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第6章 ユイナーダ学園高等部卒業パーティー編
お茶会のはずが……
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帰国する前に、稀人研究会や親しかった皆んなと、最近出来たユウリン館の王都支店を貸し切りにして、俺とテレーゼはお茶会を開いた。
ユウリン館の本店は学園都市に有り、ユイナーダ学園の生徒御用達の喫茶店だ。
多くの卒業生達が、今も通い続けている。
本来ならこの時期に、貸し切りは難しいが、ケイト先輩の伝でなんとか取れた。
王都支店の店長が、知人なのだそうだ。
もちろん他の稀人研究会以外の関係者、やテレーゼの友人や知人達も招待している。
残念ながら、ケイト先輩の姉のエリー様はご都合が悪くて参加出来なかった。
代わりに、何故かロピアー次期公爵クリスティン様がご参加してくれました。
因みにエリー様が参加出来なかった理由は…ケイト先輩曰く……
「どうせまた、締め切りギリギリまで原稿を放置していたのよ。
何時もの事だわ…… 」
だそうだ。
クリスティン様は苦笑いしながら、ドロドロのコーヒーを美味しそうに飲んでいる。
話しには聞いていたが、なんて勿体ない飲み方をするのだろう?
これでユイナーダ王国の第四王子殿下に言わせると、コーヒーをいれる技術はプロ並みだと言うのだから不思議だ。
「『用事が終わったら来る。』と言っていたが、間に合うかどうか解らないよ。
一応、お土産は預かって来たけどね。」
そう言って、渡されたのは古い数冊のノートだった。
「小説のネタになるかと思って、最近オークションで落としたそうなんだ。
どうやら昔の稀人の持ち物らしいんだが、かなり古い時代の物らしくて解読不能だそうだ。
『出来れば解読して欲しい。』と言っていたよ。」
それはお土産と言うより、依頼じゃないかな?
アレ?ケイト先輩が手に持っているのははもしかして……
「これもついでにお願い…… 」
そう言って渡されたのは、明らかにエリー様に頼まれた物より沢山の書物。
周りを見ると、ケイト先輩だけでなく他の人達も、手に手に何かを持っている。
「これ…稀人の物を収集していた祖父が持っていたんだけど、本物なの?」
「確か君、鑑定スキル持ちだったよね?
最近うちの領地に、『自分は稀人だっ!』と名乗る女性が現れたんだよ。
コレはその彼女が『その証拠』として持ち込んだ物なんだが…… 」
などと言いながら、次から次へと持ち込まれる【稀人・転生者】関係の鑑定依頼。
その依頼主の中には明らかに、直接の知り合いじゃない人まで混ざっていた。
「初めまして。ユイナーダ王国第十王子のエミールです。
君に会えて嬉しいよ♪
何故かずっと、すれ違いで会えなかったね。
で…鑑定してもらいたいのはこのノートなんだ。
私もニホン語ならある程度読める。
だが、コレは似てはいるのだが普通のニホン語ではない。」
結局そのノートに書いてあったのは、確かに日本語だった。
ただし…かなり癖のある南の方言で書かれた物だった。
「たぶん、暗号の代わりに使ったんだと思うのですが、私でも意味は解りません。
知り合いにそちらの出身者がいるので、お預かりしても宜しいでしょうか?」
その南の地方出身の知り合い…それは玉城さん。
彼はあの地方独特の濃い顔立ちをしているので、この世界の人達と紛れても気づかれ難い。
だから勇者パーティー(笑)と離れて行動していても、悪目立ちしなかった。
だいたいあの人、あの地方の格闘術の使い手だった。
それはともかく、【鑑定の魔道具】があるのに何故こんなに大盛況なのか、気になるだろ?
実はあの魔道具……
無機物に関する鑑定の精度がいまいちだった。
まるで何処かのドラマによく出てたDNA鑑定の機械の様だ。
もちろん、それよりずっと優秀だけど……
なのでこういう物の鑑定は相変わらず、人が頼りだ。
残念ながらレベルの高い鑑定スキル持ちは、何処も高額な報酬を請求される。
俺はそれを格安で引き受けていた。
今までは学園生の俺のところに学生が持ち込んだ物ぐらいなら、と見逃されていたが俺が帰国すると、そういう訳にはいかない。
という訳で今日が最後のチャンスとばかりに、大量に持ち込まれたって事だ。
こうなる事を予想していたからケイト先輩は『1日貸し切りにするべき!』と言っていたのか。
まぁそのおかげで鑑定しながらだが、一人一人とゆっくり話しが出来る。
ケイト先輩達の持ち込んだ物の方は数が多いので、借りて帰る事にした。
一応、鑑定会が終わり後少しで本来のお茶会が終わる直前になって、ようやくエリー様が来られた。
何時もより化粧が濃い……
エリー様はお土産の追加だと言って、【名探偵タークの冒険】シリーズのサイン本まで持参してくれた。
「子供が出来たら読ませてあげて♪
続きはその子供が【最初の祝福】っていうのを受ける頃、届けるわね♪
その頃にはもっと増えてるだろうけど♪♪」
あの…俺、最近…婚約破棄したばっかりなんですけど……
エリー様のセリフにケイト先輩は
「姉様一言多い。」
と嗜めていた。
国立ユイナーダ学園高等部には、二年間世話になった。
ここでの経験を生かし、王立ポーラルタオ魔法学院でも頑張っていこうと思う。
ユウリン館の本店は学園都市に有り、ユイナーダ学園の生徒御用達の喫茶店だ。
多くの卒業生達が、今も通い続けている。
本来ならこの時期に、貸し切りは難しいが、ケイト先輩の伝でなんとか取れた。
王都支店の店長が、知人なのだそうだ。
もちろん他の稀人研究会以外の関係者、やテレーゼの友人や知人達も招待している。
残念ながら、ケイト先輩の姉のエリー様はご都合が悪くて参加出来なかった。
代わりに、何故かロピアー次期公爵クリスティン様がご参加してくれました。
因みにエリー様が参加出来なかった理由は…ケイト先輩曰く……
「どうせまた、締め切りギリギリまで原稿を放置していたのよ。
何時もの事だわ…… 」
だそうだ。
クリスティン様は苦笑いしながら、ドロドロのコーヒーを美味しそうに飲んでいる。
話しには聞いていたが、なんて勿体ない飲み方をするのだろう?
これでユイナーダ王国の第四王子殿下に言わせると、コーヒーをいれる技術はプロ並みだと言うのだから不思議だ。
「『用事が終わったら来る。』と言っていたが、間に合うかどうか解らないよ。
一応、お土産は預かって来たけどね。」
そう言って、渡されたのは古い数冊のノートだった。
「小説のネタになるかと思って、最近オークションで落としたそうなんだ。
どうやら昔の稀人の持ち物らしいんだが、かなり古い時代の物らしくて解読不能だそうだ。
『出来れば解読して欲しい。』と言っていたよ。」
それはお土産と言うより、依頼じゃないかな?
アレ?ケイト先輩が手に持っているのははもしかして……
「これもついでにお願い…… 」
そう言って渡されたのは、明らかにエリー様に頼まれた物より沢山の書物。
周りを見ると、ケイト先輩だけでなく他の人達も、手に手に何かを持っている。
「これ…稀人の物を収集していた祖父が持っていたんだけど、本物なの?」
「確か君、鑑定スキル持ちだったよね?
最近うちの領地に、『自分は稀人だっ!』と名乗る女性が現れたんだよ。
コレはその彼女が『その証拠』として持ち込んだ物なんだが…… 」
などと言いながら、次から次へと持ち込まれる【稀人・転生者】関係の鑑定依頼。
その依頼主の中には明らかに、直接の知り合いじゃない人まで混ざっていた。
「初めまして。ユイナーダ王国第十王子のエミールです。
君に会えて嬉しいよ♪
何故かずっと、すれ違いで会えなかったね。
で…鑑定してもらいたいのはこのノートなんだ。
私もニホン語ならある程度読める。
だが、コレは似てはいるのだが普通のニホン語ではない。」
結局そのノートに書いてあったのは、確かに日本語だった。
ただし…かなり癖のある南の方言で書かれた物だった。
「たぶん、暗号の代わりに使ったんだと思うのですが、私でも意味は解りません。
知り合いにそちらの出身者がいるので、お預かりしても宜しいでしょうか?」
その南の地方出身の知り合い…それは玉城さん。
彼はあの地方独特の濃い顔立ちをしているので、この世界の人達と紛れても気づかれ難い。
だから勇者パーティー(笑)と離れて行動していても、悪目立ちしなかった。
だいたいあの人、あの地方の格闘術の使い手だった。
それはともかく、【鑑定の魔道具】があるのに何故こんなに大盛況なのか、気になるだろ?
実はあの魔道具……
無機物に関する鑑定の精度がいまいちだった。
まるで何処かのドラマによく出てたDNA鑑定の機械の様だ。
もちろん、それよりずっと優秀だけど……
なのでこういう物の鑑定は相変わらず、人が頼りだ。
残念ながらレベルの高い鑑定スキル持ちは、何処も高額な報酬を請求される。
俺はそれを格安で引き受けていた。
今までは学園生の俺のところに学生が持ち込んだ物ぐらいなら、と見逃されていたが俺が帰国すると、そういう訳にはいかない。
という訳で今日が最後のチャンスとばかりに、大量に持ち込まれたって事だ。
こうなる事を予想していたからケイト先輩は『1日貸し切りにするべき!』と言っていたのか。
まぁそのおかげで鑑定しながらだが、一人一人とゆっくり話しが出来る。
ケイト先輩達の持ち込んだ物の方は数が多いので、借りて帰る事にした。
一応、鑑定会が終わり後少しで本来のお茶会が終わる直前になって、ようやくエリー様が来られた。
何時もより化粧が濃い……
エリー様はお土産の追加だと言って、【名探偵タークの冒険】シリーズのサイン本まで持参してくれた。
「子供が出来たら読ませてあげて♪
続きはその子供が【最初の祝福】っていうのを受ける頃、届けるわね♪
その頃にはもっと増えてるだろうけど♪♪」
あの…俺、最近…婚約破棄したばっかりなんですけど……
エリー様のセリフにケイト先輩は
「姉様一言多い。」
と嗜めていた。
国立ユイナーダ学園高等部には、二年間世話になった。
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