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エスタ王国
不覚にもかっこいい
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黒い大きな弾丸はどんどん飛距離を伸ばして敵船に向かっていった。
しかし、勢いが良すぎて敵船の上を通り越し、向こう側の海に着水して大きな水しぶきを上げた。
大砲の弾丸が届かないと思っていた敵は驚いてすぐさま錨を上げはじめた。
それを見たシルバンは鋭い目でにらみつけると、サーベルを抜いた。
「全発射!」
そう言ってシルバンがサーベルを敵に向けて大きく振ると、全ての大砲から弾丸が発射された。
海水が次々と白い水柱を上げて連なった。それはまるで水で作った壁のようだった。
その勢いで波が立ち敵船を大きく揺らした。
この一連の攻撃はとてつもない脅威を敵に与えた。
間違いなく当てるつもりで飛んでいく多数の弾丸は迫力が違った。
こんな弾丸を一発でも受けたらひとたまりもない。想像していた以上の戦力に敵は怯んだ。
無駄に戦争をするのは得策でないと判断したのであろう。
敵は船首を沖の方に向けて走り始めた。
「敵が逃げていくぞー!」
兵士たちが歓声をあげた。
敵船はどんどん遠ざかりやがて見えなくなった。
シルバンの軍服は青くてちょうど今日の海面のようにキラキラと輝いていた。
「まだ油断をするな。交代で海上を監視しろ」
シルバンは兵士たちに適確に指示を与え終わると踵を返してアスカとイル博士のいる方に近づいてきた。
「ご覧の通り敵は逃げていきました。我々も引き上げましょう」そう言うと颯爽と馬にまたがった。
その姿を見てアスカは不覚にもカッコイイと思ってしまった。
北方三国が撤退してから、しばらくは平穏な日々が訪れた。北方三国も無駄な争いを行うことは避けたのだろう。
ただ、不戦条約は結ばれていなかったので、いつ攻めてくるかもしれない。エスタ王国は近くの島に監視台を設置して不審な舟が現れたら直ぐに狼煙をあげて伝達するようにした。
アスカは宮殿で窮屈な礼儀作法を覚える日々を送った。食事や儀式、社交ダンス等、アスカにとっては苦手な事が多かった。
ただ、王子にふさわしい最低限の所作を身につけるために必死に努力をした。そうしていると、いつの間にか社交的な場所も慣れてきて苦ではなくなってきた。少しは高貴な場所でそれなりの振る舞いを注意されずにできるくらいにはなってきた。
アスカにとっては、歌は上手くはないけど、カラオケで一曲くらいは歌うような感覚であった。
ダンスは下手だけど盆踊りくらいは見よう見まねで踊れるのと一緒だ。
なんとかなるものである。
そんな折、宮殿でパーティが催された。
アスカはできるだけ目立たないようにテーブルで食事をしながらワインを飲んでいた。
ピザをつまみながら日本食が食べたいなあなんて思っていたら、シルバンが来た。
「アスカ、ダンスを踊ろうよ」
「嫌よ。目立ちたくないんだから」
シルバンは日に日にアスカに馴れ馴れしくなっていた。
正直、うっとうしかった。
こんな女好きでナンパな男は好みではない。一途で真っ直ぐなたくましい男がいい。
シルバンは「そんなこと言わずに」と言ってアスカの手を取った。
「貴方には仲良い女の子が沢山いるじゃない」
そう言ってアスカは手を払った。
現に、シルバンの周りには綺麗な令嬢たちが話しかける機会を伺っている。
しかし、勢いが良すぎて敵船の上を通り越し、向こう側の海に着水して大きな水しぶきを上げた。
大砲の弾丸が届かないと思っていた敵は驚いてすぐさま錨を上げはじめた。
それを見たシルバンは鋭い目でにらみつけると、サーベルを抜いた。
「全発射!」
そう言ってシルバンがサーベルを敵に向けて大きく振ると、全ての大砲から弾丸が発射された。
海水が次々と白い水柱を上げて連なった。それはまるで水で作った壁のようだった。
その勢いで波が立ち敵船を大きく揺らした。
この一連の攻撃はとてつもない脅威を敵に与えた。
間違いなく当てるつもりで飛んでいく多数の弾丸は迫力が違った。
こんな弾丸を一発でも受けたらひとたまりもない。想像していた以上の戦力に敵は怯んだ。
無駄に戦争をするのは得策でないと判断したのであろう。
敵は船首を沖の方に向けて走り始めた。
「敵が逃げていくぞー!」
兵士たちが歓声をあげた。
敵船はどんどん遠ざかりやがて見えなくなった。
シルバンの軍服は青くてちょうど今日の海面のようにキラキラと輝いていた。
「まだ油断をするな。交代で海上を監視しろ」
シルバンは兵士たちに適確に指示を与え終わると踵を返してアスカとイル博士のいる方に近づいてきた。
「ご覧の通り敵は逃げていきました。我々も引き上げましょう」そう言うと颯爽と馬にまたがった。
その姿を見てアスカは不覚にもカッコイイと思ってしまった。
北方三国が撤退してから、しばらくは平穏な日々が訪れた。北方三国も無駄な争いを行うことは避けたのだろう。
ただ、不戦条約は結ばれていなかったので、いつ攻めてくるかもしれない。エスタ王国は近くの島に監視台を設置して不審な舟が現れたら直ぐに狼煙をあげて伝達するようにした。
アスカは宮殿で窮屈な礼儀作法を覚える日々を送った。食事や儀式、社交ダンス等、アスカにとっては苦手な事が多かった。
ただ、王子にふさわしい最低限の所作を身につけるために必死に努力をした。そうしていると、いつの間にか社交的な場所も慣れてきて苦ではなくなってきた。少しは高貴な場所でそれなりの振る舞いを注意されずにできるくらいにはなってきた。
アスカにとっては、歌は上手くはないけど、カラオケで一曲くらいは歌うような感覚であった。
ダンスは下手だけど盆踊りくらいは見よう見まねで踊れるのと一緒だ。
なんとかなるものである。
そんな折、宮殿でパーティが催された。
アスカはできるだけ目立たないようにテーブルで食事をしながらワインを飲んでいた。
ピザをつまみながら日本食が食べたいなあなんて思っていたら、シルバンが来た。
「アスカ、ダンスを踊ろうよ」
「嫌よ。目立ちたくないんだから」
シルバンは日に日にアスカに馴れ馴れしくなっていた。
正直、うっとうしかった。
こんな女好きでナンパな男は好みではない。一途で真っ直ぐなたくましい男がいい。
シルバンは「そんなこと言わずに」と言ってアスカの手を取った。
「貴方には仲良い女の子が沢山いるじゃない」
そう言ってアスカは手を払った。
現に、シルバンの周りには綺麗な令嬢たちが話しかける機会を伺っている。
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