上 下
34 / 45
夢を操る犯罪

ギャングスターの最期?

しおりを挟む
僕は、過去に書いた小説を思い出しながら、野々宮に話を塗り替える方法を考えた。それは、生死をさまようより、難しく感じてしまった。
そんな様子を見た野々宮は、僕に歩み寄ってきた。
「剛史、俺、物書きさんの世界は知らねえけど、お前の力になりてえんだ。何か、剛史の小説の内容を聞かせてくれねえか?」
僕は、九州に辿り着いた後、黄島が、九州で活躍する戦隊ヒーローと遭遇することを教えた。
「この、黒岩ってヤツが、青山に似てることになってるのか…。じゃあ、その赤井ってヤツを、俺に出来ねえか?」
野々宮は、ヒントになるような提案をした。
「…それならいっそ、この鬼軍団を、ギャングスターが倒すことにすれば!」
僕は、野々宮と共に、全員が生きて帰る方法でシナリオを作り上げていった。

その頃、犯人のシナリオも動いていた。それは、青山と黄島が、夢の中で犯人に扮した悪に倒されるというシナリオだった。
夢の中では、犯人のシナリオ通りに、青山と黄島は、ギャングスターの姿で、得体の知らない敵と苦戦する状況にいた。そして、九州の門司港付近で、ブルーギャング、イエローギャングの戦闘スーツに身を包んだまま、二人は倒れ転がった。
「うっ!あ、青山!」
「き、黄島…。」
青山と黄島は、お互い呼び合いながら、ボロボロに破壊された戦闘スーツの痛みに耐えていた。

一方、剛史が書くシナリオも完成し、宇宙警察への報告も済ませた。
「よし、後は、俺があの細胞を浴びれば!」
野々宮が、決意を言葉にすると、僕は、
「僕は、どうすれば?」
と聞き返した。
「お前は、犯人に勝った、第一人者だ。あとは、俺たちが必ず続く。だから、眠らないで待ってるんだ。」
野々宮は、僕に力強く応えると、犯人のアジトへ向かった。

野々宮は、犯人に割り当てられやすいように、レッドギャングの姿で街を歩いた。
「堂々と、そんな格好で現れるとは、いい度胸だな!?」
すると、犯人が、野々宮の前に姿を現した。
「せっかくなら、貴様のその戦闘スーツも、メタメタに切り裂いてやりたいな!」
そして、犯人は、剣技で野々宮を追い詰めた。野々宮が、苦しみながら仰向けに倒れると、
「止めだ!」
と言いながら、野々宮の腹を、剣で突き刺した。
「あーっ!ぐ、いてて…。」
野々宮は、例の細胞を体内に入れ、生死を彷徨う素振りを見せた。犯人は、それが野々宮の策略だとは、気付くすべもなかった。

病院で待つ僕の前には、野々宮、青山、黄島の三人の身体が、遺体のように並べられた。
「皆さん、信じています。絶対に、生きて帰ってきてくれることを。」
僕は、野々宮がしてくれたように、三人の手を一人ずつ握り返しながら、そっと呟いた。
しおりを挟む

処理中です...