部は石造りで、ヒヤリとした空気がただよっていた。室内を照らすあかりは、石の壁の上部に所々たいまつが備え付けられ、石の廊下をぼんやり照らしていた。パンターは小声で言った。

『人間の気配がする。お前たち声を出すなよ?』

 フィンとブランはパンターの背中の上で無言でうなずいた。フィンたちは今、パンターの魔法で姿を消しているが、フィンたちが声を発すれば、相手に気づかれてしまう。

 フィンはゴクリとツバを飲み込んだ。これから出会う人間は、すべて霊獣を捕らえるすべを持った霊獣ハンターなのだ。こころしてかからなければいけない。そして、おそらくこの建物内にリアが捕らえられているはずだ。廊下の奥から、男たちの笑い声が聞こえて来た。フィンたちは男たちをやり過ごすため、廊下のはじで息を殺す。男たちはフィンたちに気づかず話し続けている。自然フィンは男たちの会話に聞き耳をたてた。

「それにしてもこの間来た新入りはキモが座っているなぁ」
「ああ、誰だって最初は霊獣を捕らえる時におじけづくのになぁ。アイツ、何のちゅうちょもなく霊獣に鞭をふるうものな。どう見たってこの間まで召喚士養成学校に通っていた学生には思えんよ、名前は何といったっけ?」
「ああ、確かグッチという奴だ」

 フィンは途端に、ヒュッと息を飲んで、大きな音を出してしまった。フィンにとって、とても衝撃的な言葉だったからだ。

 

 
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