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エスタ王国
イル博士の授業
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イル博士の授業は予想していたよりも面白かった。
授業内容はこの国の歴史や科学、芸術、経済、宗教など多岐にわたった。
もちろん、この国の歴史などは知らなかったが、中世ヨーロッパのようだった。
授業の雰囲気としては大学のようではあったが、科学や数学の内容としては高校レベルだなとアスカは思った。
イル博士がシルバン王子に質問した。
「久しぶりに出席しているシルバン王子。水を熱すると何になる?」
「お湯です」
「正解。ではお湯を熱し続けるとどうなる?」
「熱くなります」
「熱くなるのは分かっとる。何かが出てくるんじゃ。何が出てくる?」
「んー。分かりません」
「仕方ない。誰か他に分かるものは?」
シーンとして誰も答えられない。
「最も成績のよいキャロルにも答えられんかな?」
「す、水蒸気です」先程のブロンズの美少女が恥ずかしそうに答える。
「そう。水蒸気だ。この水蒸気が生み出す力をなんという? 誰か分かるかな?」
またしても教室はシーンと静まった。
「今日から入ったアスカはもしかして知っているかな」
アスカは急に当てられて面をくらいながら咄嗟に答えた。
「もしかして、気圧ですか」
「そう、正解じゃ」
「えっ!」教室の誰もが驚いた。どこから来た馬の骨とも分からないようなみすぼらしいアスカが良家の才女キャロルも答えられない最先端技術の質問に答えたのだ。
「よく分かったな。今や、この水蒸気から発生する気圧によってとてつもない力が使えるようになってきた。一節によると、水蒸気によって船や車まで動かすことが出来るらしい。今後は機械化の世の中が到来する。我がエステ王国も早く先端技術を取り入れないと遅れてしまうというわけじゃ」
アスカにとっては高校で習った知識だったが、ここでは最先端の技術らしい。どうやら、この世界は産業革命の真っ只中にいるようだ。
イル博士の授業を聞いていると、この世界の状況が少しづつ掴めてきた。
「今日の授業はここまで」そう言って、イル博士は本を閉じて教室を後にした。
「アスカ、すごいね」
授業が終わるとシルバン王子がすぐに話しかけてきた。
「え、ええ。たまたま覚えてたの」そう言いながらそそくさと教室を出た。
アスカは褒められて少し嬉しかったが、緊張の連続で疲れ果てていた。宮殿を出て一刻も早く部屋に帰って休みたかった。
「あんな事知っているなんてアスカはただものでは無いね」
シルバン王子がアスカの後をつけながら話しかけてくる。
「そうかな。たまたまよ」
「みんなはアスカの事を好きじゃないかもしれないけど、僕は君の事が気に入ったよ」
「え?」
「そんなに驚くなよ。僕は君に興味があるのさ。特別な意味は無いよ」
「そうじゃなくて、なんでみんなが私の事嫌っているの?」
「それは当然だよ」
「なんで、当然なのよ」
アスカは興奮していた。先程の勘は当たっていた。初対面で嫌われてるって意味が分からない。
「あのキャロルって子が原因さ」
「キャロルってあの美少女の事よね」
アスカは馴れ馴れしく話しかけてくるシルバン王子には自然とタメ口で話していた。明らかにシルバン王子のほうが年下というのもあるのかもしれない。
授業内容はこの国の歴史や科学、芸術、経済、宗教など多岐にわたった。
もちろん、この国の歴史などは知らなかったが、中世ヨーロッパのようだった。
授業の雰囲気としては大学のようではあったが、科学や数学の内容としては高校レベルだなとアスカは思った。
イル博士がシルバン王子に質問した。
「久しぶりに出席しているシルバン王子。水を熱すると何になる?」
「お湯です」
「正解。ではお湯を熱し続けるとどうなる?」
「熱くなります」
「熱くなるのは分かっとる。何かが出てくるんじゃ。何が出てくる?」
「んー。分かりません」
「仕方ない。誰か他に分かるものは?」
シーンとして誰も答えられない。
「最も成績のよいキャロルにも答えられんかな?」
「す、水蒸気です」先程のブロンズの美少女が恥ずかしそうに答える。
「そう。水蒸気だ。この水蒸気が生み出す力をなんという? 誰か分かるかな?」
またしても教室はシーンと静まった。
「今日から入ったアスカはもしかして知っているかな」
アスカは急に当てられて面をくらいながら咄嗟に答えた。
「もしかして、気圧ですか」
「そう、正解じゃ」
「えっ!」教室の誰もが驚いた。どこから来た馬の骨とも分からないようなみすぼらしいアスカが良家の才女キャロルも答えられない最先端技術の質問に答えたのだ。
「よく分かったな。今や、この水蒸気から発生する気圧によってとてつもない力が使えるようになってきた。一節によると、水蒸気によって船や車まで動かすことが出来るらしい。今後は機械化の世の中が到来する。我がエステ王国も早く先端技術を取り入れないと遅れてしまうというわけじゃ」
アスカにとっては高校で習った知識だったが、ここでは最先端の技術らしい。どうやら、この世界は産業革命の真っ只中にいるようだ。
イル博士の授業を聞いていると、この世界の状況が少しづつ掴めてきた。
「今日の授業はここまで」そう言って、イル博士は本を閉じて教室を後にした。
「アスカ、すごいね」
授業が終わるとシルバン王子がすぐに話しかけてきた。
「え、ええ。たまたま覚えてたの」そう言いながらそそくさと教室を出た。
アスカは褒められて少し嬉しかったが、緊張の連続で疲れ果てていた。宮殿を出て一刻も早く部屋に帰って休みたかった。
「あんな事知っているなんてアスカはただものでは無いね」
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「そうかな。たまたまよ」
「みんなはアスカの事を好きじゃないかもしれないけど、僕は君の事が気に入ったよ」
「え?」
「そんなに驚くなよ。僕は君に興味があるのさ。特別な意味は無いよ」
「そうじゃなくて、なんでみんなが私の事嫌っているの?」
「それは当然だよ」
「なんで、当然なのよ」
アスカは興奮していた。先程の勘は当たっていた。初対面で嫌われてるって意味が分からない。
「あのキャロルって子が原因さ」
「キャロルってあの美少女の事よね」
アスカは馴れ馴れしく話しかけてくるシルバン王子には自然とタメ口で話していた。明らかにシルバン王子のほうが年下というのもあるのかもしれない。
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