【蜜味】 怖がりの人には怖すぎるかも知れない短編集

MJ

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フェラチオ

フェラチオ7

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桐子は秋田行男の行方を追ったが全く手がかりが掴めないでいた。

既に古びたビジネスホテルで三日も宿泊している。
料金はとても安いのだがヤニ臭いのが難点である。

行男実家に行ってみたが既に別の家族が住んでいた。

役所に行っても個人情報は固く守られていて行方を知ることは出来なかった。

桐子はあまりにも行男の手がかりが掴めないのでこの町に行男はいないと考えた。

途方に暮れた桐子はいったん帰宅することにした。

アパートに入ろうとすると杉田刑事が現れた。
桐子はしまったと思った。
杉田刑事はこの家をみはっていたに違いない。

「あ、君。大丈夫か。病院から居なくなったので心配していたんだ」

桐子は病院に連れ戻されれば行男の行方を探すことが出来なくなってしまう。

とっさに
「中に入ってお茶でもいかがですか?」

と杉田刑事に声をかけた。

「じゃあ話もあるので、お言葉に甘えて上がらせていただきますか」

桐子はいざとなれば杉田刑事を殺してでも行男を追おうと考えていた。

行男だけどこかで幸せに暮らしているのが許せない。そんな逆恨みにも似た感情が桐子を支配している。

桐子はあの事件以来何もかも失っているのだ。
死ぬことも世間体も関係ない。
今生きているのはただ世の男に復習をするため。
それだけに生きているだ。

杉田刑事からは病院を抜け出した事を責められると思っていたが、桐子のもっとも興味ある事が聞かれた。

「元恋人の秋田行男を探していたのか?」

桐子は杉田刑事の目を見た。
この男は人の心が見通せるのか。

「はい」

「秋田はいくら探しても見つからないだろう」

「どういうことですか?」

「秋田はもうこの世にはいない」

「え?」

「秋田は五年前に自殺したそうだ」

桐子はしばらく呆然とした。
そして、その意味を考えた。

秋田もあの事件の被害者だったのだ。

直感的にそう感じると桐子は涙が溢れ出てくるのを止められなかった。

秋田行男は私の事を愛してくれていたんだ。

杉田刑事は泣きわめく桐子がそうなるのもしょうがないと思った。

そして、桐子が一人のか弱い女性として目に映った。その完璧な容姿と美貌と甘い香りはいつの間にか杉田刑事の性欲を掻き立てた。

桐子と密室で二人だけなのである。

しかし、杉田はさすがに刑事である。
何とか自制心を働かせた。

桐子は泣き止むと自分を性的な目で見る杉田刑事に気付いた。

「私の事、抱きたい?」

桐子にそう聞かれて杉田刑事の気持ちはぐらついた。
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