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明神家の陰陽師たち
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狐太郎は、自身の張った結界が破られた事を知った。新手の敵かと警戒して辺りを確認すると、背後に狼牙と、彼が抱っこしているさわらび童子がいた。その横に立っているのは自身の兄、雅樹だった。
「校長、狼牙!」
狐太郎が叫ぶと、山彦たちも背後を振り返った。さわらび童子は笑顔で言った。
「お前たち、陰陽師との戦い、見事であった。じゃがな、ここでは目立ちすぎるぞ?」
そう言ってさわらび童子は握った右手を開く動作をした。すると、それまで公園だった場所が一変して、さわらび童子の支配する異空間へと様変わりした。
辺りは一面の白い世界。その場には、狐太郎たちと倒れている三人の陰陽師、それに兄の雅樹だけだった。
さわらび童子は狼牙に言いつけて、倒れている陰陽師の側まで歩かせた。さわらび童子は、山彦に右手を破壊された男に近寄って言った。
「これ、山彦。右手が消し飛んでしまっているではないか。やりすぎだ」
「へっ!手加減したっての。人間がもろすぎるんだよ!」
さわらび童子に注意され、山彦は不貞腐れたように答えた。さわらび童子は小さくため息をついてから、右手を失った男の右手に、自身の手をそえた。
さわらび童子の手が輝きだす。すると驚いた事に、失った男の右手が再生したのだ。さわらび童子はうなずいて、狐太郎たちを振り返って言った。
「それでは皆の者、これから狐太郎と兄の雅樹の戦いを行う。皆手を出さずに見学するように」
さわらび童子の発言に狐太郎は驚いたが、狐太郎よりも、兄の雅樹の方が驚いたようだ。雅樹の顔は真っ青だった。無理もない、雅樹は霊能力が低く、狐太郎の足元にもおよばないからだ。雅樹はさわらび童子をにらみつけて叫んだ。
「おい!お前は正々堂々とのたまいたいようだが、お前は俺の部下を使い物にならなくしてくれたな!そんな奴に正々堂々と戦えなどと言われる筋合いないんだよ!」
狐太郎はハッとした。雅樹が言う部下とは、この間あやかし学園に侵入した佐久間と家入の事ではないか。さわらび童子は、彼らを無事に帰すと言っていたではないか。狐太郎は猜疑の目でさわらび童子を見た。さわらび童子は悲しい笑顔を狐太郎に向けて言った。
「すまなかったの、狐太郎。この間の二人には、自白の術をかけたのじゃ。だが、あの二人には、自白を強要されると、精神を破壊される術がほどこされていたのだ。わしは自白の術をかけた後にそれに気づいての。意識を取り戻さなかったから、明神家の前に置いておいたのだがな」
狐太郎は雅樹に怒りが湧いて叫んだ。
「兄さん!佐久間と家入は、自分たちがそんな術をかけられていた事を知っていたんですか?!」
「知るわけないだろう。明神家で雇っている陰陽師たちは、自白を強要されれば精神崩壊するように術をかけたのは父上だ」
「何て残酷な事を。兄さんも父さんも狂ってる」
「だまれバケモノ!お前を弟だと思った事など一度だってない!」
「それは俺も同感だ!いつも部下たちの後ろに隠れてないで、今日くらいは俺に攻撃してみろよ?相手してやるから」
狐太郎は、自分でも驚くくらい、残忍な感情が心の中に渦巻いていた。物心ついてから、ひたすら恐れていた兄に今この時、反旗をひるがえすのだ。
「校長、狼牙!」
狐太郎が叫ぶと、山彦たちも背後を振り返った。さわらび童子は笑顔で言った。
「お前たち、陰陽師との戦い、見事であった。じゃがな、ここでは目立ちすぎるぞ?」
そう言ってさわらび童子は握った右手を開く動作をした。すると、それまで公園だった場所が一変して、さわらび童子の支配する異空間へと様変わりした。
辺りは一面の白い世界。その場には、狐太郎たちと倒れている三人の陰陽師、それに兄の雅樹だけだった。
さわらび童子は狼牙に言いつけて、倒れている陰陽師の側まで歩かせた。さわらび童子は、山彦に右手を破壊された男に近寄って言った。
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さわらび童子に注意され、山彦は不貞腐れたように答えた。さわらび童子は小さくため息をついてから、右手を失った男の右手に、自身の手をそえた。
さわらび童子の手が輝きだす。すると驚いた事に、失った男の右手が再生したのだ。さわらび童子はうなずいて、狐太郎たちを振り返って言った。
「それでは皆の者、これから狐太郎と兄の雅樹の戦いを行う。皆手を出さずに見学するように」
さわらび童子の発言に狐太郎は驚いたが、狐太郎よりも、兄の雅樹の方が驚いたようだ。雅樹の顔は真っ青だった。無理もない、雅樹は霊能力が低く、狐太郎の足元にもおよばないからだ。雅樹はさわらび童子をにらみつけて叫んだ。
「おい!お前は正々堂々とのたまいたいようだが、お前は俺の部下を使い物にならなくしてくれたな!そんな奴に正々堂々と戦えなどと言われる筋合いないんだよ!」
狐太郎はハッとした。雅樹が言う部下とは、この間あやかし学園に侵入した佐久間と家入の事ではないか。さわらび童子は、彼らを無事に帰すと言っていたではないか。狐太郎は猜疑の目でさわらび童子を見た。さわらび童子は悲しい笑顔を狐太郎に向けて言った。
「すまなかったの、狐太郎。この間の二人には、自白の術をかけたのじゃ。だが、あの二人には、自白を強要されると、精神を破壊される術がほどこされていたのだ。わしは自白の術をかけた後にそれに気づいての。意識を取り戻さなかったから、明神家の前に置いておいたのだがな」
狐太郎は雅樹に怒りが湧いて叫んだ。
「兄さん!佐久間と家入は、自分たちがそんな術をかけられていた事を知っていたんですか?!」
「知るわけないだろう。明神家で雇っている陰陽師たちは、自白を強要されれば精神崩壊するように術をかけたのは父上だ」
「何て残酷な事を。兄さんも父さんも狂ってる」
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「それは俺も同感だ!いつも部下たちの後ろに隠れてないで、今日くらいは俺に攻撃してみろよ?相手してやるから」
狐太郎は、自分でも驚くくらい、残忍な感情が心の中に渦巻いていた。物心ついてから、ひたすら恐れていた兄に今この時、反旗をひるがえすのだ。
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