6 / 298
戦士バレット
しおりを挟む
フィンの穏やかな眠りを破ったのは、ドアを叩く音だった。フィンは目をこすりながらベッドから降り、ドアを開けた。そこには宿屋の主人が立っていた。主人はフィンに言った。
「お前さんの先生が潰れちゃったから引き取ってくれ」
フィンはブランと寝巻きのまま宿屋の下にある酒場に降りていった。カウンターを見ると、バレットが酒に酔ってつっぷして眠っていた。フィンはブランにお願いして大きくなってもらい、ブランの背中にバレットを乗せ、自分たちの部屋のベッドに寝かせた。宿屋の主人がフィンたちに礼を言った。フィンは主人に質問した。バレットはいつもああなのかと。主人は渋い顔してフィンとブランを下の酒場に連れていった。主人はフィンとブランにミルクを入れてやり席につかせた。
「お前さんたちの指導官にバレットがつくんだろ?」
主人の言葉にフィンがうなずくと、主人はフゥッとため息をついてから話し出した。
「これは俺が言ったとは言わないでくれよ?バレットはとても強い魔法戦士だ。お前さんたちの指導官にはうってつけだろう。バレットは以前勇者レオリオのパーティにいた事があるんだ」
「勇者レオリオ?!」
フィンは驚いて声をあげた。勇者レオリオはフィンが子供の頃から武勇伝が伝えられる勇者だ。レオリオは仲間と共に大きな武功をあげた。だが魔物との戦いに敗れ亡くなったと聞いている。その仲間がバレットだというのだ。主人は言葉を続ける。
「バレットは勇者レオリオのパーティの唯一の生き残りなんだ。だがそれ以来バレットは仲間を作らない。ふらりと危険な依頼に出て、ボロボロになって帰ってくる。そしてたまに若い冒険者の指導をかって出るんだ。多分若い連中を死なせたくないんだろう。俺が言うのも何だがバレットはいい奴だ。バレットを悲しいままで死なせたくない。生徒のお前さんに言うのもなんだが、バレットを見守ってやってくれないか?」
宿屋の主人の言葉に、フィンはあいまいにうなずいた。フィンが部屋に戻ると、バレットは眉間にシワをよせて眠っていた。夢見が悪いのかもしれない。バレットが何か言っている。じぃちゃん、と。バレットの祖父なのだろうか。身内のいないフィンにはバレットの気持ちは分からなかった。フィンはバレットに毛布をかけ直して、ブランと一緒にベッドで眠った。
次の日フィンはバレットに叩き起こされた。
「おい!朝出発って言っただろ?!いつまで寝てるんだ!起きろフィン!」
フィンは渋い顔で起き上がった。誰のせいで夜眠れなかったと思っているんだと言いたかったが、宿屋の主人の言いつけで口に出す事はしなかった。バレットは一階の酒場でフィンに朝食を食べさせると、フィンを雑貨屋に連れていった。バレットは野宿に必要な小型のナベ、ナイフ、コップなどを買ってくれた。フィンは慌ててお金を払おうとするが、バレットは受け取らなかった。バレットがこともなげに笑って言った。
「俺に感謝の気持ちがあるなら、お前が立派な冒険者になった時、若い冒険者の助けになってくれればそれでいい」
フィンはバレットの言葉を深く受け止め、心に誓った。フィンはバレットに沢山の物を買ってもらったが、困った事にフィンのリュックサックには入りきらなかった。バレットはフィンのリュックサックを手に取ると、袋の内側に指で魔法陣を描いた。するとリュックサックが光出した。フィンが驚いて見ていると、バレットが荷物をどんどん入れていった。だが不思議な事に、いくら荷物を入れてもいっぱいにならないのだ。フィンがバレットを見ると、彼は笑って言った。
「リュックサックに魔法をかけた。いくらでも入るぞ。だがな入れる物をちゃんと覚えておけよ、でないと二度とリュックサックから出せないぞ?」
フィンは試しに、買ってもらったナベを想像しながらリュックサックに手を入れた。すると手にはナベをつかんでいた。フィンは喜んでありがとうと言った。バレットは照れたように顔をそむけた。
バレットはフィンたちを連れて依頼のあった村に足を向けた。バレットは、村に行く道すがらフィンに聞いた。
「なぁフィン、なんで指導官を俺にしたんだ?お前召喚士だろ?」
バレットの言葉にフィンは決意の顔で言った。
「バレット、僕は剣を習いたいんです。僕は女の子を守れるくらい強くなりたいんです!」
「・・・、フィンお前思ったよりタラシなのな?」
「?」
フィンはバレットの言った意味がよく分からなかったが、バレットは剣の指導をする事を承諾してくれた。バレットはとても面倒見のいい人間なようだ。
「お前さんの先生が潰れちゃったから引き取ってくれ」
フィンはブランと寝巻きのまま宿屋の下にある酒場に降りていった。カウンターを見ると、バレットが酒に酔ってつっぷして眠っていた。フィンはブランにお願いして大きくなってもらい、ブランの背中にバレットを乗せ、自分たちの部屋のベッドに寝かせた。宿屋の主人がフィンたちに礼を言った。フィンは主人に質問した。バレットはいつもああなのかと。主人は渋い顔してフィンとブランを下の酒場に連れていった。主人はフィンとブランにミルクを入れてやり席につかせた。
「お前さんたちの指導官にバレットがつくんだろ?」
主人の言葉にフィンがうなずくと、主人はフゥッとため息をついてから話し出した。
「これは俺が言ったとは言わないでくれよ?バレットはとても強い魔法戦士だ。お前さんたちの指導官にはうってつけだろう。バレットは以前勇者レオリオのパーティにいた事があるんだ」
「勇者レオリオ?!」
フィンは驚いて声をあげた。勇者レオリオはフィンが子供の頃から武勇伝が伝えられる勇者だ。レオリオは仲間と共に大きな武功をあげた。だが魔物との戦いに敗れ亡くなったと聞いている。その仲間がバレットだというのだ。主人は言葉を続ける。
「バレットは勇者レオリオのパーティの唯一の生き残りなんだ。だがそれ以来バレットは仲間を作らない。ふらりと危険な依頼に出て、ボロボロになって帰ってくる。そしてたまに若い冒険者の指導をかって出るんだ。多分若い連中を死なせたくないんだろう。俺が言うのも何だがバレットはいい奴だ。バレットを悲しいままで死なせたくない。生徒のお前さんに言うのもなんだが、バレットを見守ってやってくれないか?」
宿屋の主人の言葉に、フィンはあいまいにうなずいた。フィンが部屋に戻ると、バレットは眉間にシワをよせて眠っていた。夢見が悪いのかもしれない。バレットが何か言っている。じぃちゃん、と。バレットの祖父なのだろうか。身内のいないフィンにはバレットの気持ちは分からなかった。フィンはバレットに毛布をかけ直して、ブランと一緒にベッドで眠った。
次の日フィンはバレットに叩き起こされた。
「おい!朝出発って言っただろ?!いつまで寝てるんだ!起きろフィン!」
フィンは渋い顔で起き上がった。誰のせいで夜眠れなかったと思っているんだと言いたかったが、宿屋の主人の言いつけで口に出す事はしなかった。バレットは一階の酒場でフィンに朝食を食べさせると、フィンを雑貨屋に連れていった。バレットは野宿に必要な小型のナベ、ナイフ、コップなどを買ってくれた。フィンは慌ててお金を払おうとするが、バレットは受け取らなかった。バレットがこともなげに笑って言った。
「俺に感謝の気持ちがあるなら、お前が立派な冒険者になった時、若い冒険者の助けになってくれればそれでいい」
フィンはバレットの言葉を深く受け止め、心に誓った。フィンはバレットに沢山の物を買ってもらったが、困った事にフィンのリュックサックには入りきらなかった。バレットはフィンのリュックサックを手に取ると、袋の内側に指で魔法陣を描いた。するとリュックサックが光出した。フィンが驚いて見ていると、バレットが荷物をどんどん入れていった。だが不思議な事に、いくら荷物を入れてもいっぱいにならないのだ。フィンがバレットを見ると、彼は笑って言った。
「リュックサックに魔法をかけた。いくらでも入るぞ。だがな入れる物をちゃんと覚えておけよ、でないと二度とリュックサックから出せないぞ?」
フィンは試しに、買ってもらったナベを想像しながらリュックサックに手を入れた。すると手にはナベをつかんでいた。フィンは喜んでありがとうと言った。バレットは照れたように顔をそむけた。
バレットはフィンたちを連れて依頼のあった村に足を向けた。バレットは、村に行く道すがらフィンに聞いた。
「なぁフィン、なんで指導官を俺にしたんだ?お前召喚士だろ?」
バレットの言葉にフィンは決意の顔で言った。
「バレット、僕は剣を習いたいんです。僕は女の子を守れるくらい強くなりたいんです!」
「・・・、フィンお前思ったよりタラシなのな?」
「?」
フィンはバレットの言った意味がよく分からなかったが、バレットは剣の指導をする事を承諾してくれた。バレットはとても面倒見のいい人間なようだ。
0
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる