43 / 71
向かう王子
しおりを挟む
アスカと王子や令嬢達の脱出組が山道を登りきると、入江に向けて細い一本道の下り坂が続いていた。その道の先には小さな港町が見えた。帆船が停泊している。
「あの港にたどり着けば助かるわよ」
リディア嬢がそう叫ぶと令嬢たちは息を切らせながらも、士気が上がった。
しかし、普段運動不足な者たちは下り坂を焦って転ぶものも出てきた。
「落ち着いて、呼吸を整えながらあるきましょう。大丈夫です。まだ敵は来ていません」
王子は令嬢たちを励ましながら、全体を港町の方へうまく誘導していった。
港町につくと、不安そうな住民たちがぞろぞろと現れた。
「ジャルジャン様の停泊している船で出るのですか。よかったら我々も乗せてください。このままここにいても何をされるかわからない。いったん避難したいのです」
「わかりました。私たちは帆船を操ることができないので助かります。誰か船長を務めてもらえますか」
「それなら私におまかせください。帆船で航海に出たことがあります」
と言って村で一番ガタイの大きな青年が出てきた。
「よし、そなたに船長を任せる。もし、敵が攻め込んできたら直ちに出発してくれ。行先はエスタ王国だ」
「わかりました。それでは早速航海に必要なものを積み込み準備します」
「アスカ殿、セバスチャン、それからリディア嬢、あなた達はリーダーとしてみんなをまとめて船の中に乗り込んで出発の準備をしてください」
「王子はどうするのですか?」
「私はもう一度屋敷に戻ってジャルジャン達を連れ戻してきます」
そういうとエドワルド王子はホワイトブライアンにまたがった。
「それから、アスカ殿、この短剣を私だと思ってお持ちください。もし何かあった時にはこの剣が役に立つでしょう」
そう言ってアスカに短剣を渡した。
短剣はズシリと重く、宝石類で装飾されていて王族の持ち物だと一目でわかるものであった。
アスカは王子が戻ってこないつもりかもしれないと思った。
「王子、危険な真似はおやめください」アスカは叫んだ。
「アスカ殿、止めないでください。私はジャルジャンだけを置き去りにして逃げるわけにはいきません。きっと彼を助け出してきます」
「王子、独りで行っては死んでしまいます」
「何、大丈夫だ。このホワイトブライアンがいれば、最悪ジャルジャンだけでも救い出してこれるかもしれない」
山の向こう側からはものすごい銃声と爆発音がこだましてきている。
「王子だめです」
「行ってはなりません」
そこにいる皆が王子を引き留めた。
しかし、王子は屋敷の方を向くと
「恋敵 放ってはおけん 姫のため」
そう言って駆け上っていった。
「王子、王子、待ってー」
アスカは危険を冒す王子を走って追ったが、引き留めることはできず、立ち尽くすしかなかった。
しばらくしてリディア嬢がアスカを叱った。
「何、いつまでもぼーっとしてるのよ。早く荷物運ぶの手伝ってよ。もしも私たちまで捕まったらジャルジャン様と王子が命を張って救ってくれたことが台無しになるでしょう。私たちは今できることをやるのよ」
アスカははっとして、出発の準備に取り掛かった。
出発の準備は整いみんな船に乗り込んだ。
定員はだいぶオーバーしているようだ。船がだいぶ不安定になっている。
みんな決まった場所でできるだけじっとしていなければならなかった。
後は王子達が帰ってくるのを待つだけになった。
しかし、いつまでたっても王子の姿は現れなかった。
そうしているうちに、沖の方から大きな黒い影が近づいてきた。
「やばい。敵船が来たぞ」船長の男が叫んだ。
「あの港にたどり着けば助かるわよ」
リディア嬢がそう叫ぶと令嬢たちは息を切らせながらも、士気が上がった。
しかし、普段運動不足な者たちは下り坂を焦って転ぶものも出てきた。
「落ち着いて、呼吸を整えながらあるきましょう。大丈夫です。まだ敵は来ていません」
王子は令嬢たちを励ましながら、全体を港町の方へうまく誘導していった。
港町につくと、不安そうな住民たちがぞろぞろと現れた。
「ジャルジャン様の停泊している船で出るのですか。よかったら我々も乗せてください。このままここにいても何をされるかわからない。いったん避難したいのです」
「わかりました。私たちは帆船を操ることができないので助かります。誰か船長を務めてもらえますか」
「それなら私におまかせください。帆船で航海に出たことがあります」
と言って村で一番ガタイの大きな青年が出てきた。
「よし、そなたに船長を任せる。もし、敵が攻め込んできたら直ちに出発してくれ。行先はエスタ王国だ」
「わかりました。それでは早速航海に必要なものを積み込み準備します」
「アスカ殿、セバスチャン、それからリディア嬢、あなた達はリーダーとしてみんなをまとめて船の中に乗り込んで出発の準備をしてください」
「王子はどうするのですか?」
「私はもう一度屋敷に戻ってジャルジャン達を連れ戻してきます」
そういうとエドワルド王子はホワイトブライアンにまたがった。
「それから、アスカ殿、この短剣を私だと思ってお持ちください。もし何かあった時にはこの剣が役に立つでしょう」
そう言ってアスカに短剣を渡した。
短剣はズシリと重く、宝石類で装飾されていて王族の持ち物だと一目でわかるものであった。
アスカは王子が戻ってこないつもりかもしれないと思った。
「王子、危険な真似はおやめください」アスカは叫んだ。
「アスカ殿、止めないでください。私はジャルジャンだけを置き去りにして逃げるわけにはいきません。きっと彼を助け出してきます」
「王子、独りで行っては死んでしまいます」
「何、大丈夫だ。このホワイトブライアンがいれば、最悪ジャルジャンだけでも救い出してこれるかもしれない」
山の向こう側からはものすごい銃声と爆発音がこだましてきている。
「王子だめです」
「行ってはなりません」
そこにいる皆が王子を引き留めた。
しかし、王子は屋敷の方を向くと
「恋敵 放ってはおけん 姫のため」
そう言って駆け上っていった。
「王子、王子、待ってー」
アスカは危険を冒す王子を走って追ったが、引き留めることはできず、立ち尽くすしかなかった。
しばらくしてリディア嬢がアスカを叱った。
「何、いつまでもぼーっとしてるのよ。早く荷物運ぶの手伝ってよ。もしも私たちまで捕まったらジャルジャン様と王子が命を張って救ってくれたことが台無しになるでしょう。私たちは今できることをやるのよ」
アスカははっとして、出発の準備に取り掛かった。
出発の準備は整いみんな船に乗り込んだ。
定員はだいぶオーバーしているようだ。船がだいぶ不安定になっている。
みんな決まった場所でできるだけじっとしていなければならなかった。
後は王子達が帰ってくるのを待つだけになった。
しかし、いつまでたっても王子の姿は現れなかった。
そうしているうちに、沖の方から大きな黒い影が近づいてきた。
「やばい。敵船が来たぞ」船長の男が叫んだ。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる