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サイド家と番の秘密

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「着きましたよ、セイマ様。」


馬車から降りた場所にあった、サイド家の屋敷はかなり広大な敷地を持っていた。


「ここが、ハーシーの家か…広いね。」

「ほとんど研究施設ですよ。
居住区域は、それほど広くないですから。」


なるほど…領都に入る時にも気づいたけど、街壁に人工魔法障壁の発生装置を使用しているんですね。


そして更に、領主館にも施設毎に強力な人工魔法障壁ですか。
こっちはたぶん、研究施設内の事故の為でもあるのかな?


何かあった時に町に被害を出さない為に……


サイド家はトール王の八男の子孫で、魔道具師の家系。
トール王から、スキル《化学》を受け継いでいる。
どんなスキルかよくわからないけど、悪用されるとかなり不味いらしい。


他にも、変わったスキルを持っていると、噂です。


今のところ、彼らに王家に逆らう気がないので、安心かな?
定期的に王家から降嫁しているし、いろいろと優遇していますからね。


最近では先代の国王…つまり祖父の腹違いの妹姫がサイド家に降嫁しています。
なので彼と私は再従兄弟はとこなんです。


彼はいつも良い香りがします。
私の一番好きな香り……
稀に同性同士の番があるそうですが、彼にそれを明かす気はありません。


彼、ノーマルですし…その事にまったく気づいてませんから。
それに番同士だからと言って、絶対結婚しないといけない訳じゃありませんし、番と会えない方の方がほとんどですしね。


嫌われて逃げられるくらいなら、じゃれつくフリして友人関係を続けた方がマシ。


と、ずっとそう思っていたのですが先日、彼の妹ターク嬢と王都の国立図書館でばったり会った時に、気がついてしまいました。


どうやら、私の番はターク嬢の方だったようです。
兄妹なので、香りが似ていたのでしょうか?
しかし残念ながら、彼女にはラック大きな番犬が付いていて、本性が猫よりの私ではとても勝ち目がないので諦めました。


私の【聖人】スキル、【神降ろし神猫憑き】はを身体に降すので、スキルを使った後とか暫く猫耳が付いたままなんです。


なので、犬系等の方は大の苦手でしてね。
ここはやはり、ハーシーで我慢?
あゝやっぱり良い香りがして、落ち着きます♪


スンスン♪あゝ良い香り~♪♪
ゴロゴロ♪


「あ…あの、セイマ様?
とりあえず中へ……… 。」


あゝそうでした。
早く中に入って、ハーシーを抱きしめたい。
流石に外でコレ以上、じゃれついてるとマズイですからね。
ハーシーの世間体が……


190センチのが、平均身長の領主の三男を抱きしめている様にしか見えませんから。


「オッホン!勇者セイマ様、ようこそ我がサイド家へ。当主のライハルト様が中でお待ちです。」


屋敷の門前でじゃれていたら、いつの間にか使用人が私達を出迎える為に並んでいて、顔見知りのサイド家の執事に呆れた目で見られてしまいました。


反省です。


「あはは…暫くの間、宜しく頼みますね。」


昔から苦手なんですよね、この執事。
絶対、私とハーシーの仲を疑ってますよね?
まぁ私自身もつい最近まで、そう思っていたので仕方ないんですけど……


30分前~

(当主執務室)

「お館様!たいへんでございます!
冒険者ギルドに【聖人】様が!」


おお、やっといらっしゃったか!
何故か到着が遅れていたので、心配していたのだ。
数日前、我がサイド領で流行病が発生した。
その発生自体は毎年の事なのだが、子供や高齢者が罹ると、稀に死に至る病なのだ。


なので毎年、この時期に神殿に依頼して【聖人】様を派遣してもらっているのだ。

「いらっしゃったか。で、誰がお出で下さったのだ?」

「それが…【勇者】セイマ様がお一人で…… 。」

「な…何だと!?護衛はどうした?」

「ちょうどハーシー様がいらっしゃったので、ご一緒にご事情をお聴きしたのですが、『勇者パーティーをクビになった。』とおっしゃっていました。」

「???意味が解らん?」

「大丈夫です。お館様…私も意味が解りませんから。」

「とりあえず、殿下をお迎えする準備をしろ!
部屋の場所はなるべくハーシーの部屋に近い場所に!
それから絶対、部屋に柑橘系の香りや、柑橘類は置いてはならんぞ!」

「はっ!了解致しました!!」


よりによってセイマ様か……
今回は罹患率が高いので、神殿の判断として間違ってはいないのだが、ハーシーのいる時にいらっしゃるとはな。




☆ターク嬢&ラックのお話しは、

ユイナーダ学園高等部③~どうやら僕は名探偵らしいですね【連載版】

で読めます。










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