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第一章 運命の人
憧れは足の速いこうき君
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その日の放課後の練習は筋肉痛できつかった。負けず嫌いのともみは痛い体に鞭を打って走った。しかし、前日よりも先輩方からの遅れが酷くなった。筋肉痛なんて数日すればなくなる。それまでの我慢だ。そのときもっと速くなってるはず。そう信じて歯を食いしばって練習についていった。
余裕があれば他の部活のイケメンでも物色しながら走るのに。そんな事を考えていると、ふとしゅんの事が頭をよぎった。あいつは部活はしてないんだろうか。そう言えば昨日も今日も授業が終わったらさっさと帰っていったなあ。
ともみの脳裏に一緒に帰っていた女の子の映像が浮かんだ。
彼女さんだろうか。
意外とモテるのかな。
部活が終わりあけみちゃんと談笑しながら自転車置き場に向かうと、ワタナベ君がいた。
「ともちん。一緒にかえろ」
「う、うん」
え、毎日一緒に帰る気なのかな。
断る理由もないし。
「じゃあね。バイバイ」とあけみちゃんは邪魔しないようにという感じで帰っていく。
「バイバイ」とあけみちゃんに手を振る。
ワタナベ君の顔を見ると笑えてきた。
夢の中でキスされたなんて誰にも言えない。
こんなうぶな人がキスを迫ってくるはずがない。
ただ、高校の制服に変わったせいか、ワタナベ君は少しだけ大人びたような気がする。
それにともみの横に立つと、思っていたよりも背が高くてがっしりしていることに気づいた。
ワタナベ君はともみの自転車のすぐ後方を走った。坂を下って登って下ったところでバイバイをした。ともみは疲れていので悪いなと思ったけど一言も話しかけなかった。それでもワタナベ君は満足そうに帰って行った。
護衛かよ。と心の中でつっこんだ。
ともみは家までの坂道を自転車を押しながら歩いた。筋肉痛で自転車に乗って上がる気力はなかった。
ふと後ろに人の気配がしたので振り返ったが誰もいなかった。
ただ街並みが夕焼けに染まっていた。
帰宅するとご飯を食べて風呂に入って学校の課題をこなした。そうするともう寝る時間だった。全然他のことをする余裕が無い。
そんなふうにしてともみの高校の日々は過ぎていた。
相変わらず隣の席のしゅんくんはノートや鉛筆を忘れてくるし、授業もまともに受けていない。先生からは目をつけられる始末だ。
ワタナベ君は自転車置き場で待っていて毎日護衛をしてくれる。あんまり喋らないので何を考えているのか分からない。ともみはワタナベ君にはうっすらと壁を作っていた。
あけみちゃんとはクラスも部活も一緒なので仲良くなった。ただ、彼女は次元が違う。もう数名の男子(しかもイケメン)から告白されたのだ。
ともみはもちろん一緒に喜んだが、一人ぐらいわたしがいいというイケメンはおらんのかとも思った。
そんな折、体育の授業で体育テストがあった。ともみは陸上部の面子にかけて、1500メートル走は学年1位のタイムで走った。ただ、50メートル走は学年で5位だった。短距離走のあけみちゃんに負けるのはともかく、他の部の女子にも負けてしまったのが悔しかった。
それよりも男子の50メートル走は同じクラスのこうき君が学年1位だった。
ともみは昔から足の速い男の子に憧れる癖があり、当然こうき君も気になった。
練習中にも走りながらテニス部のこうき君の姿を見ていた。テニスの事はよく分からないが、コートの中を走り回ってボールを打ち返す姿はかっこよく感じた。同じクラスだし、いつか仲良くなれるといいなあと妄想を膨らませた。
余裕があれば他の部活のイケメンでも物色しながら走るのに。そんな事を考えていると、ふとしゅんの事が頭をよぎった。あいつは部活はしてないんだろうか。そう言えば昨日も今日も授業が終わったらさっさと帰っていったなあ。
ともみの脳裏に一緒に帰っていた女の子の映像が浮かんだ。
彼女さんだろうか。
意外とモテるのかな。
部活が終わりあけみちゃんと談笑しながら自転車置き場に向かうと、ワタナベ君がいた。
「ともちん。一緒にかえろ」
「う、うん」
え、毎日一緒に帰る気なのかな。
断る理由もないし。
「じゃあね。バイバイ」とあけみちゃんは邪魔しないようにという感じで帰っていく。
「バイバイ」とあけみちゃんに手を振る。
ワタナベ君の顔を見ると笑えてきた。
夢の中でキスされたなんて誰にも言えない。
こんなうぶな人がキスを迫ってくるはずがない。
ただ、高校の制服に変わったせいか、ワタナベ君は少しだけ大人びたような気がする。
それにともみの横に立つと、思っていたよりも背が高くてがっしりしていることに気づいた。
ワタナベ君はともみの自転車のすぐ後方を走った。坂を下って登って下ったところでバイバイをした。ともみは疲れていので悪いなと思ったけど一言も話しかけなかった。それでもワタナベ君は満足そうに帰って行った。
護衛かよ。と心の中でつっこんだ。
ともみは家までの坂道を自転車を押しながら歩いた。筋肉痛で自転車に乗って上がる気力はなかった。
ふと後ろに人の気配がしたので振り返ったが誰もいなかった。
ただ街並みが夕焼けに染まっていた。
帰宅するとご飯を食べて風呂に入って学校の課題をこなした。そうするともう寝る時間だった。全然他のことをする余裕が無い。
そんなふうにしてともみの高校の日々は過ぎていた。
相変わらず隣の席のしゅんくんはノートや鉛筆を忘れてくるし、授業もまともに受けていない。先生からは目をつけられる始末だ。
ワタナベ君は自転車置き場で待っていて毎日護衛をしてくれる。あんまり喋らないので何を考えているのか分からない。ともみはワタナベ君にはうっすらと壁を作っていた。
あけみちゃんとはクラスも部活も一緒なので仲良くなった。ただ、彼女は次元が違う。もう数名の男子(しかもイケメン)から告白されたのだ。
ともみはもちろん一緒に喜んだが、一人ぐらいわたしがいいというイケメンはおらんのかとも思った。
そんな折、体育の授業で体育テストがあった。ともみは陸上部の面子にかけて、1500メートル走は学年1位のタイムで走った。ただ、50メートル走は学年で5位だった。短距離走のあけみちゃんに負けるのはともかく、他の部の女子にも負けてしまったのが悔しかった。
それよりも男子の50メートル走は同じクラスのこうき君が学年1位だった。
ともみは昔から足の速い男の子に憧れる癖があり、当然こうき君も気になった。
練習中にも走りながらテニス部のこうき君の姿を見ていた。テニスの事はよく分からないが、コートの中を走り回ってボールを打ち返す姿はかっこよく感じた。同じクラスだし、いつか仲良くなれるといいなあと妄想を膨らませた。
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