ダメな男を愛する女達

MJ

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第一章 運命の人

しゅんの心臓病

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しゅんは倒れたあと、医務室に運ばれた。

医務室の先生はしゅんの状態を確認した。
「急激な運動による酸欠と血糖値の低下が原因じゃないかしら」
「はい」と青白い顔をしたしゅんがうなずく。
「足をすこしあげてベッドでしばらく安静にしてなさい。それから、念の為、病院で検査を受けた方がいいわね」

ともみは学級委員として付き添うこととなった。

貧血でまだ青白い顔をしたしゅんがつぶやく。
「あああ。やっぱり負けてるだろうな」
「多分ね」
試合はきっと負けただろう。

「やっぱり、負けたらおっぱい見せてくれないよね」
「そりゃそうでしょ」
さっきまで倒れて意識朦朧としていたくせに、何考えているんだか。
ともみは少しでも心配して損をしたと思った。

「付け焼き刃じゃ勝てないって事ね。普段から鍛えてないと」

「そうなんだけどさ。俺、医者から激しい運動止められてるんだよね」

「ほう。とても元気良さそうだけど」

「俺、小さい時に心臓の病気してさ、手術したんだよ。それから激しい運動してはいけないって言われてるんだ。心拍数が120より上がらないように気をつけてる」

「それホントの話?だったらあんなに無理しちゃだめじゃない」

「だってさ。勝ったらおっぱい見れるんだもん。死んでもいいと思った」

「あほか。そんなんで死んでもいいなんて命の安売りしすぎじゃ。て言うか死んだら見れないじゃない」

「そっか」

「それと、そんな事情があるならみんなに言っとかないとダメじゃない」

「チーム決めの時、激しい運動はダメだって言ったのに、みんな信じてくれなかったんだよね」

「そう言えば、そんなこと言ってたっけ。みんな笑ってたけど」

「あんまり言っても面倒だからなあ。あ、心臓病の事はみんなに内緒にしといて」

「何で」

「心臓病があるなんてバレたらモテなくなるから。それと気を使われるのが嫌なんだ」
しゅんは手を合わせて懇願している。

やれやれ。この男はそこまでしてモテたいのか。
「わかった。内緒にしとくわよ」

その時、医務室のカーテンが開いて人が入ってきた。

「しゅん、残念だったねー。優勝は1組が頂いちゃった。それにしても途中で倒れるなんてカッコ悪かったねえ」

「きょうこかあ。悔しいけど完敗だったよ」

「ま、うちのクラスには栗生くんがいるんだから勝てるわけないよ」

「あいつ凄いよな」

「バスケ部のエースだもんね。ねえ、今日一緒に帰る?慰めてあげようか?」

「いや、これから病院に行かなくちゃならなくて。いま、先生が病院に連絡取ってくれてるんだ」

「そっか。じゃあ病院まで一緒に行こうか?」

「いいよ。学級委員が付き添ってくれるから」

「学級委員って?」

「そこにいるのが、学級委員の中村ともみさん」

「あ、はじめまして。いいよ、いいよ、帰っても。あとは私が引き受けるから」ときょうこは手の平を横に振りながら言った。

「いえ、そういう訳にはいきません。先生に頼まれたので」
ともみはなぜかそう応えてしまっていた。

「あなた真面目なのね。学級委員だからって病院まで付き添うことも無いでしょ。私たち帰る方向が一緒だから丁度いいのよ」
きょうこはともみをじっと見ている。

「しゅんくんはうちのクラスのために頑張ってくれたから、学級委員もちゃんとしなきゃと思って」

そこへ、4組の仲間達が入ってきた。
「しゅん大丈夫か?心配したよ。ただの酸欠だったってな」
「結局、あのまま負けちゃったよ」
「お前があそこまで頑張るとはな」
「見直したよ」
「しゅん、お前、バスケ部に入らないか?」
次々に話しかけてくる仲間達の中でしゅんは顔に赤みを少し取り戻して笑っていた。

「ていうかこの子誰?」
「俺と同じ中学出身のきょうこ」
「ああ、よく一緒に帰ってる子だよな。彼女さん?」
きょうこはその質問に身体を硬くした。
「いや、彼女じゃないんだけどね」としゅんがあっけなく答える。

きょうこはみんなの前で赤くなった。
「しゅん、今日は先に帰るわ。また明日」
きょうこは4組の人達に囲まれて居心地が悪くなったので帰ることにしたみたいだ。
「ああ、心配してくれてありがとう。また連絡する」


ともみは部活を休んでしゅんと一緒に病院に向かった。
本当は学級委員だからと言ってそこまでする必要はなかったんだけど、無理をさせた責任を感じていた。
それに、しゅんのことを見直した所もあった。
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