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初恋
初恋-太もも
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有難いことに、ナオちゃん以外にも僕に好意を持ってくれた子がいた。円山さんだ。彼女もクラスが同じで、下校する方向が同じなので時々話しをするようになった。
彼女は部活に入っていなかったので、テスト期間中にしか帰りが同じになることはなかった。ただ、下校時に会えば、僕は自転車を降りて途中まで一緒に歩きながら話して帰るくらい仲が良くなっていた。
一緒に帰るのが何回か続いたある日、円山さんは突然セーラー服のスカートを少しめくって太ももを僕に見せてきた。
僕はその行為に凄く驚いたし、その太ももにも驚いた。綺麗な白い太ももの内側には大きな赤いケロイドが広がっていたからだ。
「これさ、子供の頃にやかんのお湯がかかって火傷しちゃったんだ」そう暗い表情で話す彼女はひどく緊張していた。もしかしたら手が震えていたかもしれない。
僕は絶句してあまり上手くフォローできなかった。「そんなの気にすることないよ」位のことは言ったかもしれないが、そんな事、驚いている自分が言っても説得力がない気がした。ただ、僕はその太もものケロイドがあるからと言って彼女を嫌いになることは無いし、恋愛対象から外れるということはなかった。その気持ちは彼女に上手く伝える事は出来ていなかったように思える。
その場では混乱して上手く彼女に応えられなかったが、家に帰ってじっくりと考えた。
僕は彼女がケロイドを見せてくれた事はむしろ非常に嬉しかった。
これから暑くなれば、体育の時間に太ももを露出する事になるだろう。
僕は、円山さんが太ももを露出しないといけない夏用の体操着姿を想像した。
そして、体育の時間はなんて残酷なのだろうと思った。
円山さんは、僕が初めて太もものケロイドに気づいた時にビックリして嫌いにならないようにあらかじめ告白してくれたのだ。
みんなと同時に知るよりも特別に先に知らせてくれたんだ。
つまり、彼女は僕の事が好きなのだ。
そこまで気づくと、これは心のセックスだと思った。
彼女は僕の前で最も恥ずかしいと思っている部分を晒し、丸裸のすっぴんぴんになってくれていたのだ。準備の出来ていなかった僕はその心を抱きしめることなく、驚き、心の服を着たまま逃げ出してしまっていた。
タイミングさえ合えば僕は彼女の事を愛し、そのケロイド状の太ももを優しく愛撫していたかもしれない。
ただ、高校生の僕達はまだまだ未熟でそれほど器用に心を交わすことも出来ないし、それを乗り越えるだけの強さを持って人と接することは出来ない。
彼女が外見上の事柄に心を落とさず、影を持たずに僕に強く迫ってきたとしたら、僕は彼女の事をもっと知りたいと思い、大いに悩んでいた事だろう。
次の日、教室でナオちゃんが薄ら笑いを浮かべながら言ってきた。
「円ちゃんと一緒に帰ってんだ。二ヒヒヒ」
僕と円山さんが試験期間中に時々一緒に帰っている事がクラスで少し噂になっていた。それを嗅ぎ付けたナオちゃんは僕を早速冷やかしに来たのだ。
「そ、そうだけど」
なんでもないフリをして答えたけれども、内心僕はしまったと思った。できればナオちゃんには知られたくなかったなと思った。もし、彼女が僕に好意を持っていてくれていたとしたら、嫌な思いさせたかもしれない。そして、僕はナオちゃんの恋愛対象から外れてしまったかもしれない。一つの可能性が消えたのだろうか。
「彼女、可愛いしお似合いだよね」
僕は彼女の態度を測りかねていた。もともと、僕のことなんて異性としては見てなくて、ただの保育所が一緒だった同級生の友達くらいにしか思っていないのかもしれない。
彼女が僕の事を好きだなんて思い上がりもいい所だったようだ。僕は恥ずかしくなってきた。
「だといいけどね。僕なんて相手にしてくれないよ」
僕は少し謙遜して答えた。
「じゃあしゅうくんは円ちゃんの事が好きなの」
「うん。好きだよ」僕は円山さんのケロイド状の太ももを思い出しながら答えた。僕は彼女が太ももを見せてくれた事で、若干彼女に心が傾きかけていた。
「上手くいくといいね」ナオちゃんはかすれた声でそう言いながら去っていった。
今思い返せば、この時に彼女の顔が少し引きつっていたように思える。しかし、その時の僕は「なんだよ。それだけかよ」ともう少し彼女と話しがしたかったと思っただけだった。
彼女は部活に入っていなかったので、テスト期間中にしか帰りが同じになることはなかった。ただ、下校時に会えば、僕は自転車を降りて途中まで一緒に歩きながら話して帰るくらい仲が良くなっていた。
一緒に帰るのが何回か続いたある日、円山さんは突然セーラー服のスカートを少しめくって太ももを僕に見せてきた。
僕はその行為に凄く驚いたし、その太ももにも驚いた。綺麗な白い太ももの内側には大きな赤いケロイドが広がっていたからだ。
「これさ、子供の頃にやかんのお湯がかかって火傷しちゃったんだ」そう暗い表情で話す彼女はひどく緊張していた。もしかしたら手が震えていたかもしれない。
僕は絶句してあまり上手くフォローできなかった。「そんなの気にすることないよ」位のことは言ったかもしれないが、そんな事、驚いている自分が言っても説得力がない気がした。ただ、僕はその太もものケロイドがあるからと言って彼女を嫌いになることは無いし、恋愛対象から外れるということはなかった。その気持ちは彼女に上手く伝える事は出来ていなかったように思える。
その場では混乱して上手く彼女に応えられなかったが、家に帰ってじっくりと考えた。
僕は彼女がケロイドを見せてくれた事はむしろ非常に嬉しかった。
これから暑くなれば、体育の時間に太ももを露出する事になるだろう。
僕は、円山さんが太ももを露出しないといけない夏用の体操着姿を想像した。
そして、体育の時間はなんて残酷なのだろうと思った。
円山さんは、僕が初めて太もものケロイドに気づいた時にビックリして嫌いにならないようにあらかじめ告白してくれたのだ。
みんなと同時に知るよりも特別に先に知らせてくれたんだ。
つまり、彼女は僕の事が好きなのだ。
そこまで気づくと、これは心のセックスだと思った。
彼女は僕の前で最も恥ずかしいと思っている部分を晒し、丸裸のすっぴんぴんになってくれていたのだ。準備の出来ていなかった僕はその心を抱きしめることなく、驚き、心の服を着たまま逃げ出してしまっていた。
タイミングさえ合えば僕は彼女の事を愛し、そのケロイド状の太ももを優しく愛撫していたかもしれない。
ただ、高校生の僕達はまだまだ未熟でそれほど器用に心を交わすことも出来ないし、それを乗り越えるだけの強さを持って人と接することは出来ない。
彼女が外見上の事柄に心を落とさず、影を持たずに僕に強く迫ってきたとしたら、僕は彼女の事をもっと知りたいと思い、大いに悩んでいた事だろう。
次の日、教室でナオちゃんが薄ら笑いを浮かべながら言ってきた。
「円ちゃんと一緒に帰ってんだ。二ヒヒヒ」
僕と円山さんが試験期間中に時々一緒に帰っている事がクラスで少し噂になっていた。それを嗅ぎ付けたナオちゃんは僕を早速冷やかしに来たのだ。
「そ、そうだけど」
なんでもないフリをして答えたけれども、内心僕はしまったと思った。できればナオちゃんには知られたくなかったなと思った。もし、彼女が僕に好意を持っていてくれていたとしたら、嫌な思いさせたかもしれない。そして、僕はナオちゃんの恋愛対象から外れてしまったかもしれない。一つの可能性が消えたのだろうか。
「彼女、可愛いしお似合いだよね」
僕は彼女の態度を測りかねていた。もともと、僕のことなんて異性としては見てなくて、ただの保育所が一緒だった同級生の友達くらいにしか思っていないのかもしれない。
彼女が僕の事を好きだなんて思い上がりもいい所だったようだ。僕は恥ずかしくなってきた。
「だといいけどね。僕なんて相手にしてくれないよ」
僕は少し謙遜して答えた。
「じゃあしゅうくんは円ちゃんの事が好きなの」
「うん。好きだよ」僕は円山さんのケロイド状の太ももを思い出しながら答えた。僕は彼女が太ももを見せてくれた事で、若干彼女に心が傾きかけていた。
「上手くいくといいね」ナオちゃんはかすれた声でそう言いながら去っていった。
今思い返せば、この時に彼女の顔が少し引きつっていたように思える。しかし、その時の僕は「なんだよ。それだけかよ」ともう少し彼女と話しがしたかったと思っただけだった。
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