【蜜味】 怖がりの人には怖すぎるかも知れない短編集

MJ

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スポーツドリンク

スポーツドリンク4

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悪魔くんのカウントダウンが終わったが、仁志は何も答えない。この状況ではどちらでもよかった。むしろ、早く済ませて昌代達が帰ってくる前にこの場から去って欲しかった。

「何も答えないならどちらとも味わえ。まずはこのドリンクからだ」

悪魔くんはペットボトルボトルの蓋を取り、仁志の鼻をつまみながら黄色いドリンクを仁志の口に突っ込んだ。

呼吸の出来なくなった仁志は苦しくなり、むせながら、ドリンクを飲み込むしかなかった。

ゴボゴボゴボ

先程さんざん吐いたドリンクがまた胃の中に注ぎ込まれる。

ペットボトルの底に溜まっていた不透明な目玉のようなものも口の中でゴロゴロと転がっている。

悪魔くんはそれも全て飲み込ませようと鼻と口を塞ぐ。

仁志は受け入れたくない異物が喉を通って行く気持ち悪い感覚を覚えた。

全ての黄色いドリンクが仁志の胃袋に放り込まれた後に悪魔くんはもてあそぶように包丁を仁志にかざして見せつけた。

腐った黄色いドリンクが胃の中にさらに追加された仁志はすでに死を覚悟していた。先程半分の量を飲み込んだ時点でこれだけ動けなくなっているわけである。

この黄色い腐ったドリンクの神経に作用する毒素は半端ない。

さらに半分追加された今、いつ心臓が鼓動を失ってもおかしくない。

今更悪魔くんが包丁で刺そうが刺すまいが死ぬことには変わりない。
ただ、昌代や子供達の無事を願う。

「次はこの包丁を腹に味わってもらう」

そう言うと悪魔くんは包丁を静かに腹に刺しこんだ。

皮肉な事に仁志が普段から砥石で研いで手入れをしている切れ味抜群の出刃包丁である。

悪魔くんの体重がかけられ、すーっと静かに包丁は腹の中に入っていった。

傷口からは血が溢れてきた。

仁志は血が腹の中に溜まっていく様を感じたが不思議と痛みは感じなかった。

悪魔くんは腹を開けた後、先程の黄色いドリンクの様子を見ようと胃袋を手で探った。

胃は膨れあがりドリンクが中を満たしているのが感じられた。

悪魔くんはその胃に出刃包丁を突き立て中身を確認した。
黄色い腐ったドリンクが胃の切り口から溢れ出し血と混ざりあった。

その時、ガチャリと玄関のドアが開き、昌代が入ってきた。

夫の変わり果てた姿とその前に包丁を持って座っている男の姿に

「きゃー!」

と昌代は絶叫した。
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