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狐太郎の思い
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この少年は確か、サトリの半妖の悟といったか。狐太郎の劇を観に行った時、狐太郎が嬉しそうに話してくれていた。
劇の台本は悟が書いたのだ、と。悟は文章を書くのが得意で、将来作家になるかもしれないと言っていた。どうやら狐太郎と悟は仲が良いらしい。
短い間だったが、狐太郎と食事をした時、よく悟の話しが出たのだ。
蘭玉は悟から事の経緯を聞いてがく然とした。狐太郎は蘭玉の寿命を守るため、みずから封印されたのだ。しかも百年という長い期間を。蘭玉はその場にくずれ落ち、つぶやいた。
「狐太郎は、あの子は私のせいで封印されたのね」
「違います、狐太郎くんのお母さんのせいではありません。狐太郎くんはお母さんを守るため、僕らを守るために考え抜いてとった行動なんです。だから、狐太郎くんが封印からさめるまで、待っていてくれませんか?僕らも狐太郎の封印が解けるまで、ずっと待っていますから」
悟はしっかりとした口調で、蘭玉に言った。蘭玉は震える声で答えた。
「皆は狐太郎の事を友達と思ってくれているのね?」
「はい。狐太郎くんは、僕らが陰陽師たちに殺されないように術の訓練をしてくれました。狐太郎くんは僕らにとって大切な友達で、ぜったいにかけてはいけないクラスメートなんです」
蘭玉の瞳からは涙があふれた。それは悲しみの涙ではない。狐太郎にかけがえのない友達がいる事を知った喜びの涙だ。蘭玉は覚悟を決めて言った。
「ねぇ、悟くん。クラスの皆、少しここで待っていてくれない?おばさん、ちょっとやる事があるの。必ず戻ってくるから」
蘭玉は穏やかな目で狐太郎の大切な友達を見つめた。悟はクラスの皆と、顔を見合わせながらうなずいてくれた。狼牙が母の足にすがりつきながら言った。
「かあちゃん、俺も一緒に、行く」
長身のオルガは、腰を屈めて我が子を優しい目で見つめながら言った。
「狼牙。お前はアタシたちの速度についてこれないから、ここで待ってな?」
「や!かあちゃんたち、コタ助けに行く。俺も、コタ助ける」
「おお!よくぞ言った。さすがアタシの息子だ。狼牙、お前はここにいて狐太郎を皆と守ってくれ」
母の言葉に、狼牙はハッとした顔になり、大きくうなずいた。オルガは息子から蘭玉に視線を移し微笑んだ。
オルガは蘭玉の決心を知って、ともに行動してくれるのだ。口にしなくても、わかってくれる親友に、蘭玉は胸が熱くなった。
劇の台本は悟が書いたのだ、と。悟は文章を書くのが得意で、将来作家になるかもしれないと言っていた。どうやら狐太郎と悟は仲が良いらしい。
短い間だったが、狐太郎と食事をした時、よく悟の話しが出たのだ。
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「違います、狐太郎くんのお母さんのせいではありません。狐太郎くんはお母さんを守るため、僕らを守るために考え抜いてとった行動なんです。だから、狐太郎くんが封印からさめるまで、待っていてくれませんか?僕らも狐太郎の封印が解けるまで、ずっと待っていますから」
悟はしっかりとした口調で、蘭玉に言った。蘭玉は震える声で答えた。
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「はい。狐太郎くんは、僕らが陰陽師たちに殺されないように術の訓練をしてくれました。狐太郎くんは僕らにとって大切な友達で、ぜったいにかけてはいけないクラスメートなんです」
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「ねぇ、悟くん。クラスの皆、少しここで待っていてくれない?おばさん、ちょっとやる事があるの。必ず戻ってくるから」
蘭玉は穏やかな目で狐太郎の大切な友達を見つめた。悟はクラスの皆と、顔を見合わせながらうなずいてくれた。狼牙が母の足にすがりつきながら言った。
「かあちゃん、俺も一緒に、行く」
長身のオルガは、腰を屈めて我が子を優しい目で見つめながら言った。
「狼牙。お前はアタシたちの速度についてこれないから、ここで待ってな?」
「や!かあちゃんたち、コタ助けに行く。俺も、コタ助ける」
「おお!よくぞ言った。さすがアタシの息子だ。狼牙、お前はここにいて狐太郎を皆と守ってくれ」
母の言葉に、狼牙はハッとした顔になり、大きくうなずいた。オルガは息子から蘭玉に視線を移し微笑んだ。
オルガは蘭玉の決心を知って、ともに行動してくれるのだ。口にしなくても、わかってくれる親友に、蘭玉は胸が熱くなった。
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