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第1章 ポーラルタオ王国編
【閑話】弟だった少年の話
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前書き
モブ中のモブ、偽カイトの弟だったエドニーの話しです。
引き続き鬱展開です。
------------------
僕の名前はエドニー。
皆んなにはエドって呼ばれている。
将来の夢は王立魔法学院を卒業し、文官として公爵家を支える事だった。
僕達家族は少し前まで王都にある、チェイテス公爵邸の騎士寮に家族と住んでいた。
僕と優しくて強い父さんと1歳下の妹アミー。
そして、とても意地悪な兄…カイト。
兄は昔から嫌な男だった。
上の立場の人間には媚び諂い、下の者には全く態度を変える。
何度父さんが注意しても、言う事を聞かなかった。
父さんは、母さんがローラを産んでから体調を崩しがちになり、その所為で兄を引き取りに行くのが遅れたのが原因で、捻くれているのだと思っているみたいだけど、僕はそうは思えない。
そもそも、母さんはどうして王都に来る時、若様と一緒に兄を連れて来なかったんだろう?
その話を聞く機会も無く、アミーの【最初の祝福】を見届けた後、母さんは天に召された。
その数年後、とんでもない事が発覚した。
やはり兄は偽物だった!
最悪な事に本物の兄と入れ替わっていたんだ!
ただ、僕や皆んなが思っていたのと違って、本物の兄はなんと、若様だった。
なんで?
どうやら誰かが本物の若様と、本物の兄を入れ替えていたらしい。
更にあの男が入れ替わっていたから、余計に面倒くさい事になっていた。
誰が犯人なのかは母さんが亡くなっているから、確かめ様が無いのだそうだ。
今まで【僕らの兄を名乗っていた男】は、母さんが【兄】を預けたはずの母さんの姉夫婦の子供、つまり僕の従兄だった。
しかも本物の兄である若様や、兄として預けられていた人より2歳も年上だった。
住んでいた村では預けられていた人を虐げ、自分が偽物なのを知っていて入れ替わっていた……
自分と自分の家族が贅沢な暮らしをする為に!
それで家のお金をしょっちゅう持ち出していたのか。
しかも最悪な事に、偽カイトは現公爵領の国家反逆罪で処刑された元領主の子孫で、公爵家乗っ取りまで企らんでいたんだ。
兄だった偽カイトは公爵家を騙した罪で、その家族と一緒に処刑が決まった。
普通なら、僕達家族も一緒に処刑されるところだけど、今まで息子として育ててきた若様と、父さんが真面目に仕えてきた事への温情で、それだけは免れた。
僕達家族は父さんが今回の事件の責任を取って、仕事を辞める事になったので公爵家の騎士寮から出る事になった。
2年後に王都の教会で【祝福】を受ける予定だった僕は、偽カイトの所為でその夢を諦めなければならなくなったんだ。
僕は父さんも許せない。
父さんがあんな奴らに騙されて、偽カイトを王都に連れて来なかったら、こんな事にならなかったかもしれない。
父さんは本物の兄だと判明した若様と冒険者になると言っている。
元々、父さんは若様の剣の師匠だから仲が良いし、二人はそれで良いのだろう。
文官を目指していた僕や、まだ幼いアミーには無理な話だ。
父さんが仕事を辞め、今回の事件が明るみに出た為、僕は学院を去らなければならなくなった。
今の学力でも小規模の店くらいなら雇って貰えるかもしれない。
しかしチェイテス公爵様は、王弟で国民からの人気も高い。
そんな公爵家を長年騙していた男の血縁関係者だと知られたら、絶対に雇って貰えないだろう。
そんな心配をしていると、公爵様からこんな話を持ちかけられた。
『ユイナーダ王国にいる義弟の家で従者を探している。
妹のアミーも連れて来て構わないそうだ。
このままこの国に居ても、何かとたいへんだろう。
長年仕えてくれたガルフの子供達を路頭に迷わせるのは不憫だからな。』
と言われた。
こうして僕とアミーは公爵様の伝で、ユイナーダ王国のベルツリー侯爵家で雇われる事になった。
ベルツリー侯爵様は第四騎士団団長をしている方だと聞いていたから、大柄な人を想像していたけど、どちらかと言えば小柄な方だった。
ただし目が笑ってない……
僕が仕える事になったのはベルツリー侯爵令嬢カロラ様の婚約者、ジェスト様。
ジェスト様はあの国立ユイナーダ学園高等部の騎士科を、優秀な成績で卒業されたそうだ。
手の開いた時は僕に勉強を教えてくださる優しい方です。
目は笑ってないけど……
アミーはカロラお嬢様のメイド見習いになった。
国を追われた僕達を拾ってくれた、ベルツリー侯爵家には感謝しかありません。
モブ中のモブ、偽カイトの弟だったエドニーの話しです。
引き続き鬱展開です。
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僕の名前はエドニー。
皆んなにはエドって呼ばれている。
将来の夢は王立魔法学院を卒業し、文官として公爵家を支える事だった。
僕達家族は少し前まで王都にある、チェイテス公爵邸の騎士寮に家族と住んでいた。
僕と優しくて強い父さんと1歳下の妹アミー。
そして、とても意地悪な兄…カイト。
兄は昔から嫌な男だった。
上の立場の人間には媚び諂い、下の者には全く態度を変える。
何度父さんが注意しても、言う事を聞かなかった。
父さんは、母さんがローラを産んでから体調を崩しがちになり、その所為で兄を引き取りに行くのが遅れたのが原因で、捻くれているのだと思っているみたいだけど、僕はそうは思えない。
そもそも、母さんはどうして王都に来る時、若様と一緒に兄を連れて来なかったんだろう?
その話を聞く機会も無く、アミーの【最初の祝福】を見届けた後、母さんは天に召された。
その数年後、とんでもない事が発覚した。
やはり兄は偽物だった!
最悪な事に本物の兄と入れ替わっていたんだ!
ただ、僕や皆んなが思っていたのと違って、本物の兄はなんと、若様だった。
なんで?
どうやら誰かが本物の若様と、本物の兄を入れ替えていたらしい。
更にあの男が入れ替わっていたから、余計に面倒くさい事になっていた。
誰が犯人なのかは母さんが亡くなっているから、確かめ様が無いのだそうだ。
今まで【僕らの兄を名乗っていた男】は、母さんが【兄】を預けたはずの母さんの姉夫婦の子供、つまり僕の従兄だった。
しかも本物の兄である若様や、兄として預けられていた人より2歳も年上だった。
住んでいた村では預けられていた人を虐げ、自分が偽物なのを知っていて入れ替わっていた……
自分と自分の家族が贅沢な暮らしをする為に!
それで家のお金をしょっちゅう持ち出していたのか。
しかも最悪な事に、偽カイトは現公爵領の国家反逆罪で処刑された元領主の子孫で、公爵家乗っ取りまで企らんでいたんだ。
兄だった偽カイトは公爵家を騙した罪で、その家族と一緒に処刑が決まった。
普通なら、僕達家族も一緒に処刑されるところだけど、今まで息子として育ててきた若様と、父さんが真面目に仕えてきた事への温情で、それだけは免れた。
僕達家族は父さんが今回の事件の責任を取って、仕事を辞める事になったので公爵家の騎士寮から出る事になった。
2年後に王都の教会で【祝福】を受ける予定だった僕は、偽カイトの所為でその夢を諦めなければならなくなったんだ。
僕は父さんも許せない。
父さんがあんな奴らに騙されて、偽カイトを王都に連れて来なかったら、こんな事にならなかったかもしれない。
父さんは本物の兄だと判明した若様と冒険者になると言っている。
元々、父さんは若様の剣の師匠だから仲が良いし、二人はそれで良いのだろう。
文官を目指していた僕や、まだ幼いアミーには無理な話だ。
父さんが仕事を辞め、今回の事件が明るみに出た為、僕は学院を去らなければならなくなった。
今の学力でも小規模の店くらいなら雇って貰えるかもしれない。
しかしチェイテス公爵様は、王弟で国民からの人気も高い。
そんな公爵家を長年騙していた男の血縁関係者だと知られたら、絶対に雇って貰えないだろう。
そんな心配をしていると、公爵様からこんな話を持ちかけられた。
『ユイナーダ王国にいる義弟の家で従者を探している。
妹のアミーも連れて来て構わないそうだ。
このままこの国に居ても、何かとたいへんだろう。
長年仕えてくれたガルフの子供達を路頭に迷わせるのは不憫だからな。』
と言われた。
こうして僕とアミーは公爵様の伝で、ユイナーダ王国のベルツリー侯爵家で雇われる事になった。
ベルツリー侯爵様は第四騎士団団長をしている方だと聞いていたから、大柄な人を想像していたけど、どちらかと言えば小柄な方だった。
ただし目が笑ってない……
僕が仕える事になったのはベルツリー侯爵令嬢カロラ様の婚約者、ジェスト様。
ジェスト様はあの国立ユイナーダ学園高等部の騎士科を、優秀な成績で卒業されたそうだ。
手の開いた時は僕に勉強を教えてくださる優しい方です。
目は笑ってないけど……
アミーはカロラお嬢様のメイド見習いになった。
国を追われた僕達を拾ってくれた、ベルツリー侯爵家には感謝しかありません。
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