あやかし学園

盛平

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さわらび童子のぼやき

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 さわらび童子は、水を張ったタライから顔をあげてから口を開いた。

「やれやれ子供たちだけで問題を解決してしまったようだな。わしは狐太郎に信用してはもらえなんだ」

 さわらび童子は校長室という名の小さな和室にいた。水鏡の妖術で、狐太郎たちの動向をずっと見ていたのだ。

 もし子供たちに危険がおよぶような事があればすぐに駆けつけようと思っていたのだが、その必要はないようだ。

 狐太郎があやかし学園に入って来た時、さわらび童子は彼が何か大きな問題を抱えている事に気づいていた。

 さわらび童子にとって、あやかし学園の生徒たちは、皆我が子のように可愛い。

 さわらび童子は狐太郎の悩みの原因を知ろうと、手を変え品を変え聞き出そうとした。だが狐太郎はかたくなで、さわらび童子に心を開いてくれる事はなかった。

 さわらび童子が落ち込んでいると、目の前に緑茶の湯呑みが置かれた。さわらび童子が見上げると、雪女の雪奈が微笑んでいた。

 さわらび童子は雪奈に礼を言って茶をすすった。さわらび童子の好きなぬるめお茶だ。

 雪奈はさわらび童子を見つめながら言った。

「私はそうは思いませんわ?狐太郎くんは校長を信頼していると思います」
「そうかのぉ」
「ええ。狐太郎くんが封印された場所は、あやかし学園が見渡せる丘でした。狐太郎くんは封印されている百年間、あやかし学園を見ながら過ごしたかったのではないでしょうか」

 さわらび童子は雪奈の美しい笑顔を見つめて答えた。

「そうかのぉ」
「ええ」
「うむ。何はともあれ、狐太郎も皆と一緒に二年生になれる事になったな。雪奈、引き続き彼らを頼むぞ?」
「はい、お任せください」

 雪奈の答えに、さわらび童子は満足そうに茶をすすった。
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