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本編
第7話 メタモルフォーゼ!!
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「ひとまずこれくらいでいいか」
モンスター客から水をかけられたセミロングのウィッグは、地道なタオルドライの甲斐あって被っても気持ちが悪くならない程度には水分を取ることができた。大きめタオルを丸めてから、それにウイッグを被せる。ウィッグスタンドがないので、その代わりだ。
次はメイクに取り掛かる。一旦メイク落としシートで顔を拭き取ってからベース、ファンデーション、コンシーラー、フェイスパウダーと重ねる。アイシャドウは淡い色で施し、ビューラーをかけてからアイラインはキツくなりすぎないように引いていく。マスカラはダマにならないようにつけるのが難しいので、柊夜には苦手な作業だ。エクステンションの睫毛を着けていればもう少し楽なのだろうが、普段睫毛バサバサなのも困るのでそれはできない。
アイメイクを終えてリップを塗り、眉毛を描く。華美になりすぎないように注意をしつつ仕上げた。ウィッグを被り、後ろの部分をゴムでくるくると纏めてからサイドの髪を少し垂らす。クリーニングされたウェイトレスのユニフォームに着替えてカフェエプロンを着ければ、ブラン・ノワールの看板娘の出来上がりだ。鏡の前でくるりと一回りすると、柊夜は満足げに頷く。
「我ながら上出来上出来」
カフェの手伝いを始める際に姉の朝実から女装を強要されてから数年、女装もメイクも手慣れたものだ。最初こそ抵抗をしていたが、結局姉に逆らうことはできなかったので諦めて受け入れた。ウェイトレス姿が客から好評であったためそのまま定着してしまい、引っ込みがつかなくなったのでそのまま女装を続けている。どこからどう見てもかわいい系お姉さんにしか見えないし、接客中は声をできるだけ高めにするように作っているので、元彼女であるあずさが柊夜に気づけないのも無理はなかったのである。
柊夜が女装した男であると知っているのは家族とバイト仲間と、祖父母の時代からの一部常連さんのみであり、その他の人間には絶対に秘密だ。柊夜にとって女装は趣味なわけでも好きなわけでもないので、人に知られたくはないのである。
柊夜が身だしなみチェックを終え、バックヤードに戻るとすぐさま陽葵が寄ってきた。
「悪い、ちょっと遅くなった。ごめんな、大丈夫だったか?」
アルバイトはシフト制でホールスタッフ、厨房スタッフ共にそれぞれ二人ずつ配置される。今日はどちらももう一人の都合がつかなかったためホールも厨房もバイトが一人ずつしかいない。それなのにホール担当の柊夜がトラブルで引っ込んでしまっていた。自分の仕事なのにと申し訳なく思い、柊夜がしょげる。
「大丈夫。暁ちゃんが厨房作業は助手免除してくれたから、俺とマスターで十分回せたよ」
陽葵がにかっと笑い、暁は親指を立てる。貴匡はレジ対応中でいないが、柊夜の抜けた穴はきっちり埋めてくれたようだ。この場にいる二人に向けて柊夜はそっと手を合わせる。
「おおおお……三人ともありがとう……今度お礼する」
「お、じゃあ後で肩たたきしてほしい」
「俺はバイト終わったら一緒にご飯食べに行きたい!」
「どっちも了解」
「やったー! ひぃちゃん先輩とご飯!」
礼にもならないような可愛らしいお願いだ。柊夜は二つ返事で受け入れた。
二人と和やかにやり取りを交わした後、柊夜はホールの様子を窺う。店内は先程とは打って変わり、穏やかな空気を取り戻していた。会計対応を終えた貴匡がひらひらと手を振ってきたので柊夜も振り返す。貴匡はニコニコしながら柊夜へと寄ってきた。
「マスター、ありがとう」
「問題なかったから気にしないで」
「なんかお礼する」
「そんなのいいのに、困ったときはお互い様だよ。あ、じゃあ今度おすすめの漫画貸してもらおうかな」
貴匡にも礼にもならないことを言われてしまった。三人の優しさに感謝しつつ、厳選した漫画を家に届けようと心に誓う。厄介ごとも済んだので残りのバイト時間に精を出そうと気合を入れた時だった。
「あ、柊ちゃん。そういえばさっきのお客さん柊ちゃんのことを待ってるよ」
「え?」
「イケメンの子。おかわりのコーヒーを飲みながらね」
うえ、と柊夜の顔が歪む。厄介ごとは終わっていなかったらしい。
都村は三杯目のコーヒーを飲んでいた。柊夜が戻るまで待つと言って。そんなにしてまで待たれていたのならば行かざるを得ない。意を決して都村の元に向かう。
「……お客様、お待たせしました。ご用でしょうか?」
柊夜が完全接客モードで話しかけると、都村は勢いよく振り向いた。破顔したかと思ったら、すぐに申し訳なさそうな顔になる。
「さっきは俺のために酷い目に遭わせちゃってすみませんでした。怖かったですよね。庇ってくれてありがとうございました」
都村が起立した上、頭を下げてきた。柊夜は慌ててそれを制す。
「お客様はどうか気になさらないでください。私は店員としての対応を取らせていただいたまでです。せっかくのおくつろぎの時間があのようなことになってしまい、申し訳ありませんでした」
今度は柊夜が頭を下げた。嫌な思いをしただろうから都村はもうこの店には来ないだろう。柊夜としては同じ大学の人間が来なくなるという点においては正直助かるが、お客様に不快な思いをさせてしまったことが悔やまれる。
そうこうしていると都村も再び頭を下げてきて、お互いが頭の下げ合いになってしまったのが何だかおかしくて。目が合った瞬間二人して笑ってしまった。
「このお店、すごくいいですよね」
「え?」
「コーヒーもすごく美味しいし、それに……ね」
「??」
都村が柊夜をじっと見つめてきた。意味ありげな視線に柊夜は戸惑う。困惑の表情を浮かべる柊夜に都村は微笑みかけた。
「また来ますね」
「ひぁ!?」
都村に不意に手を取られ、変な声が漏れる。飛び退きたくなったがそれはどうにか堪えることができた。
(なんっでこいつすぐ触ってくるんだよ! イケメン馴れ馴れしすぎか!?)
手を振り払いたいが、そうするわけにもいかない。
「え、えと……お、お客様?」
柊夜は目で離せ、と訴えた。
「何ですか?」
通じなかった。都村は手を離す気配がない。それどころか、もう片方の手も重ねてきた。
「あ、あの、お、お客様? その、手を……」
「あ、店員さんの名前教えてもらっていいですか?」
「え? あ、えっと……あー……」
離せと言おうとしたら言葉を遮られた。王子の笑顔が眩しい、そして近い。イケメンオーラという名の圧がすごい。男の柊夜ですら圧倒されて次の句を継げなくなってしまった。都村はニコニコと返事を待っている。ヘラ、と柊夜にぎごちない笑みが浮かぶ。
「お客様、その手を離してもらえますか」
柊夜の背後からドスの効いた声がした。恐る恐る後ろを振り返るとそこには何時の間にか陽葵が立っている。
(ヒッ!)
陽葵の浮かべる表情に、柊夜は思わず出そうになった悲鳴を必死に噛み殺した。
「その人メニューに載ってないんで、気安く触れないでもらえますか?」
怒りを抑えようとして浮かべる笑顔が却って凶々しい。無表情の時も怖いがこれはこれで怖いものがある。柊夜が怯えていると、隣で都村がふっと笑った。
「そんなつもりじゃなかったんだけど、すみません。さっきの感謝を伝えたかっただけなんですよ」
「それはもう済んだお話ですから」
柊夜の手がようやく都村から解放される。そのあと都村は会計を済ませて帰っていったが、陽葵を取り巻くピリピリとした空気は消えなかった。
モンスター客から水をかけられたセミロングのウィッグは、地道なタオルドライの甲斐あって被っても気持ちが悪くならない程度には水分を取ることができた。大きめタオルを丸めてから、それにウイッグを被せる。ウィッグスタンドがないので、その代わりだ。
次はメイクに取り掛かる。一旦メイク落としシートで顔を拭き取ってからベース、ファンデーション、コンシーラー、フェイスパウダーと重ねる。アイシャドウは淡い色で施し、ビューラーをかけてからアイラインはキツくなりすぎないように引いていく。マスカラはダマにならないようにつけるのが難しいので、柊夜には苦手な作業だ。エクステンションの睫毛を着けていればもう少し楽なのだろうが、普段睫毛バサバサなのも困るのでそれはできない。
アイメイクを終えてリップを塗り、眉毛を描く。華美になりすぎないように注意をしつつ仕上げた。ウィッグを被り、後ろの部分をゴムでくるくると纏めてからサイドの髪を少し垂らす。クリーニングされたウェイトレスのユニフォームに着替えてカフェエプロンを着ければ、ブラン・ノワールの看板娘の出来上がりだ。鏡の前でくるりと一回りすると、柊夜は満足げに頷く。
「我ながら上出来上出来」
カフェの手伝いを始める際に姉の朝実から女装を強要されてから数年、女装もメイクも手慣れたものだ。最初こそ抵抗をしていたが、結局姉に逆らうことはできなかったので諦めて受け入れた。ウェイトレス姿が客から好評であったためそのまま定着してしまい、引っ込みがつかなくなったのでそのまま女装を続けている。どこからどう見てもかわいい系お姉さんにしか見えないし、接客中は声をできるだけ高めにするように作っているので、元彼女であるあずさが柊夜に気づけないのも無理はなかったのである。
柊夜が女装した男であると知っているのは家族とバイト仲間と、祖父母の時代からの一部常連さんのみであり、その他の人間には絶対に秘密だ。柊夜にとって女装は趣味なわけでも好きなわけでもないので、人に知られたくはないのである。
柊夜が身だしなみチェックを終え、バックヤードに戻るとすぐさま陽葵が寄ってきた。
「悪い、ちょっと遅くなった。ごめんな、大丈夫だったか?」
アルバイトはシフト制でホールスタッフ、厨房スタッフ共にそれぞれ二人ずつ配置される。今日はどちらももう一人の都合がつかなかったためホールも厨房もバイトが一人ずつしかいない。それなのにホール担当の柊夜がトラブルで引っ込んでしまっていた。自分の仕事なのにと申し訳なく思い、柊夜がしょげる。
「大丈夫。暁ちゃんが厨房作業は助手免除してくれたから、俺とマスターで十分回せたよ」
陽葵がにかっと笑い、暁は親指を立てる。貴匡はレジ対応中でいないが、柊夜の抜けた穴はきっちり埋めてくれたようだ。この場にいる二人に向けて柊夜はそっと手を合わせる。
「おおおお……三人ともありがとう……今度お礼する」
「お、じゃあ後で肩たたきしてほしい」
「俺はバイト終わったら一緒にご飯食べに行きたい!」
「どっちも了解」
「やったー! ひぃちゃん先輩とご飯!」
礼にもならないような可愛らしいお願いだ。柊夜は二つ返事で受け入れた。
二人と和やかにやり取りを交わした後、柊夜はホールの様子を窺う。店内は先程とは打って変わり、穏やかな空気を取り戻していた。会計対応を終えた貴匡がひらひらと手を振ってきたので柊夜も振り返す。貴匡はニコニコしながら柊夜へと寄ってきた。
「マスター、ありがとう」
「問題なかったから気にしないで」
「なんかお礼する」
「そんなのいいのに、困ったときはお互い様だよ。あ、じゃあ今度おすすめの漫画貸してもらおうかな」
貴匡にも礼にもならないことを言われてしまった。三人の優しさに感謝しつつ、厳選した漫画を家に届けようと心に誓う。厄介ごとも済んだので残りのバイト時間に精を出そうと気合を入れた時だった。
「あ、柊ちゃん。そういえばさっきのお客さん柊ちゃんのことを待ってるよ」
「え?」
「イケメンの子。おかわりのコーヒーを飲みながらね」
うえ、と柊夜の顔が歪む。厄介ごとは終わっていなかったらしい。
都村は三杯目のコーヒーを飲んでいた。柊夜が戻るまで待つと言って。そんなにしてまで待たれていたのならば行かざるを得ない。意を決して都村の元に向かう。
「……お客様、お待たせしました。ご用でしょうか?」
柊夜が完全接客モードで話しかけると、都村は勢いよく振り向いた。破顔したかと思ったら、すぐに申し訳なさそうな顔になる。
「さっきは俺のために酷い目に遭わせちゃってすみませんでした。怖かったですよね。庇ってくれてありがとうございました」
都村が起立した上、頭を下げてきた。柊夜は慌ててそれを制す。
「お客様はどうか気になさらないでください。私は店員としての対応を取らせていただいたまでです。せっかくのおくつろぎの時間があのようなことになってしまい、申し訳ありませんでした」
今度は柊夜が頭を下げた。嫌な思いをしただろうから都村はもうこの店には来ないだろう。柊夜としては同じ大学の人間が来なくなるという点においては正直助かるが、お客様に不快な思いをさせてしまったことが悔やまれる。
そうこうしていると都村も再び頭を下げてきて、お互いが頭の下げ合いになってしまったのが何だかおかしくて。目が合った瞬間二人して笑ってしまった。
「このお店、すごくいいですよね」
「え?」
「コーヒーもすごく美味しいし、それに……ね」
「??」
都村が柊夜をじっと見つめてきた。意味ありげな視線に柊夜は戸惑う。困惑の表情を浮かべる柊夜に都村は微笑みかけた。
「また来ますね」
「ひぁ!?」
都村に不意に手を取られ、変な声が漏れる。飛び退きたくなったがそれはどうにか堪えることができた。
(なんっでこいつすぐ触ってくるんだよ! イケメン馴れ馴れしすぎか!?)
手を振り払いたいが、そうするわけにもいかない。
「え、えと……お、お客様?」
柊夜は目で離せ、と訴えた。
「何ですか?」
通じなかった。都村は手を離す気配がない。それどころか、もう片方の手も重ねてきた。
「あ、あの、お、お客様? その、手を……」
「あ、店員さんの名前教えてもらっていいですか?」
「え? あ、えっと……あー……」
離せと言おうとしたら言葉を遮られた。王子の笑顔が眩しい、そして近い。イケメンオーラという名の圧がすごい。男の柊夜ですら圧倒されて次の句を継げなくなってしまった。都村はニコニコと返事を待っている。ヘラ、と柊夜にぎごちない笑みが浮かぶ。
「お客様、その手を離してもらえますか」
柊夜の背後からドスの効いた声がした。恐る恐る後ろを振り返るとそこには何時の間にか陽葵が立っている。
(ヒッ!)
陽葵の浮かべる表情に、柊夜は思わず出そうになった悲鳴を必死に噛み殺した。
「その人メニューに載ってないんで、気安く触れないでもらえますか?」
怒りを抑えようとして浮かべる笑顔が却って凶々しい。無表情の時も怖いがこれはこれで怖いものがある。柊夜が怯えていると、隣で都村がふっと笑った。
「そんなつもりじゃなかったんだけど、すみません。さっきの感謝を伝えたかっただけなんですよ」
「それはもう済んだお話ですから」
柊夜の手がようやく都村から解放される。そのあと都村は会計を済ませて帰っていったが、陽葵を取り巻くピリピリとした空気は消えなかった。
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