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蘭玉とオルガ2
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蘭玉とオルガはあやかしのため、歳をとる事がなかった。そのため、数十年と同じ場所にとどまる事はなかった。
人間とは百年も生きないのに、文化を発展させる能力はあやかしの比ではなかった。人間たちはより良い便利な生活を目指し、発展を続けた。いつしか島国の名は日本と呼ばれるようになった。
やがて戦争という馬鹿げた事が起こり、貧しい生活が続いたが、人々は活力を取り戻し、さらに発展をし続けた。
森が切り開かれ、見上げるほどの高いビルが立ち並ぶようになり、穏やかな暮らしをしていた蘭玉たちの生活にも変化が現れた。
蘭玉とオルガは人間に紛れて働いて暮らしていた。そんな頃、オルガはある男と恋に落ちた。男は狼のあやかしの半妖だった。オルガと半妖の男の間に、元気な男の子が産まれた。
狼牙は小さくて可愛くて、子供っていいな、と蘭玉は思った。だが蘭玉があやかしや半妖、人間の男と恋愛できるとは考えられなかった。蘭玉にとって人間の男は、からかって手玉に取るおもちゃにすぎなかったからだ。
しばらくは蘭玉とオルガ、オルガの夫と、生まれたばかりの狼牙の四人で幸せに暮らしていた。
ある時、オルガの夫は日本の暮らしに飽きたと言って、外国に行こうと言い出した。蘭玉は親友のオルガたちとの別れを覚悟した。
蘭玉は長年住んでいる日本に愛着を感じるようになっていたのだ。だがオルガは夫について行く事を拒否した。あやかしや半妖の婚姻は人間と違い、必ずしも家族が一緒にいるというわけではない。
あやかしや半妖は悠久の年月を生きる事ができるのだ。いづれまた再会できる事を約束して、オルガは夫を見送った。蘭玉はオルガに驚いて言った。
「いいの?オルガ。狼牙のお父さん行っちゃったわよ?狼牙にはお父さんが必要じゃない?」
「いいの。アイツは狼牙の事、愛してるってキスしてくれた。だからそれでいいんだ。生きていればまた必ず会える」
オルガは、よく眠っている狼牙を抱きしめながらニコリと笑って言った。
「約束したろ?蘭玉。アタシたちはずっと一緒だって」
オルガの言葉に、蘭玉は泣きそうになってしまった。蘭玉とオルガは出会ってまもなく、ある約束をした。死ぬまで一緒にいようと。オルガは蘭玉との約束を守ってくれたのだ。
人間とは百年も生きないのに、文化を発展させる能力はあやかしの比ではなかった。人間たちはより良い便利な生活を目指し、発展を続けた。いつしか島国の名は日本と呼ばれるようになった。
やがて戦争という馬鹿げた事が起こり、貧しい生活が続いたが、人々は活力を取り戻し、さらに発展をし続けた。
森が切り開かれ、見上げるほどの高いビルが立ち並ぶようになり、穏やかな暮らしをしていた蘭玉たちの生活にも変化が現れた。
蘭玉とオルガは人間に紛れて働いて暮らしていた。そんな頃、オルガはある男と恋に落ちた。男は狼のあやかしの半妖だった。オルガと半妖の男の間に、元気な男の子が産まれた。
狼牙は小さくて可愛くて、子供っていいな、と蘭玉は思った。だが蘭玉があやかしや半妖、人間の男と恋愛できるとは考えられなかった。蘭玉にとって人間の男は、からかって手玉に取るおもちゃにすぎなかったからだ。
しばらくは蘭玉とオルガ、オルガの夫と、生まれたばかりの狼牙の四人で幸せに暮らしていた。
ある時、オルガの夫は日本の暮らしに飽きたと言って、外国に行こうと言い出した。蘭玉は親友のオルガたちとの別れを覚悟した。
蘭玉は長年住んでいる日本に愛着を感じるようになっていたのだ。だがオルガは夫について行く事を拒否した。あやかしや半妖の婚姻は人間と違い、必ずしも家族が一緒にいるというわけではない。
あやかしや半妖は悠久の年月を生きる事ができるのだ。いづれまた再会できる事を約束して、オルガは夫を見送った。蘭玉はオルガに驚いて言った。
「いいの?オルガ。狼牙のお父さん行っちゃったわよ?狼牙にはお父さんが必要じゃない?」
「いいの。アイツは狼牙の事、愛してるってキスしてくれた。だからそれでいいんだ。生きていればまた必ず会える」
オルガは、よく眠っている狼牙を抱きしめながらニコリと笑って言った。
「約束したろ?蘭玉。アタシたちはずっと一緒だって」
オルガの言葉に、蘭玉は泣きそうになってしまった。蘭玉とオルガは出会ってまもなく、ある約束をした。死ぬまで一緒にいようと。オルガは蘭玉との約束を守ってくれたのだ。
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