あやかし学園

盛平

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悟の心2

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 狐太郎は、悟をジッと見つめてから言った。

「山彦が幼稚園の先生を好きだと知った時、悟はどう思ったんだ?」
「・・・。その時、僕は人を好きになるという気持ちがわからなかったから、山彦くんはすごいなと思った。そして、山彦くんの気持ちを勝手に読んで、山彦くんを傷つけた事を申し訳ないと思った」
「それだけ?先生の事を好きな山彦をからかってやろうとは思わなかったのか?」
「!。しないよ、そんな事」

 狐太郎は大きくうなずいてから悟に言った。

「悟。お前はサトリの能力を持つにふさわしい奴だと俺は思う」
「?。僕が、能力にふさわしい?」
「ああ。もし別な奴が、サトリの能力を得れば、それを悪用しようと考えたっておかしくない。だが悟は、山彦を傷つけた事を後悔している。悟だから、お前だから、サトリの能力を受け継いだんだ」

 悟はカミナリにうたれたような衝撃を感じた。それまで悟にこんな事を言ってくれた人はいなかったからだ。悟の父親でさえ、因果な能力を授けてしまってすまないと言われていたのだ。

 悟は狐太郎を信頼した。狐太郎のために何かしたいと思い、狐太郎の過去の記憶を読む事をりょうしょうした。狐太郎の手はかたくゴツゴツしていた。きっと木刀を握って、激しい鍛錬をしているからだろう。

 悟が狐太郎に意識を集中すると、狐太郎の半生の記憶が流れ込んできた。

 悟は、あまりの残酷な記憶に、思わず狐太郎の手を振り払ってしまった。

 狐太郎は、この世に生まれ落ちた時から過酷だった。生まれてすぐに妖狐である母親から引き離され、実兄からの執拗な暴力。

 実父からはおよそ愛情というものを受けた事がなく、しかも。

 悟は恐ろしいものを見る目で狐太郎を見つめた。狐太郎は苦笑して言った。

「悟。俺の計画に協力してくれるか?」
「・・・。うん、僕が君の役に立てるなら」

 狐太郎は微笑んで右手を差し出した。悟は心を読むためではなく、計画の協力者として握手を交わした。

 
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