【最終章】どうやら俺はただのモブではなかったらしい、フラグは折る為にある!

砂月ちゃん

文字の大きさ
上 下
7 / 109
第1章  ポーラルタオ王国編

【閑話】弟だった少年の話

しおりを挟む
前書き

モブ中のモブ、偽カイトの弟だったエドニーの話しです。
引き続き鬱展開です。

------------------


僕の名前はエドニー。
皆んなにはエドって呼ばれている。
将来の夢は王立魔法学院を卒業し、文官として公爵家を支える事だった。



僕達家族は少し前まで王都にある、チェイテス公爵邸の騎士寮に家族と住んでいた。



僕と優しくて強い父さんと1歳下の妹アミー。
そして、とても意地悪な兄…カイト。



兄は昔から嫌な男だった。
上の立場の人間には媚び諂い、下の者には全く態度を変える。



何度父さんが注意しても、言う事を聞かなかった。
父さんは、母さんがローラを産んでから体調を崩しがちになり、その所為で兄を引き取りに行くのが遅れたのが原因で、捻くれているのだと思っているみたいだけど、僕はそうは思えない。



そもそも、母さんはどうして王都に来る時、若様と一緒に兄を連れて来なかったんだろう?



その話を聞く機会も無く、アミーの【最初の祝福】を見届けた後、母さんは天に召された。



その数年後、とんでもない事が発覚した。
やはり兄は偽物だった!
最悪な事に本物の兄と入れ替わっていたんだ!
ただ、僕や皆んなが思っていたのと違って、本物の兄はなんと、若様だった。



なんで?



どうやら誰かが本物の若様と、本物の兄を入れ替えていたらしい。
更にあの男が入れ替わっていたから、余計に面倒くさい事になっていた。
誰が犯人なのかは母さんが亡くなっているから、確かめ様が無いのだそうだ。



今まで【僕らの兄を名乗っていた男】は、母さんが【兄】を預けたはずの母さんの姉夫婦の子供、つまり僕の従兄だった。



しかも本物の兄である若様や、兄として預けられていた人より2歳も年上だった。
住んでいた村では預けられていた人を虐げ、自分が偽物なのを知っていて入れ替わっていた……
自分と自分の家族が贅沢な暮らしをする為に!
それで家のお金をしょっちゅう持ち出していたのか。



しかも最悪な事に、偽カイトあの男は現公爵領の国家反逆罪で処刑された元領主の子孫で、公爵家乗っ取りまで企らんでいたんだ。



兄だった偽カイトあの男は公爵家を騙した罪で、その家族と一緒に処刑が決まった。
普通なら、僕達家族も一緒に処刑されるところだけど、今まで息子として育ててきた若様ランディーと、父さんが真面目に仕えてきた事への温情で、それだけは免れた。



僕達家族は父さんが今回の事件の責任を取って、仕事を辞める事になったので公爵家の騎士寮から出る事になった。



2年後に王都の教会で【祝福】を受ける予定だった僕は、偽カイトあの男の所為でその夢を諦めなければならなくなったんだ。



僕は父さんも許せない。
父さんがあんな奴らに騙されて、偽カイトあの男を王都に連れて来なかったら、こんな事にならなかったかもしれない。



父さんは本物の兄だと判明した若様ランディーと冒険者になると言っている。
元々、父さんは若様ランディーの剣の師匠だから仲が良いし、二人はそれで良いのだろう。
文官を目指していた僕や、まだ幼いアミーには無理な話だ。



父さんが仕事を辞め、今回の事件が明るみに出た為、僕は学院を去らなければならなくなった。
今の学力でも小規模の店くらいなら雇って貰えるかもしれない。
しかしチェイテス公爵様は、王弟で国民からの人気も高い。
そんな公爵家を長年騙していた男の血縁関係者だと知られたら、絶対に雇って貰えないだろう。



そんな心配をしていると、公爵様からこんな話を持ちかけられた。



『ユイナーダ王国にいる義弟の家で従者を探している。
妹のアミーも連れて来て構わないそうだ。
このままこの国に居ても、何かとたいへんだろう。
長年仕えてくれたガルフの子供達を路頭に迷わせるのは不憫だからな。』
と言われた。



こうして僕とアミーは公爵様の伝で、ユイナーダ王国のベルツリー侯爵家で雇われる事になった。



ベルツリー侯爵様は第四騎士団団長をしている方だと聞いていたから、大柄な人を想像していたけど、どちらかと言えば小柄な方だった。
ただし目が笑ってない……



僕が仕える事になったのはベルツリー侯爵令嬢カロラ様の婚約者、ジェスト様。



ジェスト様はあの国立ユイナーダ学園高等部の騎士科を、優秀な成績で卒業されたそうだ。
手の開いた時は僕に勉強を教えてくださる優しい方です。
目は笑ってないけど……



アミーはカロラお嬢様のメイド見習いになった。
国を追われた僕達を拾ってくれた、ベルツリー侯爵家には感謝しかありません。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺おとば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

処理中です...