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第一章 運命の人
総合病院 セカンドオピニオン
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病院は丘の上にあったので、ともみとしゅんは無理をせず自転車を押しながら上った。
「恭子ちゃんて、しゅんくんの事好きなのかな」
「さあね」
「恭子ちゃんから好き好きオーラが出まくってたんだけど」
「そうかな」
「胸とか見せてもらったことあるの?」
ともみはこのことが気になっていた。ませた高一は胸ぐらい見せあってるのだろうか。
「ないよ」
「ほんとに?頼んでみれば?見せてもらえるかもよ」
「いやあ、なんか違うんだよな。恭子のはそんなに見たいとは思わないんだよ」
え?見られれば誰のでもいいわけじゃないんだ。
「母親のを見たいと思わないのと同じ感覚かなあ。その違いがなんなのかよく分からないんだよな」
病院に着くとしゅんは戸惑っていた。
「こんな大きい病院初めてだよ。どこに行けばいいんだ」
「こういう時は病院の人に聞けばいいのよ」
ともみは病院の名札をぶら下げた係の人に聞いてさっさと受付をすませた。
「ともちゃんについてきてもらって良かったよ。独りじゃ全然分からない」
「いつもどこの病院行ってんの?」
「木曽医院」
「木曽医院てヤブで有名じゃん」
「えっ、そうなの?」
「あそこで注射打って死にかけたって人沢山いるらしいよ。まさか木曽医院で手術したの?」
「手術は大学病院でしたんだけど、退院してからは木曽医院に通ってる」
「じゃあいい機会だから、ここで心臓の事もしっかり調べてもらった方がいいんじゃない?セカンドオピニオンは大事だから」
「セカンドオピニオンって?」
「私も詳しくはないんだけど、ひとりのお医者さんの意見だけじゃなくて、沢山の意見を聞くってこと」
「へえそうなんだ。時間がもったいないから近くの木曽医院しか行ったことなかったよ。なんか急に不安になってきた」
2人は病院の椅子に座って待たされた。
傍から見ると、夏の制服を着た2人はお似合いのカップルのように見えた。
「俺さあ、手術を受けてなかったら小学6年生までの命だって言われてたんだ」
「そうなんだ」
「1年生の時、入院して手術した」
「引っ越した時だね。成功して良かったね」
「だから今でも生きてる。不思議な感じ。同じ病室にいた何人かはもう死んでると思う。治らない病気の人達もいたからね。それから生きるってどういうことなんだろう、命って何だろうって考えるようになった。人はいつ死ぬか分からない。無駄な事をしている暇は無いんだ」
しゅんにとって死はとても身近なものだったんだ。
それを知ると、ともみはしゅんが彼なりの人生観を持って生きているんだと思った。
決してサボってばかりいる人ではなかったのだ。
しゅんが診察をしている間、ともみはしゅんの事について色々と思い返してみた。
ちんたらやっているように見えたバスケの試合も実は脈拍を気にしながら彼なりに本気でやっていたのだ。
無駄なことをしている暇はない。
その言葉はともみの耳に残った。
しゅんにとっての無駄なものとは何なのだろうか。
死ぬかもしれないのだったら学校の勉強でさえ無駄に思えるかもしれない。
それから、死んでもいいからおっぱいを見たいって言っていたのは本気だったのだ。
死んでもいい?
そんなに大事なことなのか?
いのちがけで?
やっぱり笑える。しゅんらしい。
「おまたせ」
「どうだった?」
「とりあえず、今のところ異常はないって。酸欠と低血糖だろうって。心臓に関しては後日精密検査をするから来いって」
「よかった。よかった」
「今日はありがとう。優勝出来なくて残念だったけど、またおっぱい見せて」
「またじゃないでしょ。私のじゃなくて、好きな人に見せてもらいな」
「そだね。頑張ってみるよ」
「あんまり頑張り過ぎないように。死んじゃうと見れないから」
「そうだ。病気のことは絶対内緒にしててね。弱いと思われるの嫌なんだ」
「わかった。また明日」
次の日、しゅんは学校へ来なかった。
「恭子ちゃんて、しゅんくんの事好きなのかな」
「さあね」
「恭子ちゃんから好き好きオーラが出まくってたんだけど」
「そうかな」
「胸とか見せてもらったことあるの?」
ともみはこのことが気になっていた。ませた高一は胸ぐらい見せあってるのだろうか。
「ないよ」
「ほんとに?頼んでみれば?見せてもらえるかもよ」
「いやあ、なんか違うんだよな。恭子のはそんなに見たいとは思わないんだよ」
え?見られれば誰のでもいいわけじゃないんだ。
「母親のを見たいと思わないのと同じ感覚かなあ。その違いがなんなのかよく分からないんだよな」
病院に着くとしゅんは戸惑っていた。
「こんな大きい病院初めてだよ。どこに行けばいいんだ」
「こういう時は病院の人に聞けばいいのよ」
ともみは病院の名札をぶら下げた係の人に聞いてさっさと受付をすませた。
「ともちゃんについてきてもらって良かったよ。独りじゃ全然分からない」
「いつもどこの病院行ってんの?」
「木曽医院」
「木曽医院てヤブで有名じゃん」
「えっ、そうなの?」
「あそこで注射打って死にかけたって人沢山いるらしいよ。まさか木曽医院で手術したの?」
「手術は大学病院でしたんだけど、退院してからは木曽医院に通ってる」
「じゃあいい機会だから、ここで心臓の事もしっかり調べてもらった方がいいんじゃない?セカンドオピニオンは大事だから」
「セカンドオピニオンって?」
「私も詳しくはないんだけど、ひとりのお医者さんの意見だけじゃなくて、沢山の意見を聞くってこと」
「へえそうなんだ。時間がもったいないから近くの木曽医院しか行ったことなかったよ。なんか急に不安になってきた」
2人は病院の椅子に座って待たされた。
傍から見ると、夏の制服を着た2人はお似合いのカップルのように見えた。
「俺さあ、手術を受けてなかったら小学6年生までの命だって言われてたんだ」
「そうなんだ」
「1年生の時、入院して手術した」
「引っ越した時だね。成功して良かったね」
「だから今でも生きてる。不思議な感じ。同じ病室にいた何人かはもう死んでると思う。治らない病気の人達もいたからね。それから生きるってどういうことなんだろう、命って何だろうって考えるようになった。人はいつ死ぬか分からない。無駄な事をしている暇は無いんだ」
しゅんにとって死はとても身近なものだったんだ。
それを知ると、ともみはしゅんが彼なりの人生観を持って生きているんだと思った。
決してサボってばかりいる人ではなかったのだ。
しゅんが診察をしている間、ともみはしゅんの事について色々と思い返してみた。
ちんたらやっているように見えたバスケの試合も実は脈拍を気にしながら彼なりに本気でやっていたのだ。
無駄なことをしている暇はない。
その言葉はともみの耳に残った。
しゅんにとっての無駄なものとは何なのだろうか。
死ぬかもしれないのだったら学校の勉強でさえ無駄に思えるかもしれない。
それから、死んでもいいからおっぱいを見たいって言っていたのは本気だったのだ。
死んでもいい?
そんなに大事なことなのか?
いのちがけで?
やっぱり笑える。しゅんらしい。
「おまたせ」
「どうだった?」
「とりあえず、今のところ異常はないって。酸欠と低血糖だろうって。心臓に関しては後日精密検査をするから来いって」
「よかった。よかった」
「今日はありがとう。優勝出来なくて残念だったけど、またおっぱい見せて」
「またじゃないでしょ。私のじゃなくて、好きな人に見せてもらいな」
「そだね。頑張ってみるよ」
「あんまり頑張り過ぎないように。死んじゃうと見れないから」
「そうだ。病気のことは絶対内緒にしててね。弱いと思われるの嫌なんだ」
「わかった。また明日」
次の日、しゅんは学校へ来なかった。
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