あやかし学園

盛平

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遠足

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 亜子は胸がわき立つような思いになった。もうすぐあやかし学園の遠足があるのだ。しかも都会のウィングタワーに登るのだ。

 亜子たちの街散策は、陰陽師の襲撃にあってから完全に禁止されてしまった。清姫と菊花の街への食事も、担任の雪奈がしっかり付き添い、食事が終わればすぐさま学園に帰っている。

 当然の事なのだが、やはり残念だった。それが今回、遠足で再び街に行けるのだ。

 亜子たちは遠足でどこの箇所を周りたいか相談した。亜子たち女子はショッピングがしたいと言ったが、男子は買い物は嫌だと反発した。

 そのため女子グループと、男子グループに分かれて散策する事になった。女子には雪奈が付き添い、男子にも教師が付き添ってくれる事になった。

「ねぇねぇ、亜子。どこのお店に行きたい?」

 音子がガイドブックを広げながら目をキラキラさせて言った。

「私はウィングタワーのショップ見たい」
「だよねだよね!あたしも見たい」

 亜子と音子の言葉に、清姫も菊花もみなもも賛同する。

「おい!ウィングタワーのてっぺんに登って、度胸試ししようぜ?!」

 山彦は浮かれているのか、馬鹿みたいな事を言っている。狐太郎は顔をしかめて反論する。

「バカな事言うな、山彦。ウィングタワーは三百メートルなんだぞ?いくら半妖でも落ちたら死ぬぞ?」
「はぁ?三百メートルの高さから落ちたって死なねぇよ!」
「俺も死なねぇ!」

 山彦のいい加減な言葉に、狼牙も一緒になって騒ぐ。狐太郎は疲れたようなため息をついた。悟と河太郎は困惑顔だ。男子のグループの遠足は、前途多難なようだ。


 とうとう遠足当日の日がやって来た。その日は平日な事もあり、ウィングタワーは比較的空いていた。休日ともなると、ものすごい人の数なのだと雪奈か教えてくれた。人間とはこんなにも沢山いるのかと、亜子はあらためて関心した。

 ウィングタワーへの展望台は、エレベーターであっと言う間に到着してしまった。

「わぁ、すごい!」

 亜子は目の前に広がる大パノラマに感嘆の声をあげた。展望台はぐるりと円形になっていて、どこからでも街を眼下に見下ろす事ができるのだ。

 音子とみなもはキャァキャァと歓声をあげながら、ガラスに近寄った。亜子もそれに続く。

 亜子がガラスから下をのぞくと、ビルや家が小さく見えた。音子が亜子に言った。

「亜子は空が飛べるから、こんな景色見慣れてるよね?」
「ううん。空飛んでる時は集中してるから、下なんか見る余裕ないの。この前は着地地点を探そうとして、下ばかり見ていたら、崖に頭をぶつけて落下してしまった事もあったわ」

 亜子は冗談めかして二人を笑わせようとしたのだが、音子とみなもはこわばった笑顔だった。どうやら亜子は冗談のセンスがないようだ。

 

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