あやかし学園

狐太郎の疑問

　狐太郎は巨大な狼の狼牙に乗り、一路あやかし学園を目指した。狐太郎は封印が解けた後、母の気持ちを知った。

　狐太郎はクラスの皆と一緒にこれからも過ごす事ができるようになった。だが狐太郎にはつけなければいけないケジメがあった。

　それは明神家との決別だ。狐太郎が生まれた時から、くさりのように身体中に巻きついていた明神家との因縁を解消しておきたかったのだ。

　狐太郎は兄の雅樹をおどして、狐太郎の大切な者たちに手を出さないよう釘を刺した。小心者の雅樹はきっと約束を守るだろう。

　狐太郎は楽しい気持ちであやかし学園に向かっていた。だが突然激しい不安にかられた。

　正勝の指示だったとはいえ、狐太郎はクラスメートに暴力を振るったのだ。そんな自分を、クラスメートたちは本当に受け入れてくれるだろうか。

　心の中ではうとましく思っているのではないだろうか。そう考えると狐太郎はにわかにあやかし学園に戻る事が怖くなった。

　このまま狼牙と姿をくらませてしまった方がいいのではないか。だが同時に、狐太郎の脳裏にクラスメートの笑顔が浮かぶ。

　もう一度彼らと会って、しっかりと謝ろう。それでも彼らの怒りや恐怖がおさまらなければ、その時にあやかし学園を出て行こう。

　気持ちが固まってしまえば、何の事はない。狐太郎は新たな不安を思い浮かべた。

　亜子の事だ。狐太郎は封印される前、亜子に自分の気持ちを伝えた。自分は今後百年封印されるのだから、亜子に思いを伝えても差し支えないと思い、自分も亜子が好きだと答えた。

　狐太郎と亜子は両思いになったのたのだ。そこで狐太郎の思考ははたと停止する。両思いになった狐太郎と亜子はこれからどうなるのだろうか。

　明神家の中で生き残る事だけを考えて生きてきた狐太郎は、両思いになった男女が何をするのか知らなかった。

　街で見かける恋人同士の男女は、だいだい手をつないだり、腕を組んだりして歩いている。狐太郎は疑問に思う。

　狐太郎が狼牙と手をつなぐのは、狼牙が迷子にならないためだ。大人の男女もどちらかが迷子になってしまうから手をつないでいるのだろうか。

　もしくは、行きたい場所の意見が分かれているから、自分の行きたい場所に誘導するために手をつないで目的地まで引っ張って行こうとしているのだろうか。

　そうなると街行く恋人たちは、ほとほと意見が合わないのかもしれない。

　亜子ならきっと、狐太郎がここへ行こうと言えば、うなずいてついて来てくれるのではないだろうか。

　狐太郎は亜子の事ばかり考えていた。あまり亜子の事を考えていたからなのか、空を見上げると、亜子が飛んでいた。