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ほの暗い気配
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次に入った店はカバン店だった。店内には亜子でも知っているようなブランドのバッグがずらりと並んでいた。
清姫と菊花はこのバッグ可愛いと言っていたが、亜子にはバッグの良し悪しはよくわからなかった。
亜子は雪奈に言った。
「先生。先生はブランドのバッグ欲しいって思います?」
「そうねぇ、私はブランドのバッグよりも長持ちするバッグがいいわね」
あやかしの雪奈は、もう何百年も生きている。そしてこれからも何百年も生きていくだろう。そんな雪奈がいう、長持ちするバッグとは、一体どんなバッグなんだろうと亜子は想像した。
雪奈はほんわりしながら亜子たち生徒を見守っていたが、突然亜子たちに声をかけた。
「皆さん、悟くんから連絡がありました。敵襲です、皆さん速やかにお店を出て準備をしましょう」
「ええ~。先生、もっとお店を見たいです」
菊花は不満そうに雪奈に言った。他の女子たちも同意見のようで、ふてくされた表情だ。
敵襲。すなわち亜子たち半妖を狙う陰陽師たちの事だ。狐太郎の命を狙い、亜子たち半妖に敵意を持つ者たち。
やはり都会に来た亜子たちに攻撃をしかけにやって来たのだ。これまで亜子たちは、狐太郎から陰陽師の術対策の手ほどきを受けてきた。しかも亜子は、狐太郎から個別に陰陽師の術を学んでいる。
亜子たちはこれから練習の成果を見せる時なのだ。亜子が緊張していると、誰かが亜子の肩をたたいた。振り向くと音子が微笑んで言った。
「亜子、ちゃっちゃっと陰陽師を倒してショッピングを続けよ?」
「うん!」
亜子たちはカバン店から出ると、ウィングタワーの正面ゲートに出た。すると、異様な格好の五人の男たちが行くてをふさいだ。白い装束の男たち。陰陽師だ。
陰陽師たちは亜子たちを小バカにしたような表情で言った。
「あやかしと半妖が人間さまの世界でウロウロしてるんじゃねぇよ」
「目障りだから封印しちまおうぜ?」
「いいや、生ぬるい。殺しちまおう!」
「いや待て。狐太郎さまに言う事をきかせるための人質にしよう」
「そうだ。俺たちの目的は弱い半妖をなぶり殺す事ではない。狐太郎さまを確実に殺す事だ」
五人の陰陽師たちは、口々に勝手な事を言っていた。亜子たちのとなりに笑顔で立っていた雪奈が口を開いた。
「では皆さん。これから私の妖術で、異空間を作ります。存分に戦ってくださいね?」
雪奈が右手を振ると、亜子の視界は変化した。一面が氷の世界になった。だが寒くもなければ地面は凍ってもいない。雪奈のしゃれた遊び心だ。
清姫と菊花はこのバッグ可愛いと言っていたが、亜子にはバッグの良し悪しはよくわからなかった。
亜子は雪奈に言った。
「先生。先生はブランドのバッグ欲しいって思います?」
「そうねぇ、私はブランドのバッグよりも長持ちするバッグがいいわね」
あやかしの雪奈は、もう何百年も生きている。そしてこれからも何百年も生きていくだろう。そんな雪奈がいう、長持ちするバッグとは、一体どんなバッグなんだろうと亜子は想像した。
雪奈はほんわりしながら亜子たち生徒を見守っていたが、突然亜子たちに声をかけた。
「皆さん、悟くんから連絡がありました。敵襲です、皆さん速やかにお店を出て準備をしましょう」
「ええ~。先生、もっとお店を見たいです」
菊花は不満そうに雪奈に言った。他の女子たちも同意見のようで、ふてくされた表情だ。
敵襲。すなわち亜子たち半妖を狙う陰陽師たちの事だ。狐太郎の命を狙い、亜子たち半妖に敵意を持つ者たち。
やはり都会に来た亜子たちに攻撃をしかけにやって来たのだ。これまで亜子たちは、狐太郎から陰陽師の術対策の手ほどきを受けてきた。しかも亜子は、狐太郎から個別に陰陽師の術を学んでいる。
亜子たちはこれから練習の成果を見せる時なのだ。亜子が緊張していると、誰かが亜子の肩をたたいた。振り向くと音子が微笑んで言った。
「亜子、ちゃっちゃっと陰陽師を倒してショッピングを続けよ?」
「うん!」
亜子たちはカバン店から出ると、ウィングタワーの正面ゲートに出た。すると、異様な格好の五人の男たちが行くてをふさいだ。白い装束の男たち。陰陽師だ。
陰陽師たちは亜子たちを小バカにしたような表情で言った。
「あやかしと半妖が人間さまの世界でウロウロしてるんじゃねぇよ」
「目障りだから封印しちまおうぜ?」
「いいや、生ぬるい。殺しちまおう!」
「いや待て。狐太郎さまに言う事をきかせるための人質にしよう」
「そうだ。俺たちの目的は弱い半妖をなぶり殺す事ではない。狐太郎さまを確実に殺す事だ」
五人の陰陽師たちは、口々に勝手な事を言っていた。亜子たちのとなりに笑顔で立っていた雪奈が口を開いた。
「では皆さん。これから私の妖術で、異空間を作ります。存分に戦ってくださいね?」
雪奈が右手を振ると、亜子の視界は変化した。一面が氷の世界になった。だが寒くもなければ地面は凍ってもいない。雪奈のしゃれた遊び心だ。
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