婚約破棄されて衝動買いしたら異世界にて王子に求愛された

MJ

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エスタ王国

宮殿での試練が始まった

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アスカは次の日も宮廷に呼ばれた。

「アスカ嬢、今日から毎日宮廷に通って学ぶように」と国王に告げられた。

威厳のある椅子に座ったルシアンヌ皇后が厳しい表情でアスカを睨んでいる。

アスカは縮み上がる思いがした。

ひーー。

「今日からあなたは、王子の妃にふさわしくなるように訓練を行います。もし、途中で逃げ出すような事があれば、失格とみなして、この国に住むことは許しません。あなたには出ていってもらいます」

あまりにも威厳のある皇后の言葉に、アスカは何も反論できなかった。

「さあ、ここを歩いてご覧なさい」

まずは立ち振る舞いから指導された。

「そうではないの!」

皇后の厳しい声が部屋に響く。

アスカは怯えて足が震えたし、緊張して余計にぎこちない歩きになった。

「もっとエレガントに歩けないのかしら」

「はい」

アスカは手本の侍女達の歩き方を見よう見まねで真似をするが、いまいち高貴な感じが出ない。
何となく、庶民ぽいのだ。

「良く鏡を見てご覧なさい。背筋を伸ばして、腰をもっと前に」

「はい」

「返事はいいんだけど、全然ダメね。これではとてつもなく時間がかかるわ」

「そ、そんな」アスカはブルーな気持ちになった。

午前中はそういった厳しいマナーの訓練のようなことがみっちり続いた。そして、午後からはイル博士から教室で座学を学ぶことになった。

教室には、シルバン王子と貴族の子息や令嬢、それから国中から選抜された秀才達がいた。

どうやら、皇后は教室には来ないらしい。アスカはホッとした。

令嬢の中に、一際美しいブロンズの少女がいた。目を見張る美しさである。

アスカはハッとみとれてしまった。フランス人形のような青い瞳に吸い込まれるような気がしたのである。いくら眺めていても飽きない美しさだ。

しかし、アスカはその美少女から目を逸らした。その美しい瞳がアスカのことを睨んでいるような気がしたのである。

いや、それは気のせいではなくて、おそらく嫌われていると動物的な勘が働いた。そして、辺りを見回すと、教室のほぼ全員がアスカに冷たい眼差しを向けていた。
(この宮殿には私の味方はいないのだわ)

アスカはそう悟った。
私はこの国で歓迎されていない。この国からさっさと出ていくべきなんだ。

イル博士がアスカをみんなに紹介した。
「今日から一緒に学ぶ事になったアスカさんです。みんな仲良くしてあげてくださいね」

シーーーーン。

誰の目から見ても歓迎されていないのが明らかだった。

その時、「アスカ、ここに座りなよ」シルバン王子が隣の席を勧めた。爽やかな笑顔だ。

「え、ええ」

アスカはうつむいたまま席に着いた。
周りからは余計に白い目で見られている気がした。
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