あやかし学園

盛平

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狐太郎とさわらび童子

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 狼牙を抱いた狐太郎は、校長室に案内された。中は小さな和室だ。さわらび童子は笑顔で狐太郎たちに質問した。

「狐太郎、狼牙。ケガの具合はどうじゃ?」
「大丈夫です。ご心配とご迷惑をおかけしました」
「うむ。お主たちが無事で何よりじゃ。所で、あの二人の人間は、お主の家の者か?」
「はい。神明家の陰陽師です」
「うむ。奴らの目的は、狐太郎、お主の命か?」
「・・・。はい」
「今回の事は、わしの油断じゃ。生徒の中には人間の生気が食事の者もいる。その者たちはどうしても人間の世界に行かなければならんからの。だが、これからはもっと結界を強くする。いくら霊能力があっても容易に見つけられまい」

 狐太郎はギュッとしがみついている狼牙を抱きしめたまま、校長に言った。

「校長、やはり私はこの学園をやめようと思います。このままでは他の皆に迷惑をかけてしまいます」
「いや、それにはおよばん。お主たちはわしの大切な生徒じゃ。生徒を守るのは教師のつとめじゃ」

 狐太郎は下くちびるを噛んだ。やはり学園をやめる事は叶わなかった。学園をやめて、狼牙と二人で全てから逃げ出せたらどんなに良かっただろうか。

 校長は、二人の陰陽師の処遇は自分に任せてほしいと言った。狐太郎が不安そうに校長を見ると、彼は笑って答えた。

「何、命までは取らん。ここでの記憶は消すがな」

 狐太郎は、ホッと胸を撫で下ろした。いくら狐太郎の命を狙ったからといって、これまで同じ家で暮らしていた者たちが死ぬのは後味が悪い。

 狐太郎は早く校長室から帰りたかったが、校長は中々退室の許可をくれなかった。

 校長は、かたくなな狐太郎に苦笑して言った。

「のう、狐太郎。わしに何か言いたい事はないか?」
「・・・。いえ、ありません」
「・・・。そうか」

 狐太郎は小さく息をはいた。これで解放される。狐太郎がそう思った瞬間、校長が口を開いた。

「そうじゃ、狐太郎。一つ頼まれてくれぬか?」

 校長であるさわらび童子の提案に、狐太郎は思わず顔をしかめた。だがここで了承しなければ退室は許されないだろう。狐太郎は仕方なく校長の頼み事を承諾した。

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