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第一章 運命の人
しゅんがこうきを殴った
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学校は一学期の期末テスト期間に入った。ともみは休憩時間にも勉強していた。
数学のどうしても分からない問題があって苦労していると、しゅんが覗き込んできた。
「休憩時間まで勉強しょうるん?」
「期末試験じゃけえね。この問題がどうしてもわからんのんよ」
「どれどれ」
「しゅん君に分かるわけないじゃろ」
「俺はこういうの得意なんよ」
と言って問題を解き始めた。
しゅんはともみのノートに数式を書いていく。
「ほら、できた」
確かに最後の答えはあっているみたいだが、途中が正しいのかよく分からん。
「ほんまにあっとる?」
「たぶん」
ともみは困った顔をして考える。
そこへ、こうきが通りかかったので、ともみが聞いた。
「こうきくん、これ合っとる?」
「うーん。この途中式はちょっとわからんけど、これは確かこうやるんじゃなかったっけ」とスラスラと数式を書いていった。
それは、しゅんが書いた数式よりも幾分長いが、ともみには理解出来る数式だった。
「ありがとう」
ともみはしゅんにノートを見せて、
「こうやってやるんだってよ」と言った。
「ふーん」としゅんはつまらなそうに自分の席に戻って行った。
その日の昼休憩、事件は起こった。
昼食を終えて仲良く雑談していたかと思われた男子の集団の中で、しゅんがこうきの胸ぐらを掴んでいた。
「なんだと。もう一度言ってみろよ」
しゅんが大声を出して激高し、顔を真っ赤にしている。
ただ事じゃない。
クラスのみんなが注目した。
「ふん。お前あいつのことが好きなんか」
その時、こうきがチラリと、ともみの方を見たような気がした。
「うるせえ。それは今関係ねえだろ」
「別に見たっていいだろ。減るもんじゃないし」
いい終わるかどうかというタイミングでしゅんの右拳がこうきの頬にくい込んでいた。
「いいわけねえだろ」
こうきが吹き飛び、ガラガラガラと机が倒れて、中に入っていた誰かの文房具が床に散らばった。
「キャー」と言う女生徒達の悲鳴が沸き起こった。
教室は騒然とした。唇を切って血を流したこうきが倒れたまましゅんを睨んでいる。
しゅんは怒りが治まらないのか、しゃがみこんでもう一度こうきを殴ろうとした。しかし、中島がしゅんの腕を掴んで止めた。
「もうやめとけって」
そこへ、他の生徒が呼んできた教師が現れて2人は職員室へ連行されて行った。
ともみはどうしていいのか分からなくてオロオロしていた。目は真っ赤に腫れて今にも泣き出しそうになっていた。
こうきが先に1人教室に戻ってきた。
ともみはすぐに近寄った。
「こうき君、大丈夫?何があったの?」
こうきは気まずそうな表情を浮かべた。
「大丈夫。大丈夫。大した事ないから」
「しゅん君なんであんなに怒ってたの?」
こうきは何も言いたくなさそうに黙っていた。
代わりに中島が近づいてきて言った。
「あいつあんな事で怒るなんてどうかしてるよな」
「ああ。よくわかんない」
「もしかして、あいつ、ともみちゃんの事好きなの?」と中島が唐突に聞いてきた。
ともみは予想だにしない質問に焦った。
「え、そんなことないと思うよ。他の学校に好きな子いるって言ってたし」
「じゃあ、ともみちゃんはしゅんの事どう思ってるの?」
ともみはどう答えていいか分からず、頭の中で懸命に考えて、「元幼馴染ってだけどけど」と答えた。
「じゃあ、しゅんの事特に好きって訳じゃないよね」とこうきが尋ねた。
「う、うん。そうだけど」
ともみはなぜそんなこと聞かれてるかよく分からないまま答えていた。
「じゃあ良かった」
こうきは少し嬉しそうな顔をして席に戻った。
しゅんはなぜこうきを殴ったか、先生に理由を一切言わなかったらしい。
憮然とした表情で帰ってきて、不機嫌そうに帰宅した。
こうきも周りの男子も何があったかを誰にも言わなかった。
数学のどうしても分からない問題があって苦労していると、しゅんが覗き込んできた。
「休憩時間まで勉強しょうるん?」
「期末試験じゃけえね。この問題がどうしてもわからんのんよ」
「どれどれ」
「しゅん君に分かるわけないじゃろ」
「俺はこういうの得意なんよ」
と言って問題を解き始めた。
しゅんはともみのノートに数式を書いていく。
「ほら、できた」
確かに最後の答えはあっているみたいだが、途中が正しいのかよく分からん。
「ほんまにあっとる?」
「たぶん」
ともみは困った顔をして考える。
そこへ、こうきが通りかかったので、ともみが聞いた。
「こうきくん、これ合っとる?」
「うーん。この途中式はちょっとわからんけど、これは確かこうやるんじゃなかったっけ」とスラスラと数式を書いていった。
それは、しゅんが書いた数式よりも幾分長いが、ともみには理解出来る数式だった。
「ありがとう」
ともみはしゅんにノートを見せて、
「こうやってやるんだってよ」と言った。
「ふーん」としゅんはつまらなそうに自分の席に戻って行った。
その日の昼休憩、事件は起こった。
昼食を終えて仲良く雑談していたかと思われた男子の集団の中で、しゅんがこうきの胸ぐらを掴んでいた。
「なんだと。もう一度言ってみろよ」
しゅんが大声を出して激高し、顔を真っ赤にしている。
ただ事じゃない。
クラスのみんなが注目した。
「ふん。お前あいつのことが好きなんか」
その時、こうきがチラリと、ともみの方を見たような気がした。
「うるせえ。それは今関係ねえだろ」
「別に見たっていいだろ。減るもんじゃないし」
いい終わるかどうかというタイミングでしゅんの右拳がこうきの頬にくい込んでいた。
「いいわけねえだろ」
こうきが吹き飛び、ガラガラガラと机が倒れて、中に入っていた誰かの文房具が床に散らばった。
「キャー」と言う女生徒達の悲鳴が沸き起こった。
教室は騒然とした。唇を切って血を流したこうきが倒れたまましゅんを睨んでいる。
しゅんは怒りが治まらないのか、しゃがみこんでもう一度こうきを殴ろうとした。しかし、中島がしゅんの腕を掴んで止めた。
「もうやめとけって」
そこへ、他の生徒が呼んできた教師が現れて2人は職員室へ連行されて行った。
ともみはどうしていいのか分からなくてオロオロしていた。目は真っ赤に腫れて今にも泣き出しそうになっていた。
こうきが先に1人教室に戻ってきた。
ともみはすぐに近寄った。
「こうき君、大丈夫?何があったの?」
こうきは気まずそうな表情を浮かべた。
「大丈夫。大丈夫。大した事ないから」
「しゅん君なんであんなに怒ってたの?」
こうきは何も言いたくなさそうに黙っていた。
代わりに中島が近づいてきて言った。
「あいつあんな事で怒るなんてどうかしてるよな」
「ああ。よくわかんない」
「もしかして、あいつ、ともみちゃんの事好きなの?」と中島が唐突に聞いてきた。
ともみは予想だにしない質問に焦った。
「え、そんなことないと思うよ。他の学校に好きな子いるって言ってたし」
「じゃあ、ともみちゃんはしゅんの事どう思ってるの?」
ともみはどう答えていいか分からず、頭の中で懸命に考えて、「元幼馴染ってだけどけど」と答えた。
「じゃあ、しゅんの事特に好きって訳じゃないよね」とこうきが尋ねた。
「う、うん。そうだけど」
ともみはなぜそんなこと聞かれてるかよく分からないまま答えていた。
「じゃあ良かった」
こうきは少し嬉しそうな顔をして席に戻った。
しゅんはなぜこうきを殴ったか、先生に理由を一切言わなかったらしい。
憮然とした表情で帰ってきて、不機嫌そうに帰宅した。
こうきも周りの男子も何があったかを誰にも言わなかった。
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