101 / 109
第8章 卒業式に向けて編
婚約者候補が来た 4
しおりを挟む
ドキドキしながら、尻尾をキリリと巻いて指定された部屋に入ると、中には愛しい人の生まれ変わりの婚約者候補…ジョナサン様とその護衛の強そうな男性。
そして、ワタシ達をここまで案内してくれたタマキという商人が、何故かとても残念そうな顔をして立っていたの。
ジョナサン様に即されて向かい側のソファーに座ると、とても真剣な表情で質問をされました。
「もしかしてナノハナ姫は、昔飼っていたアケビなのか?」
「はい♪ワタシは昔、貴方が飼っていたアケビです!
ここに至るまで、ずっと貴方を探していたのですよ。」
あゝやっと会えた!ワタシの愛する人に!!
「そうか…やはりそうなのか…… 」
ジョナサン様はそう呟かれ暫く何か考えた後、とても残念そうにこう言われました。
「アケビ…いやナノハナ姫、残念だけど今回の婚約の件は白紙にさせてもらいたい。」
ワタシは一瞬言葉を失いました。
貴方に会いたくてここまで来たのに……
「な…何故ですの?何故?何がダメだったのですか?」
そのショックで、キリリと巻いていた尻尾が下がる。
「ほんとうにすまない……
君の事は可愛い…とは思う。」
「でしたら何故?」
ワタシの質問に、ジョナサン様は残念そうに言われました。
「可愛いとは思うが、やはりそれはペットに対する飼い主の思いでしかないと先程の芸を見ていてよくわかった。」
そ…そんな!?
あんなに頑張ったのに……
昔の様にウルウルとした瞳でジョナサン様を見つめてみましたが、首を横に振って断られてしまいました。
「せっかくポーラルタオまで来てもらったのに、申し訳ない……
手続きは卒業式が終わってからになる。
それまでは、好きに過ごしていてくれて構わない。」
そう言って護衛と商人を連れ、部屋から出て行かれました。
「そんな…… 」
諦めきれずジョナサン様を追って行くと、護衛や商人とワタシの事を話しているようなので、いけない事とは思いつつ耳を澄ませて聞いてみたの。
すると聞こえて来た会話は……
「あちこち寄り道したりせずに、真っ直ぐ来てくれていればなぁ……
もしくは、着いてすぐならまだ考える余地があったんだが…… 」
えっ!?
「仕方ありませんね。こういうのは、縁ですから……
まぁ僕の方は、キシュウ辺境伯領まで帰りの護衛の仕事が増えて助かりますがね。
旅費もかかりませんしね。」
「ただの柴犬の行動なら許されるが、こっちに獣人として坊ちゃんと結婚できる立場に転生したんだ。
それなのに、いつまでもペットだった時の気分でいるのは、高位貴族令嬢として不合格だろ。」
聞かなければ良かった……
ワタシ達北海国の者達は、通常の犬系獣人より非常に聴覚や嗅覚が優れているので、それが仇になってしまいましたわ。
ジョナサン様の護衛の言う通りね。
せっかく転生したのに、何にも生かされてなかった。
そんなワタシをサンガ達が慰めてくれる。
「「「お嬢様……
帰りましょう辺境伯領へ!!」」」
「そうね……
こっちでいっぱいお土産買って帰りましょう。」
それから数日後、ジョナサン様とワタシの婚約は正式に白紙になりました。
その代わりキシュウ辺境伯家とチェイテス公爵家の間で婚約の件を抜きにして、予定通り通商条約が結ばれる事になり副代表は喜んでます。
キシュウ辺境伯領に帰る日、ジョナサン様から『コレ好きだっただろ?皆んなには内緒だよ。無くなったらまた送ってあげるから。』と言って前世でワタシが大好きだった【ワ◯チ◯ール】を箱で頂きました。
いったいどうやってコレを手に入れたのでしょうか?
他にも北海国では手に入り難い品物を沢山頂きましたの。
中でも気に入ったのは、チェイテス公爵領で獲れたワイバーンのジャーキーです。
ワタシ達北海国向けにわざわざ塩味を抑えた物を用意してくれたのです!
チェイテス公爵領では毎年春になると、ワイバーンが大量発生するので退治した後の処理がたいへんなのだとか……
皮は防具の材料として大人気なのですが、公爵領で取れるワイバーンは他で獲れるワイバーンと違い皮も丈夫ですが肉も筋肉質で硬く、人族には不人気なのだそうです。
そこで公爵家では人族より頑丈な歯を持つ、北海国にジャーキーにして輸出してみる事にしたそうなのです。
お父様達に気に入って貰えれば、ジョナサン様のお役に立つかもしれません!
ご迷惑をおかけしたお詫びに、お父様へのアピール頑張りたいと思います!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして俺とナノハナ姫との婚約は白紙になり、卒業式の数日後彼女達はキシュウ辺境伯領へと帰って行った。
その後、チェイテス公爵領のワイバーンのジャーキーは北海国で大人気になり、今では少し味付けを変えてズーラシアン王国へも輸出している。
アレを土産に持たせるように進めたタマキのおっさんは、今までは俺が個人的に雇っていたのだが、父上から信頼を受け正式に我が家の御用商人になり王都と領都に店を構える事になったが、それはまた別の話……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
ネイサンの本名。
☆北海国の人達は、基本的に薄味を好む。
そして、ワタシ達をここまで案内してくれたタマキという商人が、何故かとても残念そうな顔をして立っていたの。
ジョナサン様に即されて向かい側のソファーに座ると、とても真剣な表情で質問をされました。
「もしかしてナノハナ姫は、昔飼っていたアケビなのか?」
「はい♪ワタシは昔、貴方が飼っていたアケビです!
ここに至るまで、ずっと貴方を探していたのですよ。」
あゝやっと会えた!ワタシの愛する人に!!
「そうか…やはりそうなのか…… 」
ジョナサン様はそう呟かれ暫く何か考えた後、とても残念そうにこう言われました。
「アケビ…いやナノハナ姫、残念だけど今回の婚約の件は白紙にさせてもらいたい。」
ワタシは一瞬言葉を失いました。
貴方に会いたくてここまで来たのに……
「な…何故ですの?何故?何がダメだったのですか?」
そのショックで、キリリと巻いていた尻尾が下がる。
「ほんとうにすまない……
君の事は可愛い…とは思う。」
「でしたら何故?」
ワタシの質問に、ジョナサン様は残念そうに言われました。
「可愛いとは思うが、やはりそれはペットに対する飼い主の思いでしかないと先程の芸を見ていてよくわかった。」
そ…そんな!?
あんなに頑張ったのに……
昔の様にウルウルとした瞳でジョナサン様を見つめてみましたが、首を横に振って断られてしまいました。
「せっかくポーラルタオまで来てもらったのに、申し訳ない……
手続きは卒業式が終わってからになる。
それまでは、好きに過ごしていてくれて構わない。」
そう言って護衛と商人を連れ、部屋から出て行かれました。
「そんな…… 」
諦めきれずジョナサン様を追って行くと、護衛や商人とワタシの事を話しているようなので、いけない事とは思いつつ耳を澄ませて聞いてみたの。
すると聞こえて来た会話は……
「あちこち寄り道したりせずに、真っ直ぐ来てくれていればなぁ……
もしくは、着いてすぐならまだ考える余地があったんだが…… 」
えっ!?
「仕方ありませんね。こういうのは、縁ですから……
まぁ僕の方は、キシュウ辺境伯領まで帰りの護衛の仕事が増えて助かりますがね。
旅費もかかりませんしね。」
「ただの柴犬の行動なら許されるが、こっちに獣人として坊ちゃんと結婚できる立場に転生したんだ。
それなのに、いつまでもペットだった時の気分でいるのは、高位貴族令嬢として不合格だろ。」
聞かなければ良かった……
ワタシ達北海国の者達は、通常の犬系獣人より非常に聴覚や嗅覚が優れているので、それが仇になってしまいましたわ。
ジョナサン様の護衛の言う通りね。
せっかく転生したのに、何にも生かされてなかった。
そんなワタシをサンガ達が慰めてくれる。
「「「お嬢様……
帰りましょう辺境伯領へ!!」」」
「そうね……
こっちでいっぱいお土産買って帰りましょう。」
それから数日後、ジョナサン様とワタシの婚約は正式に白紙になりました。
その代わりキシュウ辺境伯家とチェイテス公爵家の間で婚約の件を抜きにして、予定通り通商条約が結ばれる事になり副代表は喜んでます。
キシュウ辺境伯領に帰る日、ジョナサン様から『コレ好きだっただろ?皆んなには内緒だよ。無くなったらまた送ってあげるから。』と言って前世でワタシが大好きだった【ワ◯チ◯ール】を箱で頂きました。
いったいどうやってコレを手に入れたのでしょうか?
他にも北海国では手に入り難い品物を沢山頂きましたの。
中でも気に入ったのは、チェイテス公爵領で獲れたワイバーンのジャーキーです。
ワタシ達北海国向けにわざわざ塩味を抑えた物を用意してくれたのです!
チェイテス公爵領では毎年春になると、ワイバーンが大量発生するので退治した後の処理がたいへんなのだとか……
皮は防具の材料として大人気なのですが、公爵領で取れるワイバーンは他で獲れるワイバーンと違い皮も丈夫ですが肉も筋肉質で硬く、人族には不人気なのだそうです。
そこで公爵家では人族より頑丈な歯を持つ、北海国にジャーキーにして輸出してみる事にしたそうなのです。
お父様達に気に入って貰えれば、ジョナサン様のお役に立つかもしれません!
ご迷惑をおかけしたお詫びに、お父様へのアピール頑張りたいと思います!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして俺とナノハナ姫との婚約は白紙になり、卒業式の数日後彼女達はキシュウ辺境伯領へと帰って行った。
その後、チェイテス公爵領のワイバーンのジャーキーは北海国で大人気になり、今では少し味付けを変えてズーラシアン王国へも輸出している。
アレを土産に持たせるように進めたタマキのおっさんは、今までは俺が個人的に雇っていたのだが、父上から信頼を受け正式に我が家の御用商人になり王都と領都に店を構える事になったが、それはまた別の話……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※1
ネイサンの本名。
☆北海国の人達は、基本的に薄味を好む。
1
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる