4 / 25
第一章 運命の人
ワタナベ君とキスする夢、本当の元幼馴染
しおりを挟む
ともみが振り向くと、ワタナベ君の顔が迫ってきてキスをされる。
噛まれて唇が痛い。
そ、そんな大人なテクニックをワタナベ君が!?
「きゃー」と、目を覚ますとコロがともみの唇をついばんでいた。
「いててて。あ、もうこんな時間」
ともみはのそりと起きた。体中が筋肉痛で痛い。久々の練習のせいだ。婆さんのような歩き方で洗面台に向かう。
「ともちゃん、おはよう。おはよう」
「おはよう」と一応小鳥たちに挨拶する。
自分が教えた言葉を真似してるだけなんだけどな。
しかし、ワタナベ君とキスをする夢を見るなんて、彼を異性として意識している証拠なのだろうか。いやあ。まずいなあ。あんなリアルな夢。ワタナベ君の顔を見たら笑ってしまうよ。
まだ眠たい目を擦りながら、歯を磨く。
朝がいちばん辛いよなー。
ともかく時間が無いのでさっさと朝ごはんをすませて登校することにする。
「忘れ物しないよー」と母親が聞いてくる。
「わかってるー」
外に出て自転車に乗ると、下り坂を下った。
「下りは楽ちん。楽ちん」
隣の席の子になんて聞こうかな。
「きみ、もしかして村上しゅんくん?わたしのこと覚えてる?」
いや、馴れ馴れしすぎるか。
「きみ、もしかして村上しゅんくん?のぞみが丘保育園に行ってなかった?」
こっちの方がいいか。
まあ、わたしにとっては誰かいつの間にか転校して行ったなあ位しか記憶ないけどね。でも、なんか名前だけは聞き覚えがあるんだよね。
教室に着くと早速隣の机を確認した。
隣の子はまだ来てない。
て、まだ来てないんかーい。
始業まで1分もない。
もう来ないと遅刻だぞ。
ともみはソワソワした。もう遅刻じゃん。
結局、始業のベルがなっても隣の彼は来なかった。
一限目の数学の先生が入ってきた。隣の席が空席なのは既にバレている。
「そこの席は誰だったかな?」先生は名簿で名前を確認している。
「よくわからんな。誰か知らんか?」
誰も応えない。
「そうか。入学したてでお互いによく知らんよな。出欠を取るか」
そう言って先生はあいうえお順に名前を呼んでいった。
「ムラカミシンジ」「はい」
あのガリ勉くんはシンジくんだったのかとともみは思った。
「ムラカミシュン」ついに本命の名前が呼ばれた。
誰も返事をしない。
先生がもう一度名前を呼ぶ。
「ムラカミシュン」
返事は無い。
「こいつか」と先生が名簿に遅刻の印をつけようとした時、教室の扉がガラガラと開いた。
そこにはボサボサ頭の彼が立っていた。
「おはようございます」と彼は苦い顔をして言った。
その仕草を見て教室のみんなが笑った。
「ムラカミシュン。遅刻だぞ」
「はい」
「謝ればギリギリセーフにしてやってもいいぞ」
「いえ。大丈夫です。遅刻よりも大事な事をしていました」
笑いが起きた。
「そうか。春眠暁を覚えずと言うが、残念ながら今は数学の時間だ」先生はカマキリのように彼をにらんだ。そして遅刻のマークを名簿に書き込んだ。彼は間違いなく先生の印象を悪くした。
授業が終わってともみは隣の席の彼に声をかけた。
「きみ、村上しゅんくんだよね」
「うん」
「もしかして、のぞみが丘保育園に通ってた?」
「かもしんない」しゅんは興味無さそうに言った。
「それよりもさ。昨日のノートと鉛筆貸してくれない?」
「え、いいけどさ。また忘れたの?」
「うん」
ともみが昨日のノートと鉛筆を渡すとしゅんはすぐにノートに絵を描き始めた。桜の枝と花びらとそして、そこには芽吹き始めた葉が描かれていった。その絵は間違いなく生きているし、風に揺れているよえにも見えた。それは一高校生の描く絵のレベルをはるかに超えていた。ともみはその絵を描くしゅんの瞳に吸い込まれていた。これほどまでにギラギラと生命力溢れる目を見たのは初めてだった。
「ねえ、もしかして遅刻した理由って桜を見ていたの?」
「ああ。もう桜も散っちゃうじゃろ。それによく見てたら葉っぱが出てきてるし。そしたらさあ、花びらがまるで婆さんに見えてきちゃってさ。ピンク色の婆さん」
ともみは何を言っているかよく分からなかったが笑ってしまった。
結局しゅんくんは残りの授業の間中ノートに何かを描いていた。
消しゴムと鉛筆削りも借り出されていた。
その日の授業が終わった後、しゅんは
「ありがとう」と言ってノートを返してきた。
「いや。あの。その。そのノートあげるから」
「それは悪いから」
そう言ってしゅんはノートと筆記用具一式を返してきた。
「しゅんくんさ、私のこと覚えてる?」
「え?」
「保育園の時一緒だったんだよ」
しゅんはともみの顔をまじまじと見た。
「ごめん。覚えてないや」
「だろうねえ」
「ごめんなさい」としゅんくんは歯を噛み締めた。
「いや。そんなに気にしてないから。私も君の亊大して覚えてないし。ただ、これからは元幼馴染としてよろしく」とともみは手を差し出した。
しゅんはその手をとり「よろしく」と言ってはにかんだ。
ともみはその手が触れた瞬間、電流が走ったように感じた。離したくないと感じたが、ほんのの数秒後にはふたつの手は離れていた。
「じゃあ、また明日」と言ってしゅんくんは教室を出て行った。その先には昨日の女の子が待っていた。
ともみは先程のセリフを思い出して恥ずかしくなっていた。
「元幼馴染としてよろしく」ってなんじゃ。なんで上から目線なん。うわっ。ぜったい口にしてはいけないセリフを吐いてしまった。
噛まれて唇が痛い。
そ、そんな大人なテクニックをワタナベ君が!?
「きゃー」と、目を覚ますとコロがともみの唇をついばんでいた。
「いててて。あ、もうこんな時間」
ともみはのそりと起きた。体中が筋肉痛で痛い。久々の練習のせいだ。婆さんのような歩き方で洗面台に向かう。
「ともちゃん、おはよう。おはよう」
「おはよう」と一応小鳥たちに挨拶する。
自分が教えた言葉を真似してるだけなんだけどな。
しかし、ワタナベ君とキスをする夢を見るなんて、彼を異性として意識している証拠なのだろうか。いやあ。まずいなあ。あんなリアルな夢。ワタナベ君の顔を見たら笑ってしまうよ。
まだ眠たい目を擦りながら、歯を磨く。
朝がいちばん辛いよなー。
ともかく時間が無いのでさっさと朝ごはんをすませて登校することにする。
「忘れ物しないよー」と母親が聞いてくる。
「わかってるー」
外に出て自転車に乗ると、下り坂を下った。
「下りは楽ちん。楽ちん」
隣の席の子になんて聞こうかな。
「きみ、もしかして村上しゅんくん?わたしのこと覚えてる?」
いや、馴れ馴れしすぎるか。
「きみ、もしかして村上しゅんくん?のぞみが丘保育園に行ってなかった?」
こっちの方がいいか。
まあ、わたしにとっては誰かいつの間にか転校して行ったなあ位しか記憶ないけどね。でも、なんか名前だけは聞き覚えがあるんだよね。
教室に着くと早速隣の机を確認した。
隣の子はまだ来てない。
て、まだ来てないんかーい。
始業まで1分もない。
もう来ないと遅刻だぞ。
ともみはソワソワした。もう遅刻じゃん。
結局、始業のベルがなっても隣の彼は来なかった。
一限目の数学の先生が入ってきた。隣の席が空席なのは既にバレている。
「そこの席は誰だったかな?」先生は名簿で名前を確認している。
「よくわからんな。誰か知らんか?」
誰も応えない。
「そうか。入学したてでお互いによく知らんよな。出欠を取るか」
そう言って先生はあいうえお順に名前を呼んでいった。
「ムラカミシンジ」「はい」
あのガリ勉くんはシンジくんだったのかとともみは思った。
「ムラカミシュン」ついに本命の名前が呼ばれた。
誰も返事をしない。
先生がもう一度名前を呼ぶ。
「ムラカミシュン」
返事は無い。
「こいつか」と先生が名簿に遅刻の印をつけようとした時、教室の扉がガラガラと開いた。
そこにはボサボサ頭の彼が立っていた。
「おはようございます」と彼は苦い顔をして言った。
その仕草を見て教室のみんなが笑った。
「ムラカミシュン。遅刻だぞ」
「はい」
「謝ればギリギリセーフにしてやってもいいぞ」
「いえ。大丈夫です。遅刻よりも大事な事をしていました」
笑いが起きた。
「そうか。春眠暁を覚えずと言うが、残念ながら今は数学の時間だ」先生はカマキリのように彼をにらんだ。そして遅刻のマークを名簿に書き込んだ。彼は間違いなく先生の印象を悪くした。
授業が終わってともみは隣の席の彼に声をかけた。
「きみ、村上しゅんくんだよね」
「うん」
「もしかして、のぞみが丘保育園に通ってた?」
「かもしんない」しゅんは興味無さそうに言った。
「それよりもさ。昨日のノートと鉛筆貸してくれない?」
「え、いいけどさ。また忘れたの?」
「うん」
ともみが昨日のノートと鉛筆を渡すとしゅんはすぐにノートに絵を描き始めた。桜の枝と花びらとそして、そこには芽吹き始めた葉が描かれていった。その絵は間違いなく生きているし、風に揺れているよえにも見えた。それは一高校生の描く絵のレベルをはるかに超えていた。ともみはその絵を描くしゅんの瞳に吸い込まれていた。これほどまでにギラギラと生命力溢れる目を見たのは初めてだった。
「ねえ、もしかして遅刻した理由って桜を見ていたの?」
「ああ。もう桜も散っちゃうじゃろ。それによく見てたら葉っぱが出てきてるし。そしたらさあ、花びらがまるで婆さんに見えてきちゃってさ。ピンク色の婆さん」
ともみは何を言っているかよく分からなかったが笑ってしまった。
結局しゅんくんは残りの授業の間中ノートに何かを描いていた。
消しゴムと鉛筆削りも借り出されていた。
その日の授業が終わった後、しゅんは
「ありがとう」と言ってノートを返してきた。
「いや。あの。その。そのノートあげるから」
「それは悪いから」
そう言ってしゅんはノートと筆記用具一式を返してきた。
「しゅんくんさ、私のこと覚えてる?」
「え?」
「保育園の時一緒だったんだよ」
しゅんはともみの顔をまじまじと見た。
「ごめん。覚えてないや」
「だろうねえ」
「ごめんなさい」としゅんくんは歯を噛み締めた。
「いや。そんなに気にしてないから。私も君の亊大して覚えてないし。ただ、これからは元幼馴染としてよろしく」とともみは手を差し出した。
しゅんはその手をとり「よろしく」と言ってはにかんだ。
ともみはその手が触れた瞬間、電流が走ったように感じた。離したくないと感じたが、ほんのの数秒後にはふたつの手は離れていた。
「じゃあ、また明日」と言ってしゅんくんは教室を出て行った。その先には昨日の女の子が待っていた。
ともみは先程のセリフを思い出して恥ずかしくなっていた。
「元幼馴染としてよろしく」ってなんじゃ。なんで上から目線なん。うわっ。ぜったい口にしてはいけないセリフを吐いてしまった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる