3 / 298
冒険者
しおりを挟む
大きくなった霊獣のブランはフィンを背中に乗せてものすごい速さで森を駆け抜けた。夜がふけて森で野宿をし、翌日の昼には王都ドロアに到着した。ドロアの城下町はとても賑わっていた。フィンが暮らした街アーロンも活気があったが、ドロアの比ではなかった。フィンははやる気持ちを抑えられず、すぐさま町にいこうとするのをブランが止めた。ブランはフィンに得意そうに笑顔を向けると、クルンと一回転した。驚いた事に白猫のブランは美しい少女に変身していた。銀色の長い髪をツインテールにして、肌は雪のように白く、瞳はゴールドとブルーのオッドアイ。フィンは息をのんで聞いた。
「君は本当にブランなの?君みたいな綺麗な女の子、僕初めて見たよ」
ブランが変身した少女はフフンと得意げに答えた。
「ええ、アタシはブランよ。さぁフィン、これからデートするのさ!」
フィンは首をかしげた。デートという言葉の意味がわからなかったからだ。フィンは素直にブランに質問した。
「ねぇブラン、でーとって何?」
「フィンはデート知らないの?仕方ないわねぇ、アタシが教えてあげる。それは、そのぉ、えっと、そうよ!二人で町をウロウロとねり歩くのよ!」
「へぇ、それがでーとかぁ」
ブランの言葉にフィンは安心した。デートとは思ったより簡単そうだった。
そうと決まれば早速デートをしつつ城下町にある冒険者協会に行こう。フィンはブランの手をつないだ。ブランはビックリした顔をした。
「ブラン、人が多いからはぐれないように手をつなごうね?」
ブランの顔がボンっと赤くなった。フィンが心配げに聞く。
「手をつなぐのは嫌かい?ブラン」
ブランは顔を真っ赤にしながら答えた。
「仕方ないわねぇ。フィンに迷子になられたら困るから、手をつないでいてあげるわ!」
「ありがとうブラン」
ブランの手をつないだフィンは賑やかな露店を見ながら歩き出した。キラキラと宝石のように輝く果物、フィンが見たこともないような魚を並べた鮮魚店、大きな肉のかたまりをぶら下げた精肉店。店の人々は活気ある声で客を呼び込んでいた。フィンはブランと共に物珍しげにキョロキョロと歩いていた。その時、フィンたちを呼び止める声がした。フィンが声の方に振り向くと、そこにはガラの悪い二人組の男が立っていた。男の一人が言った。
「見ろ!俺の言ったとおりだろ?そこいらじゃあ拝めねぇ綺麗なお嬢ちゃんだ」
もう一人の男もうなずいてブランにはなしかけた。
「なぁ嬢ちゃん、こんな田舎くさい小僧なんかよして俺たちと遊びに行かねぇか?」
どうやらこの二人組の男はブランを連れて行こうとしているようだ。フィンはブランを背中にかばうと小声で言った。
「ねぇ、ブラン。この男の人たちを植物魔法で拘束してくれないか?」
「・・・、できない」
「えっ?!何で」
フィンが驚いてブランを振り向く。ブランはこの世に百年以上生きる高貴な霊獣だ。ブランは人間など足元にもおよばない魔力を有しているはずなのだ。ブランは泣き出しそうな顔でフィンに言った。
「アタシは今人間になる魔法を使っているから、今は他の魔法を使えないの」
フィンは理解した。どうやらブランは人間になる魔法を解きたくないらしい。フィンはブランに笑いかけて言った。
「そうだね、今はでーとの最中だ。ブランは後ろに下がってて、ここは僕が何とかする」
フィンは厳しい顔で男たちに言った。
「この子は僕の大切な人だ!お前たちには絶対渡さない!」
タンカを切ったフィンを男たちはニヤニヤと笑った。無理もない、フィンは小柄な少年で、男たちは大柄だったからだ。男の一人は意にかいさず、ブランに近寄ろうとした。フィンはすかさず男の腹にしがみついた。男はうるさそうにフィンの腰のベルトを掴むと、ヒョイッとフィンをぶん投げた。フィンはポーンと地面に投げ出された。男は何事なかったように再びブランに近づこうとした。だが男は足を進める事ができなかった。下を見ると、先ほどぶん投げたフィンが足にかじりついていた。男は怒りをあらわにし、身体をかがめてフィンの顔を殴った。フィンの頬は腫れ、鼻血がふき出した。ブランが悲鳴をあげる。フィンはそれでも男から離れなかった。男は顔をゆがめ、もう一度フィンを殴ろうとした。
その時、フィンたちの目の前に男が立ちはだかった。男は静かに言った。
「大の男二人がかりで子供をいじめて恥ずかしいと思わないのか?」
フィンは不思議そうに男を見上げた。その男は鎧を身につけていて、腰には剣をさしてした。どうやら戦士のようだ。男は身体をかがめて右手を差し出した。フィンはその手を不思議そうに見つめて、そして合点がいった。どうやらこの戦士はフィンに手を貸してくれているようだ。フィンがその手を掴むと、グイッと立ち上がらせられ、戦士の背後にかばわれた。フィンを殴っていた男は、ニヤニヤと笑みを浮かべ、フィンに意識が向いている戦士に殴りかかった。
「危ない!」
フィンは声を上げた。自分を助けてくれた戦士が殴られてしまうかと思ったからだ。だが戦士は涼しい顔をしたまま左手で男のこぶしを受け止めた。そして、まるでドアノブをひねるように男の手をひねり上げたのだ。
「ギャァァ!!」
男の右手はおかしな方向曲がってしまった。驚いた事に戦士は一瞬で男の肘関節を外してしまったようだ。もう一人の男が戦士に殴りかかる。戦士はそのこぶしを軽く顔を傾けてよけながら、フィンたちに振り向いて言った。
「おいガキ共、早く逃げろ」
フィンはブランに引っ張られて何とか立ち上がり、戦士への礼もそこそこにその場を逃げ出した。
「君は本当にブランなの?君みたいな綺麗な女の子、僕初めて見たよ」
ブランが変身した少女はフフンと得意げに答えた。
「ええ、アタシはブランよ。さぁフィン、これからデートするのさ!」
フィンは首をかしげた。デートという言葉の意味がわからなかったからだ。フィンは素直にブランに質問した。
「ねぇブラン、でーとって何?」
「フィンはデート知らないの?仕方ないわねぇ、アタシが教えてあげる。それは、そのぉ、えっと、そうよ!二人で町をウロウロとねり歩くのよ!」
「へぇ、それがでーとかぁ」
ブランの言葉にフィンは安心した。デートとは思ったより簡単そうだった。
そうと決まれば早速デートをしつつ城下町にある冒険者協会に行こう。フィンはブランの手をつないだ。ブランはビックリした顔をした。
「ブラン、人が多いからはぐれないように手をつなごうね?」
ブランの顔がボンっと赤くなった。フィンが心配げに聞く。
「手をつなぐのは嫌かい?ブラン」
ブランは顔を真っ赤にしながら答えた。
「仕方ないわねぇ。フィンに迷子になられたら困るから、手をつないでいてあげるわ!」
「ありがとうブラン」
ブランの手をつないだフィンは賑やかな露店を見ながら歩き出した。キラキラと宝石のように輝く果物、フィンが見たこともないような魚を並べた鮮魚店、大きな肉のかたまりをぶら下げた精肉店。店の人々は活気ある声で客を呼び込んでいた。フィンはブランと共に物珍しげにキョロキョロと歩いていた。その時、フィンたちを呼び止める声がした。フィンが声の方に振り向くと、そこにはガラの悪い二人組の男が立っていた。男の一人が言った。
「見ろ!俺の言ったとおりだろ?そこいらじゃあ拝めねぇ綺麗なお嬢ちゃんだ」
もう一人の男もうなずいてブランにはなしかけた。
「なぁ嬢ちゃん、こんな田舎くさい小僧なんかよして俺たちと遊びに行かねぇか?」
どうやらこの二人組の男はブランを連れて行こうとしているようだ。フィンはブランを背中にかばうと小声で言った。
「ねぇ、ブラン。この男の人たちを植物魔法で拘束してくれないか?」
「・・・、できない」
「えっ?!何で」
フィンが驚いてブランを振り向く。ブランはこの世に百年以上生きる高貴な霊獣だ。ブランは人間など足元にもおよばない魔力を有しているはずなのだ。ブランは泣き出しそうな顔でフィンに言った。
「アタシは今人間になる魔法を使っているから、今は他の魔法を使えないの」
フィンは理解した。どうやらブランは人間になる魔法を解きたくないらしい。フィンはブランに笑いかけて言った。
「そうだね、今はでーとの最中だ。ブランは後ろに下がってて、ここは僕が何とかする」
フィンは厳しい顔で男たちに言った。
「この子は僕の大切な人だ!お前たちには絶対渡さない!」
タンカを切ったフィンを男たちはニヤニヤと笑った。無理もない、フィンは小柄な少年で、男たちは大柄だったからだ。男の一人は意にかいさず、ブランに近寄ろうとした。フィンはすかさず男の腹にしがみついた。男はうるさそうにフィンの腰のベルトを掴むと、ヒョイッとフィンをぶん投げた。フィンはポーンと地面に投げ出された。男は何事なかったように再びブランに近づこうとした。だが男は足を進める事ができなかった。下を見ると、先ほどぶん投げたフィンが足にかじりついていた。男は怒りをあらわにし、身体をかがめてフィンの顔を殴った。フィンの頬は腫れ、鼻血がふき出した。ブランが悲鳴をあげる。フィンはそれでも男から離れなかった。男は顔をゆがめ、もう一度フィンを殴ろうとした。
その時、フィンたちの目の前に男が立ちはだかった。男は静かに言った。
「大の男二人がかりで子供をいじめて恥ずかしいと思わないのか?」
フィンは不思議そうに男を見上げた。その男は鎧を身につけていて、腰には剣をさしてした。どうやら戦士のようだ。男は身体をかがめて右手を差し出した。フィンはその手を不思議そうに見つめて、そして合点がいった。どうやらこの戦士はフィンに手を貸してくれているようだ。フィンがその手を掴むと、グイッと立ち上がらせられ、戦士の背後にかばわれた。フィンを殴っていた男は、ニヤニヤと笑みを浮かべ、フィンに意識が向いている戦士に殴りかかった。
「危ない!」
フィンは声を上げた。自分を助けてくれた戦士が殴られてしまうかと思ったからだ。だが戦士は涼しい顔をしたまま左手で男のこぶしを受け止めた。そして、まるでドアノブをひねるように男の手をひねり上げたのだ。
「ギャァァ!!」
男の右手はおかしな方向曲がってしまった。驚いた事に戦士は一瞬で男の肘関節を外してしまったようだ。もう一人の男が戦士に殴りかかる。戦士はそのこぶしを軽く顔を傾けてよけながら、フィンたちに振り向いて言った。
「おいガキ共、早く逃げろ」
フィンはブランに引っ張られて何とか立ち上がり、戦士への礼もそこそこにその場を逃げ出した。
0
お気に入りに追加
771
あなたにおすすめの小説
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる