あやかし学園

盛平

文字の大きさ
上 下
58 / 91

将来の職業

しおりを挟む
 亜子たち女子は、早々に展望台の見学を終えて下降エレベーターに乗った。展望台からの眺めはとても素晴らしかった。だが亜子たちのお目当ては他にあったのだ。ウィングタワーの一階に建設されているショッピング施設だ。

 亜子たちはキャァキャァ言いながら、手近の雑貨のお店に入って行った。付き添いの雪奈が苦笑しながらついて来る。

 店内には沢山の雑貨が所狭しと並んでいた。ウィングタワーをキャラクターにしたキャラクター商品や、ウィングタワーの置物や記念品があった。

 中には外国人客をターゲットにした和小物もあった。その中に可愛いちりめんで作ったがまぐちがあった。亜子は桜色のがまぐちを手に取ってしげしげと眺めた。とても可愛い。亜子が値段を見て見ると、可愛くなかった。

 亜子はそっとがまぐちを陳列棚に戻した。別な商品を見ていた音子が戻って来て言った。

「亜子!来て!あっちに可愛いのがある!」

 亜子が音子について行くと、清姫も菊花もみなももそこにいた。そこはガラスの陳列ケースが並んでいた。きっとがまぐちよりも高価な商品が入っているのだろう。

 亜子はガラスケースの中を覗きこんでため息をついた。ケースの中には美しいジュエリーが並んでいた。大きなグリーンのエメラルドのペンダント。透き通ったブルーのサファイヤの指輪。真っ赤なルビーのイヤリング。

 土産物店に陳列されている宝石だから、おそらくイミテーションジュエリーだろう。だが中学生である亜子たちからすれば、憧れのジュエリーだ。

 亜子たちはうっとりとガラスケースの中を覗き込んでいた。清姫が、ダイヤのネックレスを見つめながら、つぶやくように言った。

「私、大人になったらいっぱいお金稼いで、本物のダイヤのネックレスを買うんだわ」
「清姫ちゃん、ダイヤのネックレスを買うの?!」

 清姫の発言に、亜子は驚いてたずねた。中学生の亜子にはわからないが、ダイヤのネックレスとはきっととても高価なのだろう。清姫は美しい笑顔を浮かべて亜子に言った。

「ええ。沢山お金を稼いで、きっと買うわ。私将来、菊花と一緒にキャバ嬢になるの」
「きゃばじょうって何?」

 亜子は清姫のなろうとする職業の意味がわからなくて質問した。質問には、菊花が答えてくれた。

「亜子ちゃん。私と清姫がなろうとしているのは、男の人にお酒の給仕をする仕事なの。綺麗なドレスを着て、お化粧もするのよ?」
「へぇ?綺麗なドレスが着られるんだ!素敵!でも、私もパパにビールを注いであげるけど、それが仕事になるの?」
「そうね。不思議だけどそういう仕事もあるのよ」

 亜子は菊花の説明に納得すると同時に、菊花も清姫も、将来の仕事の事まで考えているのだと知って驚いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】妖の王の継承者は正妻志望で学園1の銀髪美少女と共に最強スキル「異能狩り」で成り上がり復讐する〜

ひらたけなめこ
キャラ文芸
【完結しました】【キャラ文芸大賞応援ありがとうございましたm(_ _)m】  妖の王の血を引く坂田琥太郎は、高校入学時に一人の美少女と出会う。彼女もまた、人ならざる者だった。一家惨殺された過去を持つ琥太郎は、妖刀童子切安綱を手に、怨敵の土御門翠流とその式神、七鬼衆に復讐を誓う。数奇な運命を辿る琥太郎のもとに集ったのは、学園で出会う陰陽師や妖達だった。 現代あやかし陰陽譚、開幕! キャラ文芸大賞参加します!皆様、何卒応援宜しくお願いいたしますm(_ _)m投票、お気に入りが励みになります。 著者Twitter https://twitter.com/@hiratakenameko7

蛇のおよずれ

深山なずな
キャラ文芸
 平安時代、とある屋敷に紅姫と呼ばれる姫がいた。彼女は非常に美しい容姿をしており、また、特殊な力を持っていた。  ある日、紅姫は呪われた1匹の蛇を助ける。そのことが彼女の運命を大きく変えることになるとは知らずに……。

後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜

あきゅう
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】  姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。  だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。  夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。

処理中です...