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軍船の追手
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エドワルド王子は港でジャルジャンからの手紙を執事のセバスチャンから受け取っていた。
手紙にはこう書かれてあった。
--------------
拝啓 エドワルド王子殿
アスカ嬢の事はくれぐれも頼む。
私はこの度は生きて帰ることはないと思っている。
これも身から出た錆。
人を苦しめれば憎まれ、傷つけられるという事だ。
この事もアスカ嬢に言われて初めて気がついた。
もし生まれ変わることが出来たならば人の幸せを願う人生を歩みたいと思う。
アスカ嬢は不思議な人だ。このような私にさえ愛情を与えてくれた。
彼女は私にとって特別な存在だ。
であるから、これ以上彼女を苦しめたくはない。ポスティング契約の100日経たずとも彼女を自由にする事をここに約束する。
是非とも大事にして下さるよう願う。
それと、私とアスカ嬢にはお主が思っているような関係にはない。彼女の操は潔白である。それは私が保証する。その事を気にして彼女を貶めることのないようにお願いする。
------------
手紙の最後にはジャルジャンのサインが書かれていた。
エドワルド王子はこの手紙を読んでとても感動してジャルジャンを救い出そうと決意したのだ。
人を憎んで罪を憎まず。
王子は国王のアンリからそう教わって育ってきた。
アスカは既に船に乗り込んだのだから、最悪自分がいなくとも逃げ伸びることが出来るだろうという算段であった。
しかし、今、アスカの乗った帆船は北方の軍船によって襲撃を受けていた。陸から追手が来ると思っていたのだが、先に海から軍船に見つかってしまったのだ。
アスカの乗った船の船長を任された男は、北方の軍船が近づいてくると船を出発させようとした。
「王子がまだ帰ってきていません。船を出すのは待ってください」とアスカは訴えた。
「しかし、危険があれば船を出すよう指示されております。このままではみんなやられてしまいます」
「私を下ろしてください。私は港で王子を待ちます」
アスカは船から降りるために岸壁の方に向かった。しかし、ゼバスチャンとサーラに無理やり引き止められた。
「いいから早く船を出しなさい」
リディア嬢が船長の男に叫ぶ。
軍船はアスカ達の乗った船の5倍はある大きさだった。大きく帆を広げて迫ってくる。船の甲板にはカーキ色の軍服のようなものを着た兵士たちがうじゃうじゃといて、武器を持ってこちらを狙っている。
「安全な場所に身をふせろ!」男どもが叫ぶと、船は港からロープをとかれて港を出発した。
ガタイのいい漁師達が左右に並んでオールを懸命に漕いでいる。船はどんどん加速して港を離れた。
すんでのところで軍船を交わすと、船は置きに向かって突き進んだ。
軍船も向きを変えて追いかけてくる。近づく度に弓矢が数本コンコンと船に命中して突き刺さった。
船長は上手く小回りを効かせて、船の進行方向を左右に変えて、軍船の追撃を交わした。しかし、方向を帰る度に船が大きく傾き、揺れた。
沖合に出ると、船は帆を広げて風を掴むとさらに加速した。しかし、軍船の方も諦めずに追ってくる。
火のついた矢が放たれ、帆に命中すると火の手が上がった。みんなで協力して海水をかけて消化したが、船のスピードはだんだん落ちてきた。
手紙にはこう書かれてあった。
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拝啓 エドワルド王子殿
アスカ嬢の事はくれぐれも頼む。
私はこの度は生きて帰ることはないと思っている。
これも身から出た錆。
人を苦しめれば憎まれ、傷つけられるという事だ。
この事もアスカ嬢に言われて初めて気がついた。
もし生まれ変わることが出来たならば人の幸せを願う人生を歩みたいと思う。
アスカ嬢は不思議な人だ。このような私にさえ愛情を与えてくれた。
彼女は私にとって特別な存在だ。
であるから、これ以上彼女を苦しめたくはない。ポスティング契約の100日経たずとも彼女を自由にする事をここに約束する。
是非とも大事にして下さるよう願う。
それと、私とアスカ嬢にはお主が思っているような関係にはない。彼女の操は潔白である。それは私が保証する。その事を気にして彼女を貶めることのないようにお願いする。
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手紙の最後にはジャルジャンのサインが書かれていた。
エドワルド王子はこの手紙を読んでとても感動してジャルジャンを救い出そうと決意したのだ。
人を憎んで罪を憎まず。
王子は国王のアンリからそう教わって育ってきた。
アスカは既に船に乗り込んだのだから、最悪自分がいなくとも逃げ伸びることが出来るだろうという算段であった。
しかし、今、アスカの乗った帆船は北方の軍船によって襲撃を受けていた。陸から追手が来ると思っていたのだが、先に海から軍船に見つかってしまったのだ。
アスカの乗った船の船長を任された男は、北方の軍船が近づいてくると船を出発させようとした。
「王子がまだ帰ってきていません。船を出すのは待ってください」とアスカは訴えた。
「しかし、危険があれば船を出すよう指示されております。このままではみんなやられてしまいます」
「私を下ろしてください。私は港で王子を待ちます」
アスカは船から降りるために岸壁の方に向かった。しかし、ゼバスチャンとサーラに無理やり引き止められた。
「いいから早く船を出しなさい」
リディア嬢が船長の男に叫ぶ。
軍船はアスカ達の乗った船の5倍はある大きさだった。大きく帆を広げて迫ってくる。船の甲板にはカーキ色の軍服のようなものを着た兵士たちがうじゃうじゃといて、武器を持ってこちらを狙っている。
「安全な場所に身をふせろ!」男どもが叫ぶと、船は港からロープをとかれて港を出発した。
ガタイのいい漁師達が左右に並んでオールを懸命に漕いでいる。船はどんどん加速して港を離れた。
すんでのところで軍船を交わすと、船は置きに向かって突き進んだ。
軍船も向きを変えて追いかけてくる。近づく度に弓矢が数本コンコンと船に命中して突き刺さった。
船長は上手く小回りを効かせて、船の進行方向を左右に変えて、軍船の追撃を交わした。しかし、方向を帰る度に船が大きく傾き、揺れた。
沖合に出ると、船は帆を広げて風を掴むとさらに加速した。しかし、軍船の方も諦めずに追ってくる。
火のついた矢が放たれ、帆に命中すると火の手が上がった。みんなで協力して海水をかけて消化したが、船のスピードはだんだん落ちてきた。
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