【最終章】どうやら俺はただのモブではなかったらしい、フラグは折る為にある!

砂月ちゃん

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第8章 卒業式に向けて編

婚約者候補が来た 4

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ドキドキしながら、尻尾をキリリと巻いて指定された部屋に入ると、中には愛しい人の生まれ変わりの婚約者候補…ジョナサン※1様とその護衛の強そうな男性。


そして、ワタシ達をここまで案内してくれたタマキという商人が、何故かとても残念そうな顔をして立っていたの。


ジョナサン様に即されて向かい側のソファーに座ると、とても真剣な表情で質問をされました。


「もしかしてナノハナ姫は、昔飼っていたアケビなのか?」

「はい♪ワタシは昔、貴方が飼っていたアケビです!
ここに至るまで、ずっと貴方を探していたのですよ。」


あゝやっと会えた!ワタシの愛する人に!!


「そうか…やはりそうなのか…… 」


ジョナサン様はそう呟かれ暫く何か考えた後、とても残念そうにこう言われました。


「アケビ…いやナノハナ姫、残念だけど今回の婚約の件は白紙にさせてもらいたい。」


ワタシは一瞬言葉を失いました。
貴方に会いたくてここまで来たのに……


「な…何故ですの?何故?何がダメだったのですか?」


そのショックで、キリリと巻いていた尻尾が下がる。


「ほんとうにすまない……
君の事は可愛い…とは思う。」

「でしたら何故?」


ワタシの質問に、ジョナサン様は残念そうに言われました。


「可愛いとは思うが、やはりそれはに対する飼い主の思いでしかないと先程のを見ていてよくわかった。」


そ…そんな!?
あんなに頑張ったのに……
昔の様にウルウルとした瞳でジョナサン様を見つめてみましたが、首を横に振って断られてしまいました。


「せっかくポーラルタオまで来てもらったのに、申し訳ない……
手続きは卒業式が終わってからになる。
それまでは、好きに過ごしていてくれて構わない。」


そう言って護衛と商人を連れ、部屋から出て行かれました。


「そんな…… 」


諦めきれずジョナサン様を追って行くと、護衛や商人とワタシの事を話しているようなので、いけない事とは思いつつ耳を澄ませて聞いてみたの。
すると聞こえて来た会話は……


「あちこち寄り道したりせずに、真っ直ぐ来てくれていればなぁ…… 
もしくは、着いてすぐならまだ考える余地があったんだが…… 」


えっ!?


「仕方ありませんね。こういうのは、縁ですから…… 
まぁ僕の方は、キシュウ辺境伯領まで帰りの護衛の仕事が増えて助かりますがね。
旅費もかかりませんしね。」

「ただの柴犬の行動なら許されるが、こっちに獣人として坊ちゃんと結婚できる立場に転生したんだ。
それなのに、いつまでもペットだった時の気分でいるのは、高位貴族令嬢として不合格だろ。」


聞かなければ良かった……
ワタシ達北海国アヌイーの者達は、通常の犬系獣人より非常に聴覚や嗅覚が優れているので、それが仇になってしまいましたわ。


ジョナサン様の護衛の言う通りね。
せっかく転生したのに、何にも生かされてなかった。
そんなワタシをサンガ達が慰めてくれる。


「「「お嬢様…… 
帰りましょう辺境伯領へ!!」」」

「そうね……
こっちでいっぱいお土産買って帰りましょう。」


それから数日後、ジョナサン様とワタシの婚約は正式に白紙になりました。
その代わりキシュウ辺境伯家とチェイテス公爵家の間で婚約の件を抜きにして、予定通り通商条約が結ばれる事になり副代表は喜んでます。


キシュウ辺境伯領に帰る日、ジョナサン様から『コレ好きだっただろ?皆んなには内緒だよ。無くなったらまた送ってあげるから。』と言って前世でワタシが大好きだった【ワ◯チ◯ール】を箱で頂きました。


いったいどうやってコレを手に入れたのでしょうか?
他にも北海国アヌイーでは手に入り難い品物を沢山頂きましたの。



中でも気に入ったのは、チェイテス公爵領で獲れたワイバーンのジャーキーです。
ワタシ達北海国アヌイー向けにわざわざ塩味を抑えた物を用意してくれたのです!


チェイテス公爵領では毎年春になると、ワイバーンが大量発生するので退治した後の処理がたいへんなのだとか……
皮は防具の材料として大人気なのですが、公爵領で取れるワイバーンは他で獲れるワイバーンと違い皮も丈夫ですが肉も筋肉質で硬く、人族には不人気なのだそうです。


そこで公爵家では人族より頑丈な歯を持つ、北海国アヌイーにジャーキーにして輸出してみる事にしたそうなのです。
お父様達に気に入って貰えれば、ジョナサン様のお役に立つかもしれません!
ご迷惑をおかけしたお詫びに、お父様へのアピール頑張りたいと思います!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうして俺とナノハナ姫アケビとの婚約は白紙になり、卒業式の数日後彼女達はキシュウ辺境伯領へと帰って行った。


その後、チェイテス公爵領のワイバーンのジャーキーは北海国アヌイーで大人気になり、今では少し味付けを変えてズーラシアン王国へも輸出している。


アレを土産に持たせるように進めたタマキのおっさんは、今までは俺が個人的に雇っていたのだが、父上から信頼を受け正式に我が家の御用商人になり王都と領都に店を構える事になったが、それはまた別の話……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※1

ネイサンの本名。


北海国アヌイーの人達は、基本的に薄味を好む。
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