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エスタ王国
国民から嫌われているアスカ
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「キャロルは兄貴と仲のいい幼馴染みなんだ。そして、いつかは兄貴と結婚するだろうとみんな思ってたのさ」
「あなたの兄貴って、エドワルド王子の事?」
「そう。そこへ君が急に現れたってわけ。兄貴は顧問所の言い伝えの通り君と結婚すると言い始めたから、キャロルはショックを受けている」
「そ、そうなの・・・」
アスカはエドワルド王子にはあの高貴な微笑のキャロルの方がよっぽど王子には似合っていると思った。
「俺が兄貴の立場だったら、二人と結婚するけどなあ。兄貴は真面目なんだよなあ」
「は? あなたって最低ね」
「この国は一夫多妻制は認められているんだぜ。問題ないだろ」
「そういう問題じゃないのっ!」
「それにさあ、君はキャロルに嫌われているだけじゃない。この国ではみんなから嫌われている。兄貴は君のところに向かった事で行方不明になったわけだからね。兄貴はこの国ではたいそう人気があったんだ」
「そんなこと、あなたに言われなくても分かってるわよ。私だって、私だって・・・」
アスカは悲しくて今にも泣きだしそうな顔になった。好き好んでエドワルド王子を危険にさらしたのでは無い。アスカはその事にはとても責任を感じていた。
「ご、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。僕は君の味方だよ。何かあったら相談して欲しい」
「私は、この国に居てはいけないの。どこか私の行ける場所はないかしら」
「アスカ、待てよ。みんなはまだ気づいてないけど、アスカはこの国に必要なんだ。古文書にも書いてあるし」
「いい加減にして。古文書、古文書って!私は普通に暮らしたいだけ。出来ればもといた場所に戻りたい」
「もといた場所ってどこだよ」
「日本よ」
「日本? 聞いたことないな。イル博士に聞いてみるよ。イル博士ならきっと何とかしてくれるはずだ」
「ほんと?」
「ああ、だからそれまでは何とかこの国にいてよ」
「・・・」
「わかったね。僕は早速イル博士に聞いてくる。また明日ね。バイバイ」
シルバン王子はなにか思いついたのか急いで宮殿の方に向かっていった。
アスカは宿舎の方に向かって歩きはじめた。
お腹はペコペコだった。
しばらくすると、数人の少年がアスカの前に現れた。
「エドワルド王子を返せ!」
「そうだ!」
「僕達の王子だぞ」
少年たちは悔しそうな顔でアスカを睨みつけている。少年達がエドワルド王子をとても慕っているのがわかる。
背後には村人達が冷たい視線でアスカを見ていた。この人たちもエドワルド王子が行方不明になっていることを悲しんでいる。
「ごめんなさい」アスカは謝るしかなかった。
ここには私の居場所はない。アスカは怖くなって宿舎の方に早歩きで帰った。
「あなたの兄貴って、エドワルド王子の事?」
「そう。そこへ君が急に現れたってわけ。兄貴は顧問所の言い伝えの通り君と結婚すると言い始めたから、キャロルはショックを受けている」
「そ、そうなの・・・」
アスカはエドワルド王子にはあの高貴な微笑のキャロルの方がよっぽど王子には似合っていると思った。
「俺が兄貴の立場だったら、二人と結婚するけどなあ。兄貴は真面目なんだよなあ」
「は? あなたって最低ね」
「この国は一夫多妻制は認められているんだぜ。問題ないだろ」
「そういう問題じゃないのっ!」
「それにさあ、君はキャロルに嫌われているだけじゃない。この国ではみんなから嫌われている。兄貴は君のところに向かった事で行方不明になったわけだからね。兄貴はこの国ではたいそう人気があったんだ」
「そんなこと、あなたに言われなくても分かってるわよ。私だって、私だって・・・」
アスカは悲しくて今にも泣きだしそうな顔になった。好き好んでエドワルド王子を危険にさらしたのでは無い。アスカはその事にはとても責任を感じていた。
「ご、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。僕は君の味方だよ。何かあったら相談して欲しい」
「私は、この国に居てはいけないの。どこか私の行ける場所はないかしら」
「アスカ、待てよ。みんなはまだ気づいてないけど、アスカはこの国に必要なんだ。古文書にも書いてあるし」
「いい加減にして。古文書、古文書って!私は普通に暮らしたいだけ。出来ればもといた場所に戻りたい」
「もといた場所ってどこだよ」
「日本よ」
「日本? 聞いたことないな。イル博士に聞いてみるよ。イル博士ならきっと何とかしてくれるはずだ」
「ほんと?」
「ああ、だからそれまでは何とかこの国にいてよ」
「・・・」
「わかったね。僕は早速イル博士に聞いてくる。また明日ね。バイバイ」
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アスカは宿舎の方に向かって歩きはじめた。
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「エドワルド王子を返せ!」
「そうだ!」
「僕達の王子だぞ」
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背後には村人達が冷たい視線でアスカを見ていた。この人たちもエドワルド王子が行方不明になっていることを悲しんでいる。
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