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パンターとの共闘

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 パンターはフィンたちの目の前に降り立った。

『フィン、どうかしたのか?』

 美しい黒ヒョウは穏やかな声でフィンに言った。フィンは叫んで言った。

「お願いパンター!ブランの守護者を助けて!」

 パンターはフィンの話を聞いてうなずいてくれた。パンターは、元の大きさに戻ったブランを抱っこしたフィンを背中に乗せ、上空に飛び上がった。風魔法を使うパンターは、ものすごい速さで上空を飛んで行った。そして数日前、フィンとブランがリアと会った森までやって来た。ブランは、チーグルが隠れている場所までやってくると、パンターの背中から飛び降りた。白猫のブランは高所から危なげなく着地して叫んだ。

『チーグル!どこ!?』

 ブランは大声で自分の弟の名前を呼んだ。すると草むらの奥からか細い声がした。

『お姉ちゃん』

 ブランが振り向くと、そこには目にいっぱい涙を浮かべている白虎の子虎チーグルがいた。ブランはチーグルに駆け寄ると、彼の顔をペロペロとなめて言った。

『ああ、チーグル。無事で良かった!』
『お姉ちゃん、お姉ちゃん!ママが、ママが!』
『ええ、ええ、お姉ちゃんがすぐにママを助けに行くから泣き止みなさい』

 フィンを乗せたパンターはゆっくりとブランとチーグルの側に降り立った。チーグルは見知らぬ霊獣が突然現れ驚いたようで、ブランの背に隠れてしまった。黒ヒョウのパンターは、小さなチーグルをギロリとにらんで言った。

『おいチビ!お前の守護者が捕らえられた経緯をできるだけ詳しく話せ!』

 チーグルは、パンターの高圧的な態度が怖いらしく何も話せないでいた。ブランはキッとパンターをにらんでから、チーグルに優しく話しかけた。

『チーグル、ゆっくりでいいから何があったか話して?』

 チーグルはグズグズ鼻をすすりながら話し出した。

『あのね、あのね、ママと僕水辺で水を飲んでたの。そしたらね、僕、バァッてなって、ママが僕を助けてくれて、ママがいなくなっちゃったの』

 フィンはチーグルの言っている意味がわからなくて、となりブランを見た。するとブランもチーグルの言ってる意味がわからないのか難しい顔をしていた。フィンの後ろにいたパンターはイライラした声でどなった。

『おいチビ!まるで意味がわからんじゃないか!!』

 パンターの大声に、チーグルは可哀想にシクシク泣き出した。パンターはチッと舌打ちしてからチーグルに言った。

『これじゃラチがあかん、チビ!お前の記憶を読むぞ?』

 パンターの言葉に、フィンは驚いて聞いた。

「パンターは他人の記憶を読む事ができるの?!」
『ああ、正確には視る。だがな。これからこのチビが視たモノを、俺も視る事ができる』

 パンターはそういうとチーグルのオデコを自身の鼻でチョンとつついた。するとパンターとチーグルが光だした。パンターが魔法を発動させたのだ。パンターはしばらくジッとしてから、ゆっくりと話しだした。

『このチビと守護者のライオンは水辺で水を飲んでいた。だがこのチビはある事に気がついた。草むらに何か動くものがあった。チビはそれが気になって、その動くものを追いかけた。それはネズミに似ていたが、ネズミではない。なぜならそれは作り物だったからだ』

 パンターの話にフィンはハッとした。チーグルは霊獣ハンターの罠にかけられてしまったのだ。パンターは話を続けた。

『チビはその動くものを追って、どんどん守護者から離れてしまった。すると、頭上から網が降ってきた。チビは逃げようとしたが、その網が身体に巻きついて外れなかった。チビは怖くなって守護者を呼んだ。守護者がチビの元に駆けつけると、そこには三人の人間の男がいた。男たちは皆守護者と話ができるようだ。おそらく守護者は、チビと自分を交換しろと言っているようだ。三人の人間たちはゲラゲラ笑ってうなずいている。こいつらの狙いはもともと守護者の方だったのだ。守護者は人間に首輪のようなものをさせられた。そして人間の持ってきた檻に入った。人間はチビの身体にからまった網を取りのぞいて立ち去った』

 フィンは腹の底から腹が立った。小さなチーグルを捕らえて、リアを脅迫したのだ。そしてリアは、大切なチーグルを守るために自らが犠牲になったのだ。絶対にリアを助ける。フィンは心に誓った。

 フィンが決意を強くしていると、急にパンターがフィンに言った。

『フィン、お前今いくつだ?』

 突然パンターがこの場にそぐわない質問をしたので、フィンは驚きながら答えた。

「えっ?!僕は十八だよ。それがどうしたの?パンター」

 パンターは少し考えるそぶりをしてから答えた。

『いや、ならばもっと年上かもな。守護者を捕まえた三人の男のうち、一人は大分若い。多分フィンの少し上くらいだろう』

 パンターの言葉にフィンは考えこんだ。フィンは残念な事に身長が低い、これからもっと伸びる予定だが現在は十八歳という年齢よりも下に見られる事が多い。となると、パンターが視た若い男とは、フィンと同い年という可能性もある。そして霊獣語が分かるという事実。フィンは嫌な予感がした、もしかしたらその若い男は、フィンと同じ召喚士養成学校の卒業生なのではないか。
 
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