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第一章 運命の人
父親 学級委員 席替え
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ともみが家に入ると
「ちゃんと説明したんだけどね。父さん怒っとる」と母親が眉毛を八の字にしていた。
居間では、父親がビールを飲んでいた。
日に焼けた顔はうっすら赤くなっている。
表情は険しい。
ピーちゃんとコロちゃんは鳥かごの中で並んで大人しくしている。きっと父親は大きな声で怒ったに違いない。
ともみはゆっくりとテーブルについてご飯を食べはじめた。
「ともみ。今何時なんよ」
「8時」
「門限は?」
「7時」
「今まで何しとったんよ」
「母さんに遅くなるって電話しといたんだけど」
「男とホテルを見に行ってたんか」
「ホテルじゃなくてホタル」
「どっちでも一緒じゃ。こんな夜遅くまで高校生が男とぶらぶらしとったら危ないじゃろ。何かあったらどうするんよ」
「ホテルと蛍が一緒なわけないでしょ。蛍は暗くならないと見れないの。それに男じゃなくて、村上しゅんくん。クラスメイトの幼馴染なんだから。危ないわけないじゃない」
「その村上しゅんくんとは付き合ってるんか?どんな子なんじゃ。こんな夜に誘ってくるなんて」
「別に付き合ってるとかじゃないよ。ちゃんとした子だから」
「まあ、とにかく高校生の間は門限は7時だからな。付き合うにしても門限までにお前をちゃんと帰すような子じゃないと信用出来んからな」
「父さんは何も分かってないよ。しゅんくんはわたしに蛍を見せたくて誘ってくれただけだから」
ともみはさっさと夕飯を食べ終わると部屋に閉じこもった。
「ともみ、父さんは心配して言ってくれてるんだから。わかってあげなさいよ」と母親の声が部屋の外から聞こえた。
ともみは父親に大切な時間を台無しにされたような気がした。
早く大人になりたかった。
いや、男に生まれたかった。
父さんも兄さんにはそれほど面倒なことはいわない。
女子高生だから蛍を見に行ったくらいで兎や角言われなければならないのだ。
ともみは夜遅く部屋を抜け出してシャワーを浴びに行った。父親はリビングで酔っ払って寝ていた。
彼氏が出来たなんて言ったらもっと怒りそうだなと思った。
次の日学校に行くとしゅんは得意げに言った。
「昨日は良かっただろ」
「お父さんが怒ってて大変だったんだから」
「は?なんで」
「門限破ったから」
「父さんわかってないね」
「うん。全然わかってない」
「ごめんな」
「いいの。いいの。しゅんくんは悪くないから」
その日のホームルームで学級委員を選ぶことになった。
ともみの憧れのこうきが立候補した。女子は誰も立候補する人が居なかったので、ともみは思い切って立候補した。結局、他には立候補する人はいなくて、こうきとともみで学級員を務めることに決まった。
ともみは心の中で小さくガッツポーズをした。
こうきと仲良くなれるチャンスだ。
それから、席替えが行われることになった。隣の席の元幼馴染は隣の席ではなくなった。ともみはちょっと寂しい気がしたが、しゅんはそんな事はこれっぽっちも考えていないようだった。
隣の女の子と早くも仲良く喋っている。
まあ、これからは隣の女の子にノートや鉛筆を借りればいい。
しゅんに貸していたノートはともみが持っている。席が変わってからは家の本棚にしまって学校に持ってくることはなくなった。
「ちゃんと説明したんだけどね。父さん怒っとる」と母親が眉毛を八の字にしていた。
居間では、父親がビールを飲んでいた。
日に焼けた顔はうっすら赤くなっている。
表情は険しい。
ピーちゃんとコロちゃんは鳥かごの中で並んで大人しくしている。きっと父親は大きな声で怒ったに違いない。
ともみはゆっくりとテーブルについてご飯を食べはじめた。
「ともみ。今何時なんよ」
「8時」
「門限は?」
「7時」
「今まで何しとったんよ」
「母さんに遅くなるって電話しといたんだけど」
「男とホテルを見に行ってたんか」
「ホテルじゃなくてホタル」
「どっちでも一緒じゃ。こんな夜遅くまで高校生が男とぶらぶらしとったら危ないじゃろ。何かあったらどうするんよ」
「ホテルと蛍が一緒なわけないでしょ。蛍は暗くならないと見れないの。それに男じゃなくて、村上しゅんくん。クラスメイトの幼馴染なんだから。危ないわけないじゃない」
「その村上しゅんくんとは付き合ってるんか?どんな子なんじゃ。こんな夜に誘ってくるなんて」
「別に付き合ってるとかじゃないよ。ちゃんとした子だから」
「まあ、とにかく高校生の間は門限は7時だからな。付き合うにしても門限までにお前をちゃんと帰すような子じゃないと信用出来んからな」
「父さんは何も分かってないよ。しゅんくんはわたしに蛍を見せたくて誘ってくれただけだから」
ともみはさっさと夕飯を食べ終わると部屋に閉じこもった。
「ともみ、父さんは心配して言ってくれてるんだから。わかってあげなさいよ」と母親の声が部屋の外から聞こえた。
ともみは父親に大切な時間を台無しにされたような気がした。
早く大人になりたかった。
いや、男に生まれたかった。
父さんも兄さんにはそれほど面倒なことはいわない。
女子高生だから蛍を見に行ったくらいで兎や角言われなければならないのだ。
ともみは夜遅く部屋を抜け出してシャワーを浴びに行った。父親はリビングで酔っ払って寝ていた。
彼氏が出来たなんて言ったらもっと怒りそうだなと思った。
次の日学校に行くとしゅんは得意げに言った。
「昨日は良かっただろ」
「お父さんが怒ってて大変だったんだから」
「は?なんで」
「門限破ったから」
「父さんわかってないね」
「うん。全然わかってない」
「ごめんな」
「いいの。いいの。しゅんくんは悪くないから」
その日のホームルームで学級委員を選ぶことになった。
ともみの憧れのこうきが立候補した。女子は誰も立候補する人が居なかったので、ともみは思い切って立候補した。結局、他には立候補する人はいなくて、こうきとともみで学級員を務めることに決まった。
ともみは心の中で小さくガッツポーズをした。
こうきと仲良くなれるチャンスだ。
それから、席替えが行われることになった。隣の席の元幼馴染は隣の席ではなくなった。ともみはちょっと寂しい気がしたが、しゅんはそんな事はこれっぽっちも考えていないようだった。
隣の女の子と早くも仲良く喋っている。
まあ、これからは隣の女の子にノートや鉛筆を借りればいい。
しゅんに貸していたノートはともみが持っている。席が変わってからは家の本棚にしまって学校に持ってくることはなくなった。
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