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始まり

旅立ちの時

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朝。僕は、いつものように仕事に出る準備をして、自分の部屋から出た。それから、何分だっただろうか?マンションの階段を下りようとした時、突然自分の前が真っ暗になった。真っ暗になったというか、時が止まったかのような錯覚に陥った。

気がつくと、僕は、赤い服に身を包んだ男におぶられながら、地下の駅の階段を下りていた。自分の身を確かめると、異常に背が低くなったように感じた。それもそのはず、自分は、数十年前の学生の姿になっていた。
「おい、やっと気づいたのか?」
男は、駅のホームに辿り着くと、ため息をつきながら、僕を下ろした。
「俺は、野々宮。」
男は、僕に自己紹介をした。
「それより、大丈夫か?」
僕は、野々宮の言葉に首を傾げた。
「お前、京都駅の新幹線のホームで倒れてたんだ。近くの病院に連れて行ったら、意識がないだけで、安静にすれば治るって言うから、俺の部屋で看病した方が良いのかと思って。」
「ここは、京都なのか!?」
僕が、驚いて声を張り上げると、
「そんな大声出せるなら、問題ねえな。」
野々宮は、そう言って後を去ろうとした。慌てて僕は、
「待ってください。僕、帰りの電車賃とかないし。」
と、野々宮を引き止めた。そして、そのまま、野々宮の部屋へ向かった。

野々宮の部屋へ来た僕は、驚きを隠せない顔で周りを見回した。まるで、戦隊モノの基地にでもいるような気持ちだった。そして、野々宮の腕を確かめると、ヒーローに変身する人が付けるようなブレスレットを身につけていた。
「野々宮さんは、何者なんだ?」
僕が、唐突に尋ねると、
「お前に言うことはないな。一つだけ、俺たちには、関わらない方が良い。」
野々宮が話す間に、別の青い服を纏った男が、部屋に入ってきた。
「野々宮、その子は?」
「青山、戻ったのか。こいつは、倒れてたから助けてやったんだ。」
青山は、野々宮から事情を聞くと、僕には構わずに、調べものを始めた。
「宇宙からの警察みたいなヤツらに追われて、散々だな。」
青山は、僕には訳の分からないことを野々宮に呟いた。
「黄島は?」
「北海道に飛んでくれて、身を潜める場所を探してる。」
野々宮と青山の話を聞いていた僕は、もう一人仲間がいることを察した。

その時、何かを知らせるブザーが鳴った。
「しまった!警察だ!」
「仕方ねえ。行くしかねえな。」
野々宮と青山は、そう言ってブレスレットのスイッチを押した。すると、正しく戦隊モノの様な戦闘スーツに身を包み、レッドギャング、ブルーギャングに変身した。
「青山、俺が時間を稼ぐから、その間にそいつを何とかしておいてくれ!」
レッドギャングに変身した野々宮は、そう言って部屋の外へ出ていった。
「仕方ねえな。おい、空港に行くぞ!」
ブルーギャングの青山は、僕に付いてくるように誘導した。しかし、
「ごめんなさい。足をくじいたみたいで。」
と、僕は階段から転がったときの怪我に気付き、足を止めた。
「大丈夫か?俺の肩に掴まれ。」
青山は、僕に肩を貸しながら、阪急の烏丸駅を目指した。
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