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エスタ王国
黄金の国ジャポン 白い恋人
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その頃、シルバン王子はイル博士の部屋にいた。
「イル博士、アスカの住んでた島国は『ニホン』というらしいよ。何か知ってる?」
「はて、『ニホン』か。調べたところ、アスカが地図で示してた国は『ジャポン』というらしいのじゃが。なにか少し違うな」
「ジャポン? ニホンと何となく似てない? 僕の聞き間違えかな。それはどんな国?」
「何やら『ニンジャ』とか『サムライ』という武装勢力がいてとても危険な国だそうじゃ。それと黄金が沢山あるらしい。ほら、この最新の百科事典に載っている」
そこには刀を持ったニンジャとサムライの絵、そして数々の財宝や芸術品が描かれていた。
「すげえな。いつか行ってみたいな。みんな黒髪だし、アスカはこの島国から来たに間違いない気がする。もしかしたらアスカはこの島国のお姫様かもしれない」
「その可能性は高いな。今日授業をしていて感んじたのじゃが、アスカはかなりの教育を受けていると思われる。あの様子ではただの庶民ではあるまい。何しろあの時計を持っていたのじゃ」
「だとしたら、アスカと友好関係を作っておくのは確実にこの国の利益になる…か」
「そうじゃ。アスカを無下に扱ったらニンジャやサムライと戦う事になるかもしれないぞ。気をつけねばならん」
「そっか。なら、僕はもっとアスカと仲良くなって情報を引き出すよ」
「シルバン王子、くれぐれも油断せぬように。アスカはスパイの可能性もあるのじゃ。決して心を許すではないぞ」
「分かっているよ。イル博士。僕はこう見えてもそんなやわな男じゃない」
次の日の朝、アスカはペルーラがたいそう美人な白猫と仲良く歩いているのを見かけたのだ。恥ずかしくなるほどベタベタとしている。ハートマークが2、3個浮き上がってきそうなほどラブラブしていた。
「ははーん。ペルーラのやつ、恋人ができたのか。だからこの国から動きたくないんだ。後で問い詰めてやろ」
アスカは何となくペルーラのためにこの国で我慢してみようかと思いながら宮殿に向かった。
「なにをニタニタしながら歩いてるのよ。もっと上品な笑い方をしなさい!」
いきなり手厳しくルシアンヌ皇后に怒られてしまった。いつもと同じように食事のマナーから会釈の仕方などみっちりと厳しく指導された。
「アスカ、あなたには、妃になる覚悟がありません! 見てみなさい。キャロルの方がよっぽど気品にあふれているわ」
それは言わないで。そんなのわかっているわよ。誰が見てもキャロルの方が王子にお似合いよ。
アスカは心の中で悲鳴をあげていた。
そして、午後からはイル博士の授業。この時、シルバン王子が隣の席にからアスカに馴れ馴れしく話しかけてくる。
「やあ、アスカ。今日も一緒に帰ろうか」
「あんまり馴れ馴れしくしないでよ」
「なんで?」
「みんなが白い目で見るから」
「そんなの気にしない。気にしない。ところでさ、アスカの生まれた国って『ニホン』じゃなくて、『ジャポン』じゃない?」
「うーん、たしかに『ジャポン』とも言うこともあるわね」
「ニンジャやサムライはいる?」
「いるというか、いたけど」
「やっぱり!」
シルバン王子は目を輝かせた。
教室のみんなはシルバン王子とアスカが仲良く話しているのが面白くない。
「何でシルバン王子まであの女に愛想振りまいているのよ」そんな囁き声が聞こえてくる。
アスカはやはりこの国から脱走しようと心に誓った。
「イル博士、アスカの住んでた島国は『ニホン』というらしいよ。何か知ってる?」
「はて、『ニホン』か。調べたところ、アスカが地図で示してた国は『ジャポン』というらしいのじゃが。なにか少し違うな」
「ジャポン? ニホンと何となく似てない? 僕の聞き間違えかな。それはどんな国?」
「何やら『ニンジャ』とか『サムライ』という武装勢力がいてとても危険な国だそうじゃ。それと黄金が沢山あるらしい。ほら、この最新の百科事典に載っている」
そこには刀を持ったニンジャとサムライの絵、そして数々の財宝や芸術品が描かれていた。
「すげえな。いつか行ってみたいな。みんな黒髪だし、アスカはこの島国から来たに間違いない気がする。もしかしたらアスカはこの島国のお姫様かもしれない」
「その可能性は高いな。今日授業をしていて感んじたのじゃが、アスカはかなりの教育を受けていると思われる。あの様子ではただの庶民ではあるまい。何しろあの時計を持っていたのじゃ」
「だとしたら、アスカと友好関係を作っておくのは確実にこの国の利益になる…か」
「そうじゃ。アスカを無下に扱ったらニンジャやサムライと戦う事になるかもしれないぞ。気をつけねばならん」
「そっか。なら、僕はもっとアスカと仲良くなって情報を引き出すよ」
「シルバン王子、くれぐれも油断せぬように。アスカはスパイの可能性もあるのじゃ。決して心を許すではないぞ」
「分かっているよ。イル博士。僕はこう見えてもそんなやわな男じゃない」
次の日の朝、アスカはペルーラがたいそう美人な白猫と仲良く歩いているのを見かけたのだ。恥ずかしくなるほどベタベタとしている。ハートマークが2、3個浮き上がってきそうなほどラブラブしていた。
「ははーん。ペルーラのやつ、恋人ができたのか。だからこの国から動きたくないんだ。後で問い詰めてやろ」
アスカは何となくペルーラのためにこの国で我慢してみようかと思いながら宮殿に向かった。
「なにをニタニタしながら歩いてるのよ。もっと上品な笑い方をしなさい!」
いきなり手厳しくルシアンヌ皇后に怒られてしまった。いつもと同じように食事のマナーから会釈の仕方などみっちりと厳しく指導された。
「アスカ、あなたには、妃になる覚悟がありません! 見てみなさい。キャロルの方がよっぽど気品にあふれているわ」
それは言わないで。そんなのわかっているわよ。誰が見てもキャロルの方が王子にお似合いよ。
アスカは心の中で悲鳴をあげていた。
そして、午後からはイル博士の授業。この時、シルバン王子が隣の席にからアスカに馴れ馴れしく話しかけてくる。
「やあ、アスカ。今日も一緒に帰ろうか」
「あんまり馴れ馴れしくしないでよ」
「なんで?」
「みんなが白い目で見るから」
「そんなの気にしない。気にしない。ところでさ、アスカの生まれた国って『ニホン』じゃなくて、『ジャポン』じゃない?」
「うーん、たしかに『ジャポン』とも言うこともあるわね」
「ニンジャやサムライはいる?」
「いるというか、いたけど」
「やっぱり!」
シルバン王子は目を輝かせた。
教室のみんなはシルバン王子とアスカが仲良く話しているのが面白くない。
「何でシルバン王子まであの女に愛想振りまいているのよ」そんな囁き声が聞こえてくる。
アスカはやはりこの国から脱走しようと心に誓った。
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