【最終章】どうやら俺はただのモブではなかったらしい、フラグは折る為にある!

砂月ちゃん

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第4章  異世界編

【閑話】 狐裁判

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*犬の名前をハヤトからダイキに変更しました♪



(元係長補佐A氏side)


あの事件後、俺は会社を辞めて妻の実家のある田舎に引っ越し、もう一つの長年の夢だった喫茶店をオープンした。


資金は会社の退職金と慰謝料。
引っ越したのが田舎だったので、自宅兼店を建てても充分余裕がある。


それとこっちに引っ越して直ぐに、犬を拾った。
子犬ではなく2~3歳の茶色い雑種犬、名前はダイキだ。


何となくあの時の警備員に似ている気がするが、気の所為だろう。
妻が子供と犬の成長日記をSNSに投稿したところ、ブログは大人気。
今では俺の店の看板犬だ。


何故、俺がこんな話しをしているかというと今日の朝刊に、あの男の判決が載っていたからだ。


【殺人罪・傷害罪・婦女暴行罪・ストーカー規制法違反等、の罪で懲役18年】


殺人まで犯しておいて、《懲役18年》は短い様な気もするが、殺害されたのが1人だという事が判決理由らしい。


殺された人の遺族にとっては、たまったものではないだろう。
俺も何度かあの男が会社で起こした障害事件の証人として、裁判所に召喚された。


その時に見た、あの男の弁護士は狐目の国選弁護人だった。
普通なら、首藤商事の三男の弁護士は会社の顧問弁護士が付くところだが、首藤家は愛人の子であり、どう見ても有罪にしかならない男を守る気は無かった様だ。


裁判長も裁判官も検事も裁判員も皆、狐目だったのはきっとただの偶然に違いない。


裁判が始まる前に、あの男の名前は母親の姓《鈴木》に戻されていた。
『首藤家とは縁を切った』というアピールのつもりなのだったのだろう。


だが【首藤商事の三男】という逮捕時のインパクトが強過ぎて、あまり効果は無かった様だ。


間も無くして株主総会において首藤家は満場一致で、経営権を取り上げられ会社を去っていった。


新しく会社のCEOになった男もまた狐目で、どことなくあの裁判長や弁護士に似ている気がするがきっと気の所為だ。


そして新しい経営陣の元、《首藤商事》は《FOX corporation》という名称に変わった。


そういえば、判決が決まるまでの時間もやたらと短かったなぁ……


新聞を読み終わり、モーニングの支度をしているとダイキの散歩に行っていた妻が、4歳になる娘を抱いて少し興奮気味に戻って来た。


「あなた!たいへんよ!!今日【秘◯バスの旅】のロケが来るんですって♪」

「えっ!?【秘◯バスの旅】ってあの?」

「そうよ♪この間、『うちの店にも来たら良いのに。』って話してたばかりなのに、まさか実現するなんて♪」


いや、まだ来てないから……
あ…そう言えばバス旅レギュラーの芸人、確か2人共ラグビー経験者だったな。


もし、この店に来てくれたらラグビーの話でもしながらゆっくりコーヒーでも飲んで欲しいが、急ぎの旅だからなぁ。


―――――――――――――――――

(午後3時過ぎ…… )


あゝもうこんな時間か……
妻の友人情報では、ロケ隊はうちの店の最寄りのバス停より、1つ前のバス停でバスを降りたそうだ。


妻はソワソワと落ち着かず、窓の外を気にしているが、うちの店の手前にラーメン屋があるからたぶんロケ隊はそっちに行くんじゃないか?


ランチタイムも終わり、客もいないので賄いを作り始め様としたら、何やら外が騒がしくなって来た。
番犬のダイキが、客が来た事を知らせてくれている。


カラン♪カラーン♪♪


ドアベルが鳴って、誰かが店に入って来た。


「すいません。TV◯日の【秘◯バス旅】のロケで来たバケットサンドのみきおです。
もしご迷惑でなかったら、ここで食事してるところを取材させて貰いたいんですが。」


「あなた♪本当にロケ隊来たわよ♪」


取材許可を取りに、店に入って来たのはバケットサンドのみきおという、狐目をした体格の良い芸人だった。


えっ!?ラーメン屋の方に行ったんじゃないのか?


どうやらラーメン屋は珍しく混んでいて、取材を断られたそうだ。
うちは丁度、客足が途切れたところだから問題ない。


「あゝ構いませんよ。お好きな席にどうぞ。」


ロケ隊の人達は『やっと休める。』といった様子で店に入って来た。


店に入って挨拶して来た、みきおの相方のちょっと犬っぽい顔をしているたけしは直ぐ俺の事に気付いた様だ。


「あれ?もしかして、元ラグビー日本代表選手だったAさんじゃないですか?」


彼等は注文した、サンドイッチとコーヒーを食べながら、俺の選手時代の話しや今の暮らしの話しをした。


食事シーンのロケが終わり、みきおと今回ピンチヒッターだという狐目の番組デレクターと今回の取材についていろいろな話しをしている間、たけしは話しに加わらず、ダイキをひとしきりかまっていた。


こうしてロケ隊は20分ばかり取材した後、次のバス停へと歩いて行った。


それにしても俺、やたらと狐目の人達に縁があるなぁ。
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