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どうやら私は攻略対象だったらしい(表)
しおりを挟む皆さんこんにちは、私は国立ユイナーダ学園高等部の風紀委員長、騎士科三年のジェストです。
学園卒業後は既に第四騎士団に入団が決まっています。
最近の学園は何かと騒がしく、先日も『婚約破棄騒動』が起きたばかりだ。
結局、男性側の浮気と勘違い、浮気相手の自作自演だったが……
それにしても、高位貴族令嬢に対して冤罪を擦りつけるなど、言語道断!
勘違いで婚約者に破棄を焚きつけた女性徒2人は、1週間の謹慎処分。
(後に実家からの申し出で自主退学をした。)
自作自演をした女性徒3人は退学後、厳しいと評判の、各地の修道院にそれぞれ入る事になった。
きちんと反省すればその内出て来れるだろう。
いずれにしろ『貴族令嬢として嫁ぐ』のは難しいかもしれないが。
そんな事より、今一番問題なのは最近隣国から留学して来た、魔術科一年生のユミコ嬢。
《自称 ヒロインで聖女》の黒髪の女性徒だ。
後期の始業式に遅れて来たにもかかわらず、そっと入って来るなら兎も角、講堂の扉を大きく開いて堂々と会場に入って来たり。
(其処を開けなくても横に小さい出入り口があったでしょう。)
あの重い扉を、よく一人で開けられましたね。
学園生の間で『怪力女』と評判ですよ。
魔術科の一年に転入したのに、何故か特進科二年の伯爵令嬢の隣に座って、顔を見るなり怯えたり。
勢いよく走って来て騎士科のレオルに、わざとぶつかろうとして投げ飛ばされたり。
レオル談
「突然こちらに向かって体当たりしようとしたのでつい、『敵襲か!?』と思って、思わず投げ飛ばしてしまったのだが。」
魔術科一年なのに、特進科三年の教室に入り込んで、摘み出されたり。
どうやら前期までいた、ナルキス殿を探していたようだ。
彼は異例のことだが、今学期から騎士科に転科したので、当然そこには居ない。
それを知ると
『何でもう騎士科にいるのよ!』
と叫んでいたそうだ。
そして今度は、土木建築科の実習場に勝手に入り込み、ボウリングの練習をしている穴に落ちて、危うく生き埋めになりかけていたという。
あまりにも酷いので、停学処分を言い渡しに行ったら
「貴方には貴方の良さがあるの。」
「お兄さんと自分を比べちゃダメ!」
とか訳のわからない事を言われた。
私は兄上と自分を比べて、自分を卑下した事は無い。
10歳も離れた兄上と、何を比べて卑下するというのだろうか?
停学処分が終わり、少しは大人しくなるかと思っていたら……
今度は魔術科二年の教室に入り込み、エミール殿下に対して
「悪役令嬢の取り巻きを辞めて!」
などと話しかけ、エミール殿下が混乱して黙っていると
「わかったわ!きっと脅されてるのね!大丈夫よ、私が守ってあげるから!」
と更に訳のわからない事を言い出す始末。
不敬罪でまた停学処分になりたいのか君は?
『【聖魔法】が得意』というふれ込みだったので魔術科・騎士科・淑女科の合同授業で治療担当をやらせたら、
『傷口が気持ち悪い。』
『そんな気持ち悪い物見せるなんて。』
などと言って、仕事にならなかったそうだ。
(三年は自由参加の為、私は騎士団の訓練で不参加)
結局、魔術科二年のエリー嬢の【聖炎の魔法】による広範囲治療魔法と淑女科の学生による通常の治療をしたという。
我が学園に何をしに来たのだろう?
あまりにも酷い…酷過ぎる。
当然、周りの学園生から距離を置かれ、話しかける者もいなくなった。
すると今度は、『きっと悪役令嬢サーラの仕業ね!』
と、また叫んでいたそうだ。
悪役令嬢と、いうのはわからないが、『サーラ』というのは特進科二年の伯爵令嬢のサーラ嬢の事か?
風紀委員会の皆が困惑していると、今度は【ユウリン館】でお茶会を開いていたサーラ嬢に、
『ジェスト様を解放してあげてください!』
『あなたの所為で苦しんでいらっしゃいます!』
『自分は男性を侍らせているのに酷いです!』
と訳のわからない事を言って、激怒した騎士科の女子生徒でうちの委員でもあるシノン嬢達に、店から叩き出されたそうだ。
そりゃそうだろう。
最近、同じような事があったばかりだからな。
******************
ここから先の話しは、私が第四騎士団に入団しベルツリー侯爵家に婿養子に入ってから聞いた話しだ。
その数日後、ユミコ嬢はついに、やってはならない事を仕出かしていた。
クリス先輩がシオン殿下の秘書の仕事をお辞めになられるので、次の秘書として生徒会長をスカウトする為に視察という名目で、お二人が来校されたのは知っている。
問題はその後だ。
お二人が【青薔薇館】で生徒会長と話しをしていたところに、いったいどこから入り込んだのか、ユミコ嬢が現れ、
『クリス様!貴方は本当はロピアー公爵家の子供で赤ちゃんの時に【入れ替えの指輪】を使って乳母が入れ替えたのよ!』
『ナルキス様は、騙されていただけなの!』
『話せばわかりあえます!』
などと【国家機密事項】をペラペラと涙ぐみながら話したそうだ。
すぐに第四騎士団が呼ばれ【特別取調室】でベテラン2人による取り調べを受けたが言っている事の殆どが、意味不明だったとか……
後日、私も取り調べ調書を見せてもらったが、確かに意味がわからない。
『どうして皆んな、設定通りじゃないの?』
『攻略対象の性格が、全然違うじゃない!』
『シナリオ通りにしたのに、何で上手く行かないのよ!』
『私は、この世界のヒロインなのよ!』
『北の砦で起こるはずの、ダンジョンの氾濫も起こらなかったし!』
あー、コレはわかった!
彼女が学園に転入する少し前に、元学園生のサンソンが、ダンジョンが氾濫しかけているのに気づいたおかげで、事前に防げたのだ。
あの男も役に立ったな。
今では、北の砦で副団長補佐をしているそうだ。
そんな事より調書の続きだ。
ユミコ嬢曰く……
『ダンジョンの氾濫が無かったから、私の聖女としての役割が、果たせなかったじゃないの!』
君、授業の時、怪我をしている学園生の治療全くできなかったよね?
ダンジョンの氾濫で戦っている、騎士団や傭兵の治療なんてできるのか?
絶対無理だろ!
『指輪の事は、どうして知っていたのか?』
という取り調べ官Aの質問に
『だってシナリオに書いてあったんだから!』
と、また訳のわからない言葉を繰り返したそうだ。
隣国から【聖女】として入国していたので、
問い合わせたところ、
『【聖女認定】した覚えは無い。』
『本物の【聖女様】は、国境付近の村で保護された。』
との回答を得たそうだ。
【身分詐称】【高位貴族への数々の名誉棄損】【国家機密事項の漏洩】【シオン殿下、エミール殿下、クリスティン次期公爵への不敬罪】
これだけの罪状を犯して、無事で済む訳も無く。
また、余計な事を喋られても困るので事情聴取後、裏で処分されたそうだ。
その時も
『私は、ヒロインなのよ!
何で誰も助けに来てくれないのよ!』
『それもこれも、攻略対象の好感度が上げられなかったからだわ!』
『やっぱり先に、悪役令嬢のサーラを潰して置けば良かったのよ!』
『イチオシのジェスト様と結婚する為に、頑張ったのに!』
そんな事考えてたのか!?
【君と結婚】とか絶対無理だから!
気持ち悪いわ!
彼女は自分が処分される事を知って……
『嘘!私が処刑されるなんて、シナリオに無かったわ!』
『処刑されるのは悪役令嬢でしょ?』
『リセットボタンは、どこよ!?』
と最後まで訳のわからない事を喚いていたそうだ。
彼女、処分されていたのか……
隣国に送り返されたと思っていたよ。
彼女的には……
どうやら私は攻略対象だったらしい。
お断りします!
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次話、月曜日投稿。
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