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第一章 運命の人
学級委員の初仕事
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ともみの学級委員になって最初の仕事は球技大会のメンバーを決めることだった。
ホームルームの時間に、担任の先生からともみとコウキが壇上に呼ばれた。
ともみはみんなの前に立つのに緊張していたが、コウキは慣れているのかスムーズに仕切った。
「皆さん、これから球技大会のチーム決めを行いたいと思います」
ともみはホワイトボードの前に立って板書をする事にした。
「球技大会の種目はバスケットボールです。各クラス男女3チームずつ出場します。バスケット部員は1チームに1人しか入れません。何か意見のある人はいますか」
誰も意見を言う人はいない。
「意見が無いようなので僕の案を出します。1チームは上手い人を集めて本気チーム、残りの2チームは仲良いもの同士で組むというのはどうでしょう」
「それでいいよ。さっさと決めようぜ」とバスケ部の中島が言った。
みんなから賛同の拍手が起こった。
「では、まず男子の本気チームから決めたいと思います。1人はバスケ部の中島。それからテニス部の僕。他に立候補する人はいますか」
バレー部の宮本、ラグビー部の澤部、野球部の岡田が立候補した。
ともみはホワイトボードにそれらの名前を書いていった。
「5人ギリギリだときついのでもう2人ほど本気チームでやる人いませんか?」
あまりバスケに自信が無いのか陸上部や卓球部の人は手を挙げない。
「この5人がいたらそこそこ強いと思うので、自信がなくても大丈夫ですよ」
それでも誰も手を挙げない。
「じゃあ誰か推薦する人はいませんか?部活入っているとか、バスケ経験者とか」
するとガリ勉の村上しんじが言った。
「しゅんがいいと思います。中学の時バスケ上手かったので」
「しんじ、お前何言ってんだよ。俺は本気チームなんてやりたくないの」
「しゅんは運動神経いいんだから本気チームでやればいいじゃん」としゅんと同じ中学出身のきょうこも言った。
ともみはしゅんが運動神経いいなんて初耳だぞと思いながら聞いていた。
「俺は医者から激しい運動止められてんの」
「そんなの絶対嘘じゃん」としんじが言って、笑いが起こった。
「嘘じゃないんだって」としゅんは言っているが誰も取り合わない。
「無理しなくていいから入ってくれない?数合わせでいいからさ。5人のメンバー主体で頑張るから」とコウキが言った。
「でも負けたら文句言うやつ絶対いるじゃん」
「負けても文句言わないからさ。なあみんな」
「ああ」と本気チームのメンバーが頷く。
「1つ条件がある。しんじが本気チームに入るなら入ってもいい」としゅんはシンジの方を見た。
「ええー!ダメダメ。僕は運動神経皆無だから」としんじがうろたえる。
「お前が先に言い出したんだからな。旅は道連れ世は情けって言うだろ」
しゅんはいい案を思いついたとニヤケている。
「学級委員さんさあ、勝ち負け関係ないって言ったんだから、しんじが入ってもいいよね」
コウキは腕を組んで少しの間考えている。
しゅんはコウキがどう出るのか楽しんでいるようだ。
「もちろんいいよ」
「ええー、それじゃあ優勝狙えねえじゃん」と本気メンバーが不満を言っている。
「まあまあ、他に立候補する人もいないみたいだし、どうせ5人で頑張るしかないじゃん」とコウキは本気メンバーを説得する。
「しんじくん、試合にはあまり出なくていいから本気チームに入ってくれないかな。ほぼほぼいるだけでいいから」
しんじは唇をとんがらせてブツブツ言っていたが、周りもしんじに入る事を勧めてきたので、結局「わかったよ」としぶじぶ承諾した。
「じゃあ、しゅんくんも本気チーム加入決定だ。よろしく」
「ちぇっ。結局本気チームかよ」としゅんは面倒くさそうに言った。
男子の本気チームが決まれば残りはスムーズに決まった。仲良しチームはうまい具合に二手に別れたし、女子も運動部中心の1チームとその他の2チームに別れた。もちろん陸上部のともみとあけみは運動部チームに入った。
コウキの仕切りのおかげで、球技大会のチーム決めはとてもスムーズに終わった。みんな早く帰れて喜んだ。
みんなが帰ったあとも学級委員の2人はチームを書き写したりする雑務が残っていた。
「上手く仕切ってくれてありがとう」とともみはコウキに言った。なかなか自分だとああは上手く仕切れない。
「こちらこそ、上手く板書してくれてありがとう。字綺麗だね」
「え、そうかな。普通だよ。普通」
「それに、まとめ方が上手いよ」
ともみは褒められて頬を赤くした。照れてコウキの顔をまともに見ることができない。
「雑務も早く終わらせて部活に行かなきゃね。たしか、ともみさんは陸上部だったね」
「え、知ってた?」
「よくグランド走ってるの見かけるもん」
ともみは体がカーッと熱くなった。
憧れているコウキに走ってるところを見られてるなんて思ってなかった。
雑務が終わるとコウキは
「じゃ、またね」
と言ってカバンを持って教室を出た。振り返りもせずに手を振りながら。
その無駄のない爽やかな動きにともみの目はハートになっていた。
それから1週間後、球技大会の当日を迎えた。
ホームルームの時間に、担任の先生からともみとコウキが壇上に呼ばれた。
ともみはみんなの前に立つのに緊張していたが、コウキは慣れているのかスムーズに仕切った。
「皆さん、これから球技大会のチーム決めを行いたいと思います」
ともみはホワイトボードの前に立って板書をする事にした。
「球技大会の種目はバスケットボールです。各クラス男女3チームずつ出場します。バスケット部員は1チームに1人しか入れません。何か意見のある人はいますか」
誰も意見を言う人はいない。
「意見が無いようなので僕の案を出します。1チームは上手い人を集めて本気チーム、残りの2チームは仲良いもの同士で組むというのはどうでしょう」
「それでいいよ。さっさと決めようぜ」とバスケ部の中島が言った。
みんなから賛同の拍手が起こった。
「では、まず男子の本気チームから決めたいと思います。1人はバスケ部の中島。それからテニス部の僕。他に立候補する人はいますか」
バレー部の宮本、ラグビー部の澤部、野球部の岡田が立候補した。
ともみはホワイトボードにそれらの名前を書いていった。
「5人ギリギリだときついのでもう2人ほど本気チームでやる人いませんか?」
あまりバスケに自信が無いのか陸上部や卓球部の人は手を挙げない。
「この5人がいたらそこそこ強いと思うので、自信がなくても大丈夫ですよ」
それでも誰も手を挙げない。
「じゃあ誰か推薦する人はいませんか?部活入っているとか、バスケ経験者とか」
するとガリ勉の村上しんじが言った。
「しゅんがいいと思います。中学の時バスケ上手かったので」
「しんじ、お前何言ってんだよ。俺は本気チームなんてやりたくないの」
「しゅんは運動神経いいんだから本気チームでやればいいじゃん」としゅんと同じ中学出身のきょうこも言った。
ともみはしゅんが運動神経いいなんて初耳だぞと思いながら聞いていた。
「俺は医者から激しい運動止められてんの」
「そんなの絶対嘘じゃん」としんじが言って、笑いが起こった。
「嘘じゃないんだって」としゅんは言っているが誰も取り合わない。
「無理しなくていいから入ってくれない?数合わせでいいからさ。5人のメンバー主体で頑張るから」とコウキが言った。
「でも負けたら文句言うやつ絶対いるじゃん」
「負けても文句言わないからさ。なあみんな」
「ああ」と本気チームのメンバーが頷く。
「1つ条件がある。しんじが本気チームに入るなら入ってもいい」としゅんはシンジの方を見た。
「ええー!ダメダメ。僕は運動神経皆無だから」としんじがうろたえる。
「お前が先に言い出したんだからな。旅は道連れ世は情けって言うだろ」
しゅんはいい案を思いついたとニヤケている。
「学級委員さんさあ、勝ち負け関係ないって言ったんだから、しんじが入ってもいいよね」
コウキは腕を組んで少しの間考えている。
しゅんはコウキがどう出るのか楽しんでいるようだ。
「もちろんいいよ」
「ええー、それじゃあ優勝狙えねえじゃん」と本気メンバーが不満を言っている。
「まあまあ、他に立候補する人もいないみたいだし、どうせ5人で頑張るしかないじゃん」とコウキは本気メンバーを説得する。
「しんじくん、試合にはあまり出なくていいから本気チームに入ってくれないかな。ほぼほぼいるだけでいいから」
しんじは唇をとんがらせてブツブツ言っていたが、周りもしんじに入る事を勧めてきたので、結局「わかったよ」としぶじぶ承諾した。
「じゃあ、しゅんくんも本気チーム加入決定だ。よろしく」
「ちぇっ。結局本気チームかよ」としゅんは面倒くさそうに言った。
男子の本気チームが決まれば残りはスムーズに決まった。仲良しチームはうまい具合に二手に別れたし、女子も運動部中心の1チームとその他の2チームに別れた。もちろん陸上部のともみとあけみは運動部チームに入った。
コウキの仕切りのおかげで、球技大会のチーム決めはとてもスムーズに終わった。みんな早く帰れて喜んだ。
みんなが帰ったあとも学級委員の2人はチームを書き写したりする雑務が残っていた。
「上手く仕切ってくれてありがとう」とともみはコウキに言った。なかなか自分だとああは上手く仕切れない。
「こちらこそ、上手く板書してくれてありがとう。字綺麗だね」
「え、そうかな。普通だよ。普通」
「それに、まとめ方が上手いよ」
ともみは褒められて頬を赤くした。照れてコウキの顔をまともに見ることができない。
「雑務も早く終わらせて部活に行かなきゃね。たしか、ともみさんは陸上部だったね」
「え、知ってた?」
「よくグランド走ってるの見かけるもん」
ともみは体がカーッと熱くなった。
憧れているコウキに走ってるところを見られてるなんて思ってなかった。
雑務が終わるとコウキは
「じゃ、またね」
と言ってカバンを持って教室を出た。振り返りもせずに手を振りながら。
その無駄のない爽やかな動きにともみの目はハートになっていた。
それから1週間後、球技大会の当日を迎えた。
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