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エスタ王国
ルシアンヌ皇后の意向
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イル博士はアンリ国王の部屋を訪れて報告した。
「やはり、アスカ嬢は我が国の妃になるべきお人でした」
「間違いないのか!」
「はい。間違いありません。確かに月の時計を持ち東から現れたお人です」
「そうか。イル博士が言うからには間違いあるまい。エドワルド王子が帰ってきたら、すぐにでも式をあげるか」
「あなた、私は反対ですわ。何処の馬の骨とも分からぬ娘を王子のお嫁にするなんてとんでもない」
「そうは言っても、古文書に書いてある事を守るのはこの国の掟だ」
「嫌です。私がお腹を痛めて産んだ大事な王子を素性のわからぬ娘に取られたくはありません」
「ルシアンヌ、そうは言ってもエドワルド王子も気に入っていた様子の娘。古文書のお告げの通り結婚すれば幸せになれるだろう」
「あの娘にたぶらかされているかもしれません。あの時計だってよく似た偽物かもしれません」
「イル博士、あの時計は本物で間違いないのか?」
「はい。間違いありません。秘密の紋章が刻印されていました」イル博士はかしこまっている。
「私は認めません! 騙されてはいけません」
「ルシアンヌ、何をそんなに感情的になっているのだ」
「私は感情的にはなっていません。あなたこそ冷静になって考えてください。あの無作法者が王家の者になれば、せっかくの王家の威厳が損なわれてしまいます」
「確かに、彼女は礼儀作法を知らぬようだが、それはこれから身につければ良いではないか」
「いいえ、礼儀作法がそう簡単に身につくとは思えません。それに、血筋というものがあります。エドワルド王子にはもっとふさわしい良家のキャロル嬢がふさわしいのです」
ルシアンヌ皇后は一気にまくし立てた。
「わかった。わかった。そうまで言うなら、アスカ嬢が妃にふさわしいかどうかテストをすればよい。エドワルド王子が帰ってくるまで作法を身につけてもらおう」
アンリ国王はなんとか結論を先送りするようにしようと試みた。
「そもそもエドワルド王子が行方知れずになっているのもあの娘のせいじゃないですか。あの娘が王家に入るのは災いをもたらす気がしてなりません」
アスカは知らないうちに毎日宮殿へ通って作法や教養を学ぶ事が決まっていた。
その頃、アスカは部屋に戻ると、古文書の事をペルーラに話した。
「ペルーラ、古文書の事、何か知らないの? あなたはこの時計の精霊でしょ?」
「僕は何も知らないよ」
「前の持ち主は誰なの?」
「分からない。僕はずっと暗闇にいたんだ。気がついたらあの時計屋にいた」
「そうか。前の持ち主の事は知らないのね。私はこの時計を持っているせいでこの国の妃になることになりそうなの」
「ふーん。それは良かったじゃない」
「良くはないわよ。わたしが間違って妃にでもなったりしたらとんでもない事になるわよ。前の持ち主を探さなきゃ」
ペルーラはお構い無しにベッドの上で寝始めていた。
「やはり、アスカ嬢は我が国の妃になるべきお人でした」
「間違いないのか!」
「はい。間違いありません。確かに月の時計を持ち東から現れたお人です」
「そうか。イル博士が言うからには間違いあるまい。エドワルド王子が帰ってきたら、すぐにでも式をあげるか」
「あなた、私は反対ですわ。何処の馬の骨とも分からぬ娘を王子のお嫁にするなんてとんでもない」
「そうは言っても、古文書に書いてある事を守るのはこの国の掟だ」
「嫌です。私がお腹を痛めて産んだ大事な王子を素性のわからぬ娘に取られたくはありません」
「ルシアンヌ、そうは言ってもエドワルド王子も気に入っていた様子の娘。古文書のお告げの通り結婚すれば幸せになれるだろう」
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「イル博士、あの時計は本物で間違いないのか?」
「はい。間違いありません。秘密の紋章が刻印されていました」イル博士はかしこまっている。
「私は認めません! 騙されてはいけません」
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「確かに、彼女は礼儀作法を知らぬようだが、それはこれから身につければ良いではないか」
「いいえ、礼儀作法がそう簡単に身につくとは思えません。それに、血筋というものがあります。エドワルド王子にはもっとふさわしい良家のキャロル嬢がふさわしいのです」
ルシアンヌ皇后は一気にまくし立てた。
「わかった。わかった。そうまで言うなら、アスカ嬢が妃にふさわしいかどうかテストをすればよい。エドワルド王子が帰ってくるまで作法を身につけてもらおう」
アンリ国王はなんとか結論を先送りするようにしようと試みた。
「そもそもエドワルド王子が行方知れずになっているのもあの娘のせいじゃないですか。あの娘が王家に入るのは災いをもたらす気がしてなりません」
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その頃、アスカは部屋に戻ると、古文書の事をペルーラに話した。
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「そうか。前の持ち主の事は知らないのね。私はこの時計を持っているせいでこの国の妃になることになりそうなの」
「ふーん。それは良かったじゃない」
「良くはないわよ。わたしが間違って妃にでもなったりしたらとんでもない事になるわよ。前の持ち主を探さなきゃ」
ペルーラはお構い無しにベッドの上で寝始めていた。
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