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さわらび童子のひとり言
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さわらび童子はホッとため息をついた。思っていたよりも、一年生の引率は簡単そうだった。一年の男子生徒は皆いい子で、さわらび童子の言葉を良く聞いてくれる。一番心配していた獣人の狼牙は、さわらび童子になついてくれたようだ。
さわらび童子は今、人間と妖狐の子供である狐太郎に抱っこされて展望台の通路を歩いている。獣人の狼牙は、サトリの半妖の悟と、河童の半妖の河太郎に手をつながれて、ご機嫌そうだった。
狼牙があやかし学園に来た頃は、狐太郎にべったりくっついて離れなかった。狐太郎と狼牙の担任になる雪女の雪奈は、狼牙は甘えん坊だと苦笑したが、さわらび童子はそうは思わなかった。
狼牙は狐太郎に危害を加える者を警戒しているのだ。狼牙は命がけで、狐太郎を守っているのだと思った。
あやかし学園で過ごすうちに、狼牙の気持ちは変化していった。狼牙はあやかし学園の人々を信頼し始め、狐太郎に親切にしてくれる人たちだと認めてくれたのだ。
さわらび童子はチラリと狐太郎を見上げた。狐太郎は小さく笑った。狐太郎は狼牙の心境の変化を喜んでいるのだ。
狐太郎は、あやかし学園に入学当初から、何か心に抱えている事があるように思えた。さわらび童子がいくら質問しても、彼は決して胸の内を打ち明ける事はなかった。
狼牙はしばらくは悟と河太郎にかまわれてご機嫌だったが、ふと狐太郎とさわらび童子をふりむいて、近寄って来た。
「抱っこ!」
狼牙がおもむろに狐太郎に言った。さわらび童子は、自分を狐太郎が抱っこしているから、狼牙が嫉妬したのだと思った。狐太郎もさわらび童子と同じ考えを持ったらしく、優しげに狼牙に聞いた。
「何だ?狼牙。お前も抱っこして欲しいのか?」
「違う!俺が、こうちょう抱っこ!」
どうやら狼牙は自分を抱っこしたいようだ。狐太郎は苦笑して、さわらび童子を狼牙に渡した。さわらび童子は少々緊張した。獣人の狼牙は、こぶしで石を砕くほどの怪力の持ち主だ。
さわらび童子を抱きつぶすなど、造作もない事だった。しかし狼牙は、さわらび童子を優しく抱きあげた。狼牙は強力なチカラを持っていると同時に、とても優しい心を持っているのだ。
狼牙はさわらび童子を抱き上げて、ご機嫌そうに展望台の通路を歩き出した。狐太郎たちは微笑ましそうに、さわらび童子たちを見ていた。
その時、ある事が起きた。ちょうど狼牙がエレベーターに差しかかった時、ウィングタワーから降りようとする客の一団が、エレベーターに乗り込んでいた。
狼牙は突然、叫ぶように言った。
「あ、えべれーたー!」
狼牙はさわらび童子をかかえたままエレベーターに乗り込んでしまった。エレベーターはグングン下降し、一階に到着してしまった。
狼牙はさわらび童子をかかえたまま、ものすごい速さで走り出した。狼牙はしばらく走ってから、突然立ち止まり、キョロキョロし出していった。
「コタ?コタ?どこ?」
狼牙は狐太郎が側にいない事に、ようやく気づいたようで、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
「コタァ!コタァ!うわぁん!」
「これこれ、泣くでない狼牙。よし、これをやろう」
さわらび童子はオーバーオールのポケットから布袋を取り出した。布袋の中には、イモ飴が入っている。さわらび童子は狼牙の口の中にイモ飴を入れてやった。
「甘い!」
どうやら狼牙は機嫌をなおしてくれてようだ。イモ飴は、さわらび童子の手作りだ。さつまいもを裏ごしして、はちみつを混ぜて固めて、片栗粉をまぶした昔ながらのお菓子だ。最近の子供は贅沢になってしまい、イモ飴ごときでは喜ばなくなってしまったが、幸いな事に狼牙はイモ飴が好きらしい。
狼牙はもっともっととさわらび童子にせがむ。さわらび童子は狼牙の口にイモ飴を入れながら考えた。早くウィングタワーの子供たちのところに戻らなければ。
さわらび童子は今、人間と妖狐の子供である狐太郎に抱っこされて展望台の通路を歩いている。獣人の狼牙は、サトリの半妖の悟と、河童の半妖の河太郎に手をつながれて、ご機嫌そうだった。
狼牙があやかし学園に来た頃は、狐太郎にべったりくっついて離れなかった。狐太郎と狼牙の担任になる雪女の雪奈は、狼牙は甘えん坊だと苦笑したが、さわらび童子はそうは思わなかった。
狼牙は狐太郎に危害を加える者を警戒しているのだ。狼牙は命がけで、狐太郎を守っているのだと思った。
あやかし学園で過ごすうちに、狼牙の気持ちは変化していった。狼牙はあやかし学園の人々を信頼し始め、狐太郎に親切にしてくれる人たちだと認めてくれたのだ。
さわらび童子はチラリと狐太郎を見上げた。狐太郎は小さく笑った。狐太郎は狼牙の心境の変化を喜んでいるのだ。
狐太郎は、あやかし学園に入学当初から、何か心に抱えている事があるように思えた。さわらび童子がいくら質問しても、彼は決して胸の内を打ち明ける事はなかった。
狼牙はしばらくは悟と河太郎にかまわれてご機嫌だったが、ふと狐太郎とさわらび童子をふりむいて、近寄って来た。
「抱っこ!」
狼牙がおもむろに狐太郎に言った。さわらび童子は、自分を狐太郎が抱っこしているから、狼牙が嫉妬したのだと思った。狐太郎もさわらび童子と同じ考えを持ったらしく、優しげに狼牙に聞いた。
「何だ?狼牙。お前も抱っこして欲しいのか?」
「違う!俺が、こうちょう抱っこ!」
どうやら狼牙は自分を抱っこしたいようだ。狐太郎は苦笑して、さわらび童子を狼牙に渡した。さわらび童子は少々緊張した。獣人の狼牙は、こぶしで石を砕くほどの怪力の持ち主だ。
さわらび童子を抱きつぶすなど、造作もない事だった。しかし狼牙は、さわらび童子を優しく抱きあげた。狼牙は強力なチカラを持っていると同時に、とても優しい心を持っているのだ。
狼牙はさわらび童子を抱き上げて、ご機嫌そうに展望台の通路を歩き出した。狐太郎たちは微笑ましそうに、さわらび童子たちを見ていた。
その時、ある事が起きた。ちょうど狼牙がエレベーターに差しかかった時、ウィングタワーから降りようとする客の一団が、エレベーターに乗り込んでいた。
狼牙は突然、叫ぶように言った。
「あ、えべれーたー!」
狼牙はさわらび童子をかかえたままエレベーターに乗り込んでしまった。エレベーターはグングン下降し、一階に到着してしまった。
狼牙はさわらび童子をかかえたまま、ものすごい速さで走り出した。狼牙はしばらく走ってから、突然立ち止まり、キョロキョロし出していった。
「コタ?コタ?どこ?」
狼牙は狐太郎が側にいない事に、ようやく気づいたようで、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
「コタァ!コタァ!うわぁん!」
「これこれ、泣くでない狼牙。よし、これをやろう」
さわらび童子はオーバーオールのポケットから布袋を取り出した。布袋の中には、イモ飴が入っている。さわらび童子は狼牙の口の中にイモ飴を入れてやった。
「甘い!」
どうやら狼牙は機嫌をなおしてくれてようだ。イモ飴は、さわらび童子の手作りだ。さつまいもを裏ごしして、はちみつを混ぜて固めて、片栗粉をまぶした昔ながらのお菓子だ。最近の子供は贅沢になってしまい、イモ飴ごときでは喜ばなくなってしまったが、幸いな事に狼牙はイモ飴が好きらしい。
狼牙はもっともっととさわらび童子にせがむ。さわらび童子は狼牙の口にイモ飴を入れながら考えた。早くウィングタワーの子供たちのところに戻らなければ。
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