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夢を操る犯罪

小説と現実の狭間で

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黄島は、
「剛史のシナリオだと、この後どうなるんだ?」
と、尋ねてきたので、
「青山さんが病気で亡くなって、黄島さんが九州に漂流するんだ。」
と、答えた。すると、
「確かに、このままだと、九州に行くな。でも、俺は生きてるし…。ん?剛史、コイツは、俺たちに味方してるぞ!?」
と、青山は話した。
「どうして?」
僕が聞き返すと、
「俺が生きてるところで、既に剛史のシナリオから逸れてる。これが、犯人の誤算だとしたら、もしかして。」
と、青山は答えた。そして、僕たちは、九州に辿り着こうとしていた。

その頃、野々宮の前では、僕、青山、黄島共に危篤状態に陥っていると、医師から聞かされた。
「…いや、剛史たちは、死をさまよってる訳じゃねえ。何とかして、呼び返さねえと。」
と、野々宮は、少し涙目で、眠る僕の手を握った。そして、
「剛史、頼む、戻ってきてくれ。」
と、野々宮は、呟いた。

一方、夢の向こうでは、僕の手が、熱を帯びるのを感じた。そして、野々宮の声が僕だけに聞こえた。
「野々宮さんが、僕を呼んでる。」
青山は、
「そっか。剛史は、一旦、野々宮のところに行った方が良いかも。」
と察知した。黄島は、
「でも、剛史がいねえと、俺たちは?」
と、心配したが、
「ここは、剛史が作った世界だぜ?俺たちは、絶対に負けねえ。剛史が、そうしてくれるはずだろ?」
と、青山は、いつも以上に、情熱的に力強く応えた。僕は、
「分かりました。野々宮さんに報告します。それで、必ずみんな助かる方法で、シナリオを作り上げます。」
と、青山と黄島に力強く答えた。そして、僕は、青山と黄島に守られながら、眠りについた。

暫くして、僕が目を開けると、目の前には、野々宮が僕の手を握りながら見守っていた。
「野々宮さん?」
「剛史、良かった。俺、信じてた。」
僕は、野々宮の情熱にも触れた。そして、僕は、三人を同じように愛し、愛されていたことに気付かされた。
「野々宮さん。青山さんと黄島さんも助けたい。そのためには、僕がシナリオを作らないといけないんだ。」
僕が話すと、野々宮は、少し戸惑う顔を見せながら、
「シナリオ?俺、剛史に付いてやるから、分かるように説明してくれ。」
と、僕に冷静に確かな言葉を返した。

僕が、野々宮に、僕が書いた世界が夢になっていることを話すと、
「…じゃあ、今、青山たちがいる世界では、俺はどうなってることになってるんだ?」
と、野々宮が聞き返した。
「…野々宮さんは、既に亡くなってることに。」
と、僕が答えると、
「うーん。何とか、俺を甦らせる方法はねえか?剛史の世界なんだろ?例えば、変な話、俺を神に見立てるとか。」
と、野々宮は、自分でも恥ずかしくなるような提案をした。
「野々宮さんを甦らせるんですね?僕、書いてみます。」
僕は、素直に聞き入れ、シナリオを練り直した。
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