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第一章 運命の人
ホテルを見ていて門限破りした訳じゃない
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「もう少し暗くって何時くらい?」
「そうだなあ。暗くなってくるのは7時半位かな」
「じゃあ、無理だ。門限7時だもん」
「え、そんなことで諦めるの?門限なんて破るためにあるもんだろ」と治外法権国家のようなことをしゅんは言う。
「そんなのダメだよ。親との約束だもん」とともみは当然のことを言う。
「蛍は6月の今しか見れないんだよ。それを門限のせいで見れないなんてもったいないよ」
「そんなこと言ったって」
「もし、親が心配なんだったら俺がいるから大丈夫だって。電話してみな」
なんでこんなに熱くなるのか分からないけど、しゅんは本気なようだ。お母さんに断ってもらおうと思ってともみはスマホを出して電話した。
「お母さん、友達が蛍見に行こうって言ってるんだけど、帰るの7時過ぎることになりそうなんだけどダメだよね。うんわかった」
ともみは耳からスマホを離してしゅんを見た。
「やっぱりダメだって」
しゅんは微笑んみながら
「ちょっと貸して」とともみのスマホを取り上げた。
「お母さんですか。お世話になってます。村上しゅんと申します。はい。そうです。お久しぶりです。ともみさんと蛍を見に行きたいんですが、いいですか?蛍は今の時期しか見れなくて、今年の蛍は今年しか見れないんです。もう二度とチャンスは訪れません。はい。僕がついてるんで大丈夫です。8時位には送って行きます」
しゅんはニヤリと笑ってともみにスマホを返した。
「お母さん。行ってもいいの?うん。うん。8時までには帰るから父さんには言っといて。ありがとう」
ともみはスマホの通話を閉じた。
しゅんがドヤ顔をして見ている。
ともみはなんでお母さんがおっけーしたのか分からなかった。それに門限を破ることと、しゅんがお母さんと電話で話した事と、お父さんがどう思うかということで頭がごちゃごちゃになっていた。そこになんだか男の子との秘密めいた事に胸が高鳴った。
しゅんが歩きはじめたのでともみは自転車を押しながらついて行く。
しゅんが「ホタルはリバーサイド。ホタルはリバーサイド」と歌った。
「ふふふ。ホタルじゃなくてホテルだから」
ともみは自分では気づいてないが笑うと頬が力む癖がある。
「まあまあ。ホタルもリバーサイドだから」
しゅんは小道の脇に止めた自転車に乗り藤井川の方に向かって坂道を下り出す。ともみもその後に続く。
藤井川について自転車を止める。
まだ空は明るい。
川を見回してもまだ蛍は見えない。
「ほんとにここに蛍がいるの?」
「ああ。今の季節ならもういるはず」
「ほんとに?見えないよ」
「もうすぐだよ」
対岸の家から生活感のある明かりが灯った。
しゅんの呼吸しているのを感じる。
徐々に空は赤くピンクに紫色になっていく。
雲が少しずつ動いていく。
空ってこんな風に色が変わっていくんだ。
しゅんの白いカッターシャツが段々と光を失ってぼやけてきた。
「ほら」
しゅんが指さす方を見ると、河原に生えた草の間にうっすらと緑色の光が見えた。
「いるいる」
「うわー。いるいる」
最初の1匹が目に入ると、2匹3匹と段々数が増えていった。
日が沈む度に蛍の数は増えていった。
しばらくすると何故か数匹の蛍がともみの周りを飛び始めた。そして1匹が制服の上にとまった。
「動かないで」
そう言ってしゅんは両手でそっと蛍をすくった。しゅんの手の中で淡く光っている。
「ゲンジボタルだ」
そう言ってしゅんはプラスチックの瓶の中に素早く入れた。
何故か蛍はともみの周りに集まってきた。
「なんでともちゃんの周りに蛍が集まるんじゃろ」
「蛍は人を選ぶんじゃね」
ともみは少し得意になった。
「あ、もう50分だ。早く帰らんと」
2人はもう少しいたかったが、秒単位で時間が刻まれていく。
急いで自転車に乗って家に向かう。
家に着くと、すぐに母親が出てきた。
「しゅんくん。早く帰りなさい。気をつけんさいよ」
そう言って扉を閉めた。
ともみの父親は激怒していた。
「そうだなあ。暗くなってくるのは7時半位かな」
「じゃあ、無理だ。門限7時だもん」
「え、そんなことで諦めるの?門限なんて破るためにあるもんだろ」と治外法権国家のようなことをしゅんは言う。
「そんなのダメだよ。親との約束だもん」とともみは当然のことを言う。
「蛍は6月の今しか見れないんだよ。それを門限のせいで見れないなんてもったいないよ」
「そんなこと言ったって」
「もし、親が心配なんだったら俺がいるから大丈夫だって。電話してみな」
なんでこんなに熱くなるのか分からないけど、しゅんは本気なようだ。お母さんに断ってもらおうと思ってともみはスマホを出して電話した。
「お母さん、友達が蛍見に行こうって言ってるんだけど、帰るの7時過ぎることになりそうなんだけどダメだよね。うんわかった」
ともみは耳からスマホを離してしゅんを見た。
「やっぱりダメだって」
しゅんは微笑んみながら
「ちょっと貸して」とともみのスマホを取り上げた。
「お母さんですか。お世話になってます。村上しゅんと申します。はい。そうです。お久しぶりです。ともみさんと蛍を見に行きたいんですが、いいですか?蛍は今の時期しか見れなくて、今年の蛍は今年しか見れないんです。もう二度とチャンスは訪れません。はい。僕がついてるんで大丈夫です。8時位には送って行きます」
しゅんはニヤリと笑ってともみにスマホを返した。
「お母さん。行ってもいいの?うん。うん。8時までには帰るから父さんには言っといて。ありがとう」
ともみはスマホの通話を閉じた。
しゅんがドヤ顔をして見ている。
ともみはなんでお母さんがおっけーしたのか分からなかった。それに門限を破ることと、しゅんがお母さんと電話で話した事と、お父さんがどう思うかということで頭がごちゃごちゃになっていた。そこになんだか男の子との秘密めいた事に胸が高鳴った。
しゅんが歩きはじめたのでともみは自転車を押しながらついて行く。
しゅんが「ホタルはリバーサイド。ホタルはリバーサイド」と歌った。
「ふふふ。ホタルじゃなくてホテルだから」
ともみは自分では気づいてないが笑うと頬が力む癖がある。
「まあまあ。ホタルもリバーサイドだから」
しゅんは小道の脇に止めた自転車に乗り藤井川の方に向かって坂道を下り出す。ともみもその後に続く。
藤井川について自転車を止める。
まだ空は明るい。
川を見回してもまだ蛍は見えない。
「ほんとにここに蛍がいるの?」
「ああ。今の季節ならもういるはず」
「ほんとに?見えないよ」
「もうすぐだよ」
対岸の家から生活感のある明かりが灯った。
しゅんの呼吸しているのを感じる。
徐々に空は赤くピンクに紫色になっていく。
雲が少しずつ動いていく。
空ってこんな風に色が変わっていくんだ。
しゅんの白いカッターシャツが段々と光を失ってぼやけてきた。
「ほら」
しゅんが指さす方を見ると、河原に生えた草の間にうっすらと緑色の光が見えた。
「いるいる」
「うわー。いるいる」
最初の1匹が目に入ると、2匹3匹と段々数が増えていった。
日が沈む度に蛍の数は増えていった。
しばらくすると何故か数匹の蛍がともみの周りを飛び始めた。そして1匹が制服の上にとまった。
「動かないで」
そう言ってしゅんは両手でそっと蛍をすくった。しゅんの手の中で淡く光っている。
「ゲンジボタルだ」
そう言ってしゅんはプラスチックの瓶の中に素早く入れた。
何故か蛍はともみの周りに集まってきた。
「なんでともちゃんの周りに蛍が集まるんじゃろ」
「蛍は人を選ぶんじゃね」
ともみは少し得意になった。
「あ、もう50分だ。早く帰らんと」
2人はもう少しいたかったが、秒単位で時間が刻まれていく。
急いで自転車に乗って家に向かう。
家に着くと、すぐに母親が出てきた。
「しゅんくん。早く帰りなさい。気をつけんさいよ」
そう言って扉を閉めた。
ともみの父親は激怒していた。
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