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第一章 運命の人
居残り授業and追試
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気温が上がって蒸し暑くなってきた頃、ともみにとっては高校生になって初めての中間試験の結果が返ってきた。
周りがみんな頭が良いので不安は大きかったが、平均より少し上ぐらいの成績だったので胸を撫で下ろした。
ノートをコピーさせてあげたしゅんはと言うと、赤点ばかりで追試と居残り授業を受けなくてはならなくなっていた。
「これに懲りて普段からちゃんと勉強しんさいよ」
「わかったよ」
「付け焼き刃のコピーじゃだめってことだよ」
しゅんはしかめっ面をして肩を落とした。放課後は居残り授業と追試が当分待っている。
ともみは放課後の部活の再開を喜んだ。
走りながらテニス部のこうき君の様子を伺った。
こうきの周りの取り巻きテニスギャル達が気になる。テニス部に入っときゃ良かったかなあ。
陸上部の男子よりも足速いんだもんなあ。
部活が終わってあけみちゃんと自転車置き場に向かった。
「ワタナベ君、いないね」
「そだね」
「もう待ち伏せしないのかな。いい組み合わせだと思ってたんだけどなあ」
「やだ、やめてよ。あけみちゃん。待ち伏せしていたわけじゃないと思うよ。偶然だよ。偶然」
何となく寂しい気もしたが、しゅんくんにはノートをコピーさせてあげてただけだという事はワタナベ君には説明しておいた。勘違いはされてないはず。ただ納得はしてないみたいだった。
いつもならワタナベ君とバイバイする別れ道。
ともみは上り坂で自転車を押しながらワタナベ君の事を考えた。もしかしてわたしの事好きだったのかな。だとしても何も言わなかったら分からないよね。
そんな事を考えていると、道の脇の草むらがガサガサと音を立てた。
何か動物がいる。
イノシシか何かだろうか。
足を止めて様子を伺う。
ぱっと現れたのはしゅんだった。制服はホコリだらけだった。ところどころに草とかも着いている。
ともみはイノシシでなくてほっとしていた。
「な、なんでそんなところから現れるの」
「なんだ。ともちゃんか。そう言えば家こっちだったよね。この辺穴場なんだよね」
「なんの穴場?それにその手に持ってるものは何?」
しゅんは透明なプラスチックの瓶を隠すようにカバンの中にしまった。
「何か生き物が入ってなかった?」
「うん。虫捕まえてたんだ」
「なんの虫?」
「ん、ちょっと凶暴なやつ」
「見たい見たい」
「ひくよ」
「いいから、いいから」
しゅんが見せてくれたものにともみは本当にひいた。
「こ、これって」
「そう。オオスズメバチ」
スズメバチは透明なプラスチックの瓶の中で暴れている。それはまるで映画のジュラシックパークのように思えた。出てきたらとても危険だ。
「一体なんのために」
「観察したり動画を撮ったり、あとは標本にする。俺はこのような複雑な形は生物学的に美しいと思うんだ。ほら、この足の形見てよ。それにこんな薄い羽でものすごいスピードで飛ぶんやで」
しゅんは流暢にオオスズメバチの特徴を説明する。あらためて見ると鬼のような顔をしている。
噛まれそう。怖い。顔がこわばる。
しかし、しゅんは何か想像のひとつ上を超えてくる。勉強も部活もやる気ないくせに、興味あることには夢中になってものすごく人を驚かせる。
「やっぱり、こんなのあまり興味無いか」そう言ってしゅんはカバンにさっさとしまった。
「それよりさあ、これから蛍を捕まえに行くんだけど、一緒に行かない?きれいだよ。そこの藤井川ってところにいっぱいいるんだ」
「え、行きたい行きたい」
「ただ、もう少し暗くならないと見えないんだよな」
ともみには7時という門限がある。
周りがみんな頭が良いので不安は大きかったが、平均より少し上ぐらいの成績だったので胸を撫で下ろした。
ノートをコピーさせてあげたしゅんはと言うと、赤点ばかりで追試と居残り授業を受けなくてはならなくなっていた。
「これに懲りて普段からちゃんと勉強しんさいよ」
「わかったよ」
「付け焼き刃のコピーじゃだめってことだよ」
しゅんはしかめっ面をして肩を落とした。放課後は居残り授業と追試が当分待っている。
ともみは放課後の部活の再開を喜んだ。
走りながらテニス部のこうき君の様子を伺った。
こうきの周りの取り巻きテニスギャル達が気になる。テニス部に入っときゃ良かったかなあ。
陸上部の男子よりも足速いんだもんなあ。
部活が終わってあけみちゃんと自転車置き場に向かった。
「ワタナベ君、いないね」
「そだね」
「もう待ち伏せしないのかな。いい組み合わせだと思ってたんだけどなあ」
「やだ、やめてよ。あけみちゃん。待ち伏せしていたわけじゃないと思うよ。偶然だよ。偶然」
何となく寂しい気もしたが、しゅんくんにはノートをコピーさせてあげてただけだという事はワタナベ君には説明しておいた。勘違いはされてないはず。ただ納得はしてないみたいだった。
いつもならワタナベ君とバイバイする別れ道。
ともみは上り坂で自転車を押しながらワタナベ君の事を考えた。もしかしてわたしの事好きだったのかな。だとしても何も言わなかったら分からないよね。
そんな事を考えていると、道の脇の草むらがガサガサと音を立てた。
何か動物がいる。
イノシシか何かだろうか。
足を止めて様子を伺う。
ぱっと現れたのはしゅんだった。制服はホコリだらけだった。ところどころに草とかも着いている。
ともみはイノシシでなくてほっとしていた。
「な、なんでそんなところから現れるの」
「なんだ。ともちゃんか。そう言えば家こっちだったよね。この辺穴場なんだよね」
「なんの穴場?それにその手に持ってるものは何?」
しゅんは透明なプラスチックの瓶を隠すようにカバンの中にしまった。
「何か生き物が入ってなかった?」
「うん。虫捕まえてたんだ」
「なんの虫?」
「ん、ちょっと凶暴なやつ」
「見たい見たい」
「ひくよ」
「いいから、いいから」
しゅんが見せてくれたものにともみは本当にひいた。
「こ、これって」
「そう。オオスズメバチ」
スズメバチは透明なプラスチックの瓶の中で暴れている。それはまるで映画のジュラシックパークのように思えた。出てきたらとても危険だ。
「一体なんのために」
「観察したり動画を撮ったり、あとは標本にする。俺はこのような複雑な形は生物学的に美しいと思うんだ。ほら、この足の形見てよ。それにこんな薄い羽でものすごいスピードで飛ぶんやで」
しゅんは流暢にオオスズメバチの特徴を説明する。あらためて見ると鬼のような顔をしている。
噛まれそう。怖い。顔がこわばる。
しかし、しゅんは何か想像のひとつ上を超えてくる。勉強も部活もやる気ないくせに、興味あることには夢中になってものすごく人を驚かせる。
「やっぱり、こんなのあまり興味無いか」そう言ってしゅんはカバンにさっさとしまった。
「それよりさあ、これから蛍を捕まえに行くんだけど、一緒に行かない?きれいだよ。そこの藤井川ってところにいっぱいいるんだ」
「え、行きたい行きたい」
「ただ、もう少し暗くならないと見えないんだよな」
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