爪の黒いところ

レントゲンの結果

全力でプレー出来なくても、できる範囲でプレーをしたいと思い、練習は結局最後の方までやった。

ただ、最後の方はアドレナリンが切れてきて、肩の痛みが酷くなってきたので早めに切り上げて帰ることにした。

ビブスを脱ぐのも難しかった。

幸い車のハンドルを操作する動きには影響なかったので何とか家に帰ることが出来た。

家に帰ってすぐさま、シャワーを浴びて何とか服を着た。

一旦、ソファーに座ると起き上がるのが痛い。

さすがに妻に気づかれてしまった。

「酷いことになっとるやん。明日病院行こうよ」

「うん」

僕は小指の怪我もほっといたら治ると思って頑なに放置していた。

さすがに妻はこの状態で放置していたら不味いと思ったのか、次の日強制的に病院に連れていかれた。

日曜日だったが、幸い近くの病院が当番医で開いていたので、そこに行った。

「これは靭帯が切れとるなあ」

「へ」

「これは痛かったじゃろう。何しょうたん」

「サッカーしていて、ファールされて転倒した時に地面で肩を打ちました」

「そうかー。ほんですぐ休んだん」

「いいえ最後まで続けました」

「ほうかー。君は少々の痛みでは何くそーって向かっていくタイプなんじゃね。で、ついでに小指も見ろっちゅうことやね」

「はい、これは2週間前にやりました」

「2週間もほっといたん。曲がらんなっとるやん。ま、レントゲン撮ろうか」

「はい」

レントゲン室で肩と小指のレントゲンを撮った。

「これが今の君の肩の骨の位置じゃ。ほれ、本来はここにないといけんのんじゃけど、だいぶズレとるじゃろ」

「は、はい」

腕の骨より肩の骨が大分上に上がっている。恐らく5センチ位ズレている。完全に外れているのが分かる。

それで肩がボコッと突き出ているのかと納得した。しかし、折れてはなかった。

「ここ押したら痛いじゃろー」

「は、はいー。いてててて」

「こんだけ浮いてきてるんよ」

「は、はい」

「本来なら提灯みたいにぶら下がっとるじゃけど、紐が切れて浮いとるんよね」

「はい」

「これはねー、そのままほっとくか、手術をするかだね。ほっといても9割なおるかもしれんけど重いものを持つ時に痛みは残るようになる。手術は針金で固定する簡単なのと、靭帯を持ってきてひっつける方法がある。針金で固定する方法は日帰りでできるけど、ちゃんとした手術は入院せにゃならんよ」

「はあ」ほっといても治るんならほっときたいなあと思った。

「それから、小指。これは折れとるね。折れた破片が邪魔して指が伸びんなっとる。これは切開して骨を除いて、余分な肉が着いとるじゃろうけえそれをゴリゴリやって取り除いて元の位置に戻さにゃならん。どうする」

「ほっといてもええんですか」

「ほっといてもええけど伸びんなるよ」

「そうなんですか」

「まあ、手術するかどうか明日決めてきて。早い方がええよ」

「分かりました」

手術面倒だなー。

ほっといてもええなら手術せんとこうかな。まあ、やるとしても日帰りでできる簡単なやつだな。

そんなふうに考えていた。