あやかし学園

盛平

文字の大きさ
上 下
33 / 91

狐太郎の敵

しおりを挟む
 狐太郎があやかし学園の校庭に到着すると、音子の言った通り、二人の男が立っていた。白い着物。陰陽師の衣装だ。男たちは狐太郎に気づくと、いんぎんに黙礼して言った。

「これはこれは、狐太郎さま。自らご足労いただけるとは、半妖を痛めつけて、貴方の居場所を吐かせる手間がはぶけました」
「我々がここに来た理由もお分かりですよね?」

 二人の男たち。狐太郎の兄である雅樹の部下だ。長身で大きな鼻の男は佐久間。のっぺりした顔の男は家入。二人とも能力の高い陰陽師だ。

 この二人は、兄雅樹の命により、狐太郎の命を奪いに来たのだ。狐太郎は、いずれ兄の雅樹に、あやかし学園の場所を探し当てられると考えていたが、それはもっと先の話しだと考えていた。

 あやかし学園はさわらび童子の強力な妖術で守られていたからだ。だが佐久間と家入に簡単に見つけられてしまった。

 狐太郎は表面上は顔色を変えずにいたが、内心は焦っていた。佐久間と家入は、この場で確実に狐太郎を殺そうとするだろう。

 狐太郎は陰陽師としてはまだまだ未熟だ。半妖としての妖術も、母親である妖狐から習う事を禁止されていたので、使いこなす事ができない。

 今の狐太郎では、この二人を倒す手立てがないのだ。狐太郎に残された道は、何とか生きのびる事だ。他力本願は不本意だが、生き残っていれば、校長であるさわらび童子が、侵入者に気づいてくれるかもしれない。

 狐太郎は戦う覚悟を決め、胸元から札を二枚取り出し、素早く呪文を唱え、佐久間たちに投げつけた。札はクサリに変化し、佐久間と家入に巻きついて、二人を拘束した。

 二人はにやりと笑うと、素早く呪文を唱えた。狐太郎の拘束の術が解除されてしまった。佐久間は胸元から人形の紙を取り出し、呪文を唱えた。紙人間は、巨大な白い巨人になり、狐太郎に襲いかかった。

 陰陽師の術では狐太郎では勝てない。狐太郎は仕方なく、練習途中の妖術を使った。狐火。狐太郎は、沢山の青白い炎のかたまりを作り出し、白い巨人に当てた。

 白い巨人はこぶしで狐火を打ち落としながら、狐太郎に近寄って来る。狐太郎は、巨人の手を、側転やバック転で器用に避けた。だがこんな悪あがきも時間の問題だ。

 狐太郎は逃げながら、打開策を考えていると、遠くで声がした。

「狐太郎くん!」

 亜子たちの声だ。幼い半妖の亜子たちでは、陰陽師たちに太刀打ちできない。この場に来ては危険だ。狐太郎は大声叫んだ。

「こっちに来るな!先生を呼んで来てくれ!」

 亜子たちはただならない雰囲気を悟ったのだろう。きびすを返して走ろうとした時、家入が胸元から札を取り出して投げた。素早く呪文を唱えると、校庭一帯が防御結界の中に取り込まれてしまった。

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

彼女は処女じゃなかった

かめのこたろう
現代文学
ああああ

ようこそ、悲劇のヒロインへ

一宮 沙耶
大衆娯楽
女性にとっては普通の毎日のことでも、男性にとっては知らないことばかりかも。 そんな世界を覗いてみてください。

処理中です...