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フレイヤの気持ち
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城下町の道の真ん中での少女たちのケンカに、町の人々が次第に集まってきた。火の精霊フレイヤはため息をついた。自身の契約者であるリリーは、十八歳という年齢のわりには落ち着いた少女だと思っていたのに。彼女は元同級生の男子生徒フィンの契約霊獣と町中で大ゲンカを始めてしまったのだ。リリーは人目をひく美少女で、霊獣のブランは今は白猫の姿ではなくツインテールの美少女に変身している。瞳はブルーとゴールドのオッドアイで、ブランもかなり人々の注目を集めてしまっている。ブランの契約者であるフィン少年は、ケンカの原因が自分にあるとはつゆしらずオロオロしていた。仕方あるまい、ここは一番の年長者であるフレイヤが場をおさめなければなるまい。フレイヤは髪の毛を引っ張りあっている少女二人に声をかけた。
『ねぇ、お嬢ちゃんたち。フィン坊やが町中で騒いでる女の子はキライだって!』
フレイヤの言葉を聞いた途端、リリーとブランはビクリと身体を震わせ、そして大人しくなった。少女たちのわかりやすい行動が、面倒くさいやら可愛いやらで、フレイヤは苦笑いをした。
フレイヤから見て、白猫の霊獣ブランは、自身の契約者であるフィンに恋をしている。人間であるリリーは、霊獣が人間に恋をするなどおかしいと言っていた。だが長い年月を生きているフレイヤからすると、人間と霊獣や精霊の恋愛は珍しいものではない。召喚士と精霊や霊獣は心からの絆を有しているため、恋愛関係になる事もあるのだ。事実火の精霊フレイヤはリリーの前の契約者である人間の男に恋をしていた。その結末は、今思い出しても辛いトゲのようにフレイヤの心の奥に突き刺さっていた。だから霊獣のブランが人間であるフィンの事が恋しいと思う気持ちを、種族が違うという理由でおかしいと決めつけるリリーの考えをフレイヤは肯定する事が出来なかった。
フレイヤはリリーの契約精霊になって、リリーの事が可愛くて仕方がなかった。リリーに喜んでほしい、リリーのために何かしたい。そんな気持ちでいっぱいなのだ。だが、リリーの想い人のフィンとの恋の成就は、同時に霊獣ブランの失恋につながるのだ。ブランの気持ちも痛いほどわかるフレイヤはどうするのが良い事なのかわからなかった。
フレイヤたちは冒険者協会で、共同で行う依頼を探しに行った。リリーはしきりにフィンと城下町で偶然出会えた事を喜んでいた。だか実際はフレイヤがフィンに初めて出会った時、目印の魔法をかけておいたのだ。そのためフィンがフレイヤの側に近づくと感知する事ができるのだ。これ見よがしにフィンに魔法を使っても、契約霊獣のブランはちっともフレイヤの魔法に気がつかない。どうやらブランは、やっと育ての守護者から離れた百歳をこえたくらいの霊獣なのだろう。そうなるとこのパーティーは本当に初心者の子供の集まりになる。これはフレイヤが気を引き締めなければいけないと強く思った。
リリーがフィンに依頼の書類が入っているファイルを開いて見せて言った。
「ねぇフィン。この依頼はどうかしら?」
「どれ?ああ多発している霊獣ハンターの討伐だね?確かに嫌がる霊獣を捕らえるハンターは捕まえたほうがいいね」
ふてくされたようにフィンの腕に腕を絡ませてしなだれかかっているブランがフィンに声をかけた。ブランは人間の文字が読めないので面白くないのだろう。
「フィン、どうゆう依頼なのさ?」
「これはね霊獣を捕らえて金持ちに売る人間がいるんだ。その人間を捕まえてほしいっていう依頼なんだよ」
フィンの言葉を聞いたブランはにわかに怒り出した。
「何てヒドイ人間だわよ!霊獣はとても高貴な存在なのよ!」
ブランの剣幕にフィンは優しく声をかけた。
「そうたねブラン。霊獣を無理矢理捕らえるなんてとても悪い事だ。リリーこの依頼を受けよう」
フィンの言葉にリリーもうなずく。フィンは依頼書を受け付け提出した。受け付けの女性とは顔見知りらしく、二、三言葉を交わしていた。そしてフィンにべったりくっついているブランと、側にいるリリーを見てニヤニヤと笑っていた。きっと受け付けの女性も、フィンを取り巻く三角関係を生暖かい目で見守っているのだろう。
フレイヤはこれからリリーたちが受ける依頼に一抹の不安を感じた。人間が霊獣を捕まえる、いわゆる霊獣ハンターの犯罪は後をたたない。何故なら霊獣は見た目が美しく、真の名の契約をした人間は一生霊獣を使役する事ができるのだ。そのため金持ちの依頼者が大金をつんで霊獣ハンターに依頼をするのだ。美しく強い霊獣を捕まえろと。だが敵もさるもの、霊獣ハンターは霊獣の扱いに慣れているのだ。新人召喚士のフィンと霊獣ブランは、敵の格好の獲物とも言えるのだ。
その点召喚士と精霊や霊獣の関係は、精霊や霊獣にとても有利な契約なのだ。召喚士は精霊や霊獣を呼び出し、おうかがいをたて、対価を聞いてくれる。精霊や霊獣がその対価でいいとうなずけば契約成立になる。そして、精霊や霊獣が人間の契約者が契約内容に違反したと思えば契約解除ができるのだ。だが捕らわれた霊獣が無理矢理真の名の契約を結ばされると、その契約者の人間が死ぬまで解除ができないのだ。
フレイヤは若い召喚士の二人を眺めた。リリーとフィンはとても心が綺麗な人間だ。精霊や霊獣は、心が綺麗な人間が大好きだ。だが人間は年月を経るにしたがい心変わりをする。その心変わりが悪い方に向けば、契約している精霊や霊獣はとても悲しい気持ちになってしまうのだ。
リリーが冒険者登録をした時、最初男の召喚士が指導官についてくれた。その男はリリーの美しさを目の当たりにして邪な心が芽生えたのだろう。しきりにリリーの手や身体に触るのだ。指導官の肩に乗っていた小さなコビトの精霊はとても嫌そうな顔をしていた。もしかするとコビトの精霊は指導官の男に愛想をつかして契約解除してしまうかもしれない。それだけ精霊や霊獣の好む綺麗な心を持ち続ける事は難しい事なのだ。
『ねぇ、お嬢ちゃんたち。フィン坊やが町中で騒いでる女の子はキライだって!』
フレイヤの言葉を聞いた途端、リリーとブランはビクリと身体を震わせ、そして大人しくなった。少女たちのわかりやすい行動が、面倒くさいやら可愛いやらで、フレイヤは苦笑いをした。
フレイヤから見て、白猫の霊獣ブランは、自身の契約者であるフィンに恋をしている。人間であるリリーは、霊獣が人間に恋をするなどおかしいと言っていた。だが長い年月を生きているフレイヤからすると、人間と霊獣や精霊の恋愛は珍しいものではない。召喚士と精霊や霊獣は心からの絆を有しているため、恋愛関係になる事もあるのだ。事実火の精霊フレイヤはリリーの前の契約者である人間の男に恋をしていた。その結末は、今思い出しても辛いトゲのようにフレイヤの心の奥に突き刺さっていた。だから霊獣のブランが人間であるフィンの事が恋しいと思う気持ちを、種族が違うという理由でおかしいと決めつけるリリーの考えをフレイヤは肯定する事が出来なかった。
フレイヤはリリーの契約精霊になって、リリーの事が可愛くて仕方がなかった。リリーに喜んでほしい、リリーのために何かしたい。そんな気持ちでいっぱいなのだ。だが、リリーの想い人のフィンとの恋の成就は、同時に霊獣ブランの失恋につながるのだ。ブランの気持ちも痛いほどわかるフレイヤはどうするのが良い事なのかわからなかった。
フレイヤたちは冒険者協会で、共同で行う依頼を探しに行った。リリーはしきりにフィンと城下町で偶然出会えた事を喜んでいた。だか実際はフレイヤがフィンに初めて出会った時、目印の魔法をかけておいたのだ。そのためフィンがフレイヤの側に近づくと感知する事ができるのだ。これ見よがしにフィンに魔法を使っても、契約霊獣のブランはちっともフレイヤの魔法に気がつかない。どうやらブランは、やっと育ての守護者から離れた百歳をこえたくらいの霊獣なのだろう。そうなるとこのパーティーは本当に初心者の子供の集まりになる。これはフレイヤが気を引き締めなければいけないと強く思った。
リリーがフィンに依頼の書類が入っているファイルを開いて見せて言った。
「ねぇフィン。この依頼はどうかしら?」
「どれ?ああ多発している霊獣ハンターの討伐だね?確かに嫌がる霊獣を捕らえるハンターは捕まえたほうがいいね」
ふてくされたようにフィンの腕に腕を絡ませてしなだれかかっているブランがフィンに声をかけた。ブランは人間の文字が読めないので面白くないのだろう。
「フィン、どうゆう依頼なのさ?」
「これはね霊獣を捕らえて金持ちに売る人間がいるんだ。その人間を捕まえてほしいっていう依頼なんだよ」
フィンの言葉を聞いたブランはにわかに怒り出した。
「何てヒドイ人間だわよ!霊獣はとても高貴な存在なのよ!」
ブランの剣幕にフィンは優しく声をかけた。
「そうたねブラン。霊獣を無理矢理捕らえるなんてとても悪い事だ。リリーこの依頼を受けよう」
フィンの言葉にリリーもうなずく。フィンは依頼書を受け付け提出した。受け付けの女性とは顔見知りらしく、二、三言葉を交わしていた。そしてフィンにべったりくっついているブランと、側にいるリリーを見てニヤニヤと笑っていた。きっと受け付けの女性も、フィンを取り巻く三角関係を生暖かい目で見守っているのだろう。
フレイヤはこれからリリーたちが受ける依頼に一抹の不安を感じた。人間が霊獣を捕まえる、いわゆる霊獣ハンターの犯罪は後をたたない。何故なら霊獣は見た目が美しく、真の名の契約をした人間は一生霊獣を使役する事ができるのだ。そのため金持ちの依頼者が大金をつんで霊獣ハンターに依頼をするのだ。美しく強い霊獣を捕まえろと。だが敵もさるもの、霊獣ハンターは霊獣の扱いに慣れているのだ。新人召喚士のフィンと霊獣ブランは、敵の格好の獲物とも言えるのだ。
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